相続の基礎知識。相続とは・遺産とは・相続の方法とは・相続税とは
まず、相続の基本について押さえておきましょう。
そもそも相続とは何か?
「相続」とは、ある人が死亡したときに、その人の財産を親族などの特定の人が譲り受けること(制度)をいいます。
亡くなった人を「被相続人」、財産をもらう人を「相続人」と呼びます。
相続は、被相続人が亡くなった時点から始まります。ここからは、遺産は、法律的には相続人全員で共有という扱いになり、相続人の誰かが勝手に故人の預金を引き出したりすることは、許されません。
遺産になるのは?
被相続人の財産(相続財産、遺産)は、その人が持っていたすべての権利・義務を含み、次のようなものが該当します。
- 現金、預貯金
- 自動車、貴金属などの動産
- 土地、建物などの不動産
- 株式、債券などの有価証券
- 賃借権、特許権、著作権などの権利
- 借金などの債務
債務も相続財産に含まれることには、注意が必要です。プラスの財産を負債が上回る場合などには、「相続放棄」を行うことができます。
相続の方法は?
【1】遺言書がある場合
被相続人の「遺言書」があれば、その内容に従って遺産を分けます。
遺言書で指定されていれば、法定相続人でなくても(例えば愛人、血縁関係のない知人でも)遺産をもらうことができるのです。その人のことを受遺者といいます。
一方、法定相続人には、遺言書の内容に関わらず、遺留分(法定相続分の半分)をもらう権利があります。
【2】遺言書が無い場合
遺言書が無いときには、民法が定めた人(法定相続人)が、定められた割合(法定相続分)に従って、遺産を相続します(後述)。
遺産をもらえるのは、この法定相続人か、受遺者ということになります。
【3】遺産分割協議による同意
③相続に当たっては、相続人全員による遺産分割協議が行われ、遺産分割協議書が作成されます。この話し合いで全員が同意すれば、【1】や【2】に従わない遺産分割を行うことも可能です。
法定相続人とは?
それでは、法定相続人とは誰のことを指すのでしょうか?
実はこの法定相続には順位が決められていて、前の順位の人が生存している場合には、後の順位の人が法定相続人になることはできません。
簡単に言うと、被相続人から見て次の人たちが、それぞれの順位の対象者〈法定相続分〉となります(配偶者は必ず法定相続人となり、正確には順位の枠外です)。
第1順位 | 配偶者〈1/2〉:子ども〈合わせて1/2〉 |
---|---|
第2順位 | 配偶者〈2/3〉:両親〈合わせて1/3〉 |
第3順位 | 配偶者〈3/4〉:兄弟姉妹〈合わせて1/4〉 |
ただし、第1順位と第3順位では「代襲相続」といって、相続人が亡くなっていた場合には、その子どもが代わりに相続人になることになっています。つまり、被相続人から見て孫や甥、姪が法定相続人となることもあるわけです。また、第2順位では、両親がともに亡くなっている場合には、祖父母が法定相続人になります。
法定相続は、説明した第3順位までで「打ち止め」です。
相続税とは?
相続税とは、遺産を受け継ぐ際に、遺産総額の金額が大きいとかかる税金のことです。
相続税はどれくらいかかる?
相続税には、「基礎控除」があります。計算式は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、
例えば法定相続人が妻と子ども2人の計3人だったら、4,800万円。
遺産総額がこの範囲であれば、相続税はかかりません。遺産が基礎控除額を超えた場合には、その越えた分に相続税が課税されることになります。
相続の流れとは。相続税の申告・納付は10ヵ月以内に!
以上を踏まえたうえで、実際の相続の流れを見てみましょう。
相続の流れを確認してみよう
ここでまず意識すべきなのは、「相続発生から10ヵ月以内」という、相続税の申告・納付期限です。
「遺産は相続税がかからない額だから」という場合にも、注意すべきことがあります。例えば、要件を満たせば自宅の評価額を8割減額できる「小規模宅地等の特例」。これを使った結果として、遺産総額がさきほど説明した基礎控除の範囲内に収まった、といったケースも珍しくありません。しかし、この場合はやはり申告が必要で、それをしないと「特例」自体を使うことができない=減額はされないことになってしまうのです。
10ヵ月以内に遺産分割協議が整わなかった場合は?
なお、この期間内に遺産分割協議が整わない場合には、期限までにいったん相続税を支払った後、話し合いを継続していくことになります。協議がまとまらない限り、今お話しした小規模宅地等の特例も使うことはできません。
ということで、相続においては、この10ヵ月にゴールを置いて、そこから逆算してやるべきことを片づけていくべきでしょう。
相続のポイントとは?
特にポイントになるのは、次のような点です。
遺言書の有無の確認
説明したように、被相続人の意思が示された遺言書があるかないかによって、遺産分割協議の中味はガラリと変わります。
法定相続人の調査・確認
例えば、被相続人の愛人は法定相続人ではありません。しかし、その人との間に子どもがいたら、立派にその権利を持っています。突然、見ず知らずの人間が相続人に名乗りを上げる、というドラマのようなことが実際に起こっています。円滑な相続を進めるために、予断なく調べる必要があるでしょう。
遺産分割協議書の作成
被相続人の遺言書がある場合、内容に特段問題がなければ、その意に沿った遺産分割が行われます。一方、遺言書がなかった場合には、相続人による遺産分割協議が行われ、全員の合意の下に「遺産分割協議書」が作成されます。被相続人の預貯金の払戻しや、不動産の名義変更には、この「協議書」が必要になります。
相続で税理士への依頼を検討中の方へ
相続の概要を説明しました。相続をスムーズに、できるだけ税の負担を少なく進めるためには、知識を持つだけでなく、実は事前の準備が大切です。
「何をどうすべきか」わからないときには、相続に詳しい税理士に相談してみるのもいいでしょう。