新型コロナの経済への悪影響が広がるなか、会社員などに比べて生活の保障が心許ない個人事業主にとって、いかに手元にお金を残していくかが、いつにも増して重要な課題となっています。「不要な出費を抑える」うえで、しっかり節税することが大事なのは、言うまでもありません。「節税なら、やるべきことはやっている」と言うあなた。「見落とし」はないでしょうか? 「個人事業主ができる節税」について、意外に知られていないノウハウも含めて、まとめました。
日常的な節税の鍵は「経費」にあり
最初に「個人事業主の税金」について、おさらいしておきましょう。個人事業主が納める主な税金は、所得税です。この税は、5%(所得195万円以下)から45%(4,000万円超)まで、7段階の税率が設定されていて、所得が多いほど税率が上がっていきます(「累進課税」)。
税率を掛ける「課税所得」は、収入(売上)から「経費(必要経費)」(=収入を得るために使ったお金)と「控除額」を差し引いた金額になります。控除には、無条件で差し引ける「基礎控除」(※1)のほか、後で述べる「青色申告特別控除」などがあります。要するに、可能な限り経費を計上し、使える控除を使うほど、支払う所得税を減らすことができるわけです。
大きな差が出るのは経費で、「落とせるものを落とさない」ケースが、珍しくありません。まずは、出費が経費に計上できないかどうか、しっかりチェックする習慣をつけましょう。
では、それ以外の個人事業主の節税策について、具体的にみていくことにします。ただし、「見落としがちな節税」には、「注意すべき問題」が潜んでいることもありますので、あえてその点についても触れました。
2020年分から10万円引き上げられて48万円に。ただし「所得制限」が導入され、合計所得金額が2,400万円を超えると段階的に減額されて、2500万円超では0円となる。
もちろん実行、検討しているはず【レベルA】
「青色申告」をする
所得税の確定申告のやり方には、白色申告と青色申告があり、後者を選択すれば、次のような節税につながります。
- 青色申告特別控除:電子申告または電子帳簿保存を行えば、65万円が所得控除される
- 青色専従者給与:配偶者などに給料を支払う場合、一定の要件を満たせば、その金額を必要経費に計上できる
- 貸倒引当金(※2):年末の未収金の5.5%まで、経費として計上できる
- 純損失の繰り越し・繰り戻し:赤字が出た場合、3年間繰り越して控除できる。また、前年に繰り戻して税の還付を受けることもできる
➡青色申告をするためには、原則として複式簿記という方式に従った帳簿付けが条件になるなど、「白色」よりも煩雑な作業や知識が必要になります。
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「生命保険」、「介護医療保険」、「個人年金」に加入する
個人事業主に限りませんが、生命保険の保険料は控除の対象です。具体的には、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料それぞれについて、年間4万円(住民税は7万円)、計12万円(21万円)の所得控除が認められるのです。
➡節税のために、不要な保険に加入するのはナンセンス。支払う保険料と受け取ることのできる金額も考慮して、自分に合ったものを選びましょう。
「法人成り」を考える
さきほど説明したように、個人事業主が支払う所得税は、所得が増えるほど税率が高くなっていきます。これに対して、法人税の税率は一定(資本金1億円以下の普通法人で、所得800万円まで15%、それを超えると23.2%)ですから、所得が一定水準を超えたら、法人化したほうが、税金は安くなります。
➡法人になると、社会保険料の支払い義務が生じます。法人からもらう給料にかかる所得税なども考えて、総合的に判断する必要があるでしょう。
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これ、やっていますか?【レベルB】
「小規模企業共済」に入る
中小企業基盤整備機構(中小機構)が行っている保険で、個人事業主でも加入することができます。毎月掛金を支払い、仕事をやめたときに掛金プラスαがもらえるというもので、いわば「自分で用意する退職金」です。この掛金は、全額経費にすることができるのです。掛金は、1,000円~70,000円まで自由に設定でき、増減も可能です。
➡「元本割れ」のリスクがあります。中小機構のホームページには、支払われる共済金について、「掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ります。」という記載があります。申し込む際に、よく確認しましょう。
「iDeCo」に加入する
「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、「自分で作る年金制度」と言えるでしょう。加入者が毎月一定の掛金を拠出し、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品を自ら運用し、60歳以降に年金または一時金の形で受け取ります。
国が用意した制度のため、
- ①掛金はすべて所得控除の対象で、所得税・住民税が節税できる
- ②運用で得た定期預金利息や投資信託運用益は、非課税
- ③受け取るとき「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象になる
という節税メリットがあります。
➡原則として、60歳になるまで資金の引き出しはできません。また、あくまで「資産運用」ですから、市場の動向などにより、やはり「元本割れ」のリスクはあります。
「ふるさと納税」を行う
全国の自治体に寄付をすると、その金額が、地方税、所得税から「税額控除」されます。つまり、1万円寄付をすれば、同じ1万円、支払う税が減るわけです(年間2,000円は、控除額から差し引かれます)。これだけではプラマイゼロですが、ふるさと納税制度では、寄付を受けた自治体から寄付額の3割以内で「返礼品」を送ることが認められており、これをゲットすることで、実質的に「節税」になります。
➡控除額には、所得に応じた上限額があり、それを超えた分は控除されません。
ビジネス用のクレジットカードを使う
ビジネス専用のカードならば、年会費を経費で落とすことができます。ビジネスカード特有の特典を享受することもできます。また、会計ソフトと連携することで、経理処理の手間を省くことにも繋がります。
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➡プライベート同様、「使い過ぎ」に注意を。
貸倒損失(取引先の倒産などの理由で、売掛金や受取手形などの債権を回収できなくなること)によるリスクに備え、損失になるかもしれない金額をあらかじめ計上したもの。
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こんなこともできます【レベルC】
「少額減価償却資産の特例」を活用する
建物や自動車、あるいはパソコンなど事業に使う固定資産を購入した場合、基本的には一括で経費として処理するのではなく、何年かに分けて計上(償却)していきます。これを「減価償却」というわけですが、中小企業者など(個人事業主も)には、30万円未満の支出であれば、一括で償却することが認められているのです。
メリットは、その年の所得税額を大きく減らせることと、通常の減価償却に比べて、会計処理が簡単になることです。
➡先に説明した青色申告をしていないと、この特例は適用されません。また、300万円という限度額があります。
「経営セーフティ共済」に加入する
これも、さきほどの中小機構の保険です。これに加入していると、取引先に破産、民事再生といった事態が発生した場合に、掛金の10倍以内、最高8,000万円まで、無担保・無保証で借り入れができます。
月々5,000円~200,000円まで積み立てられ、全額が経費になるのは魅力的。その金額だけ見れば、毎年「小規模企業共済」よりも大きな節税効果が期待できます。解約返戻金の制度もあります。
➡年ごとの節税効果がある一方、返戻金を受け取った場合などには、一度に多額の税金がかかってきます。「節税」というより、「いざというときの備え」と考えるべきかもしれません。
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まとめ
いかがでしょうか? それぞれのメリット・デメリットを検討したうえで、「これは」と思えるものがあったら、始めてみましょう。判断に迷うような場合には、税理士などの専門家に相談を。