確定申告で利用する所得控除のなかでも、「ふるさと納税」による控除が定着しているようです。制度利用者は年々増加しており、「ふるさと納税」の返礼品を特集したサイトまで登場し、特産品を目当てにふるさと納税をする方もいます。今回は「ふるさと納税」を利用した場合のメリットを中心に、制度全体を広く解説します。
ふるさと納税で地方自治体を応援
ふるさと納税とは何か?
2008年に施行された「ふるさと納税制度」は、自分が納税したいと思う地方自治体を自分で選択し、いつでも好きな金額を納税できるというものです。
近年、都市部に向けた人口流出に歯止めがかからず過疎化が進む地方自治体が増加しています。財源となる税収を担うのは「そこに住む住民」ですから、人口が減れば税収が減少し財政難に陥ります。今は都市部に住んでいる方でも、自分が生まれ育った故郷が困っていると知れば何とか手助けをしたいと考えるのではないでしょうか。
故郷を助けたいという方々の想いを実現するために「ふるさと納税」は制度化されました。
寄付する側にも寄付される側にもメリットがある「ふるさと納税」
ふるさと納税は、表向きは「納税」となっていますが、実際には「寄付金」として取り扱われますので、所得税や個人住民税の計算で「寄付金控除」による税制面の優遇措置を受けられます。
具体的には納税した金額のうち2,000円を超える部分が所得控除や税額控除の対象となります。
また、ふるさと納税に対して地方自治体からお礼の品として地場の特産品が送られてきます。このお礼の品を楽しみにふるさと納税をする方も多いでしょう。
しかし、自治体間の返礼品競争が激化したことから、2019年6月以降、ふるさと納税の対象となる都道府県・市区町村が総務大臣の指定制となりました。
返礼品は地場産品とし、調達する価額は寄付金額の3割以下とすることとなりました。指定外の自治体への寄付は、ふるさと納税制度の対象外となりますので注意が必要です。
しかしながら、市場販売価額で換算した場合、寄付金額を上回る返礼品も中にはありますので、たのしみながら探してみるのも良いでしょう。
納税を受けた地方自治体は、返礼品を地元の企業から調達しますので、地方自治体の財政が潤うのはもちろんのこと、返礼品を作ることで地場産業も活性化し、結果として、企業の収益や雇用も増加します。
このように、ふるさと納税は①納税をする方②納税を受ける地方自治体③地元企業のそれぞれが恩恵を受けられるのです。
「ふるさと納税」の具体的な手続きの進め方
「ふるさと納税」と確定申告の関係
では「ふるさと納税」の具体的な手続きの進め方について解説します。
ふるさと納税は、どのタイミングで行ってもOKですし、回数や金額に上限はありません。実務的に所得税や個人住民税の控除額を計算する期間として「1月1日から12月31日までに納税した金額」を集計します。
したがって「今年ふるさと納税で寄付金控除を受けたい」と考えている方は12月31日までに納税を済ませる必要があります。
納税した日付は、ふるさと納税完了後に地方自治体から郵送される「寄付金控除証明書」に記載された「寄付年月日」で確認できます。
カード決済もOK!「ふるさと納税」の決済方法
ふるさと納税には多くの決済方法があります。
- ①銀行振込
- ②現金書留
- ③各種電子決済(〇〇PAYと呼ばれるもの)
- ④コンビニ決済
- ⑤カード決済
- ⑥ネットバンキング決済…など
前述のとおり、ふるさと納税は12月31日までに納税しなければ今年分の寄付金控除を受けられません。
年末のお休みを利用して納税先をゆっくり探してみたいけど銀行も郵便局も休みで決済ができない…という方にはカード決済や電子決済などがお勧めです。
これらの決済方法であれば24時間365日いつでも納税できますので、納期限を気にする必要がありません。
「ふるさと納税」をした際の確定申告の進め方
ふるさと納税完了後の所得控除、税額控除の手続き方法について解説しましょう。
個人事業者の方はふるさと納税をした翌年の確定申告書に「ふるさと納税」に関する記載をするだけで所得税と個人住民税の税額控除を受けられます。
1.郵送や窓口提出により確定申告書を提出するケース
書面により確定申告書を提出する場合には、確定申告書の第2表「寄付金控除」の欄にふるさと納税に関する記載をします。
提出する際には地方自治体から郵送される「寄付金控除証明書」を必ず添付する必要がありますので注意してください。
2.e-Tax等の電子申告を利用して確定申告書を提出するケース
国税庁HPにある「確定申告書作成コーナー」など、電子申告を利用してネットで確定申告を提出する場合には、寄付金控除についての記載事項の欄にふるさと納税に関する記載をします。
書面提出する場合と違って、地方自治体名や住所、金額などを1件ずつ詳細に入力していく必要がありますが、「寄付金控除証明書」の提出は省略できます。ただし、証明書は3年間保管しなければなりません。
「ふるさと納税」と併せて「ワンストップ納税」というキーワードもよく出てきます。「ワンストップ納税」は、確定申告書を提出する必要のない「給与所得者」、いわゆるサラリーマンの方が「ふるさと納税」の税額控除を簡単に受けられる制度です。年末調整で精算できない「ふるさと納税」の所得控除を、住民税の税額控除という形で完結させます。(ただし納税先の地方自治体が6カ所以上になると確定申告が必要です)
個人事業者の方は事業所得や不動産所得を毎年申告しなければならず、ワンストップ納税の要件を満たしませんので注意が必要です。
どれくらい寄付すればいいの?「ふるさと納税」の節税効果
「ふるさと納税」の節税効果に上限はあるか?
前述したとおり「ふるさと納税」には上限金額がありません。手持ち金の許す限りいくらでも納税できます。しかし、税制面でのメリットである「節税効果」という観点からみれば限度額というものが存在します。
上記計算方法により、所得税や住民税の税率に応じてふるさと納税で控除できる上限額が決まります。上限額を超えた部分については節税効果がありません。
計算してみよう「ふるさと納税」の上限額
上限額の正確な金額を計算するために必要な情報について列挙してみましょう。
- ①事業所得や不動産所得などを合算した総所得金額
- ②社会保険料控除
- ③小規模企業共済等掛金控除
- ④医療費控除
- ⑤生命保険料控除、地震保険料控除
- ⑥扶養控除、配偶者控除
- ⑦住宅借入金等特別控除
など。
所得控除や住宅借入金等特別控除などを加味することで、より正確な計算が可能となります。下記のサイトを使ってシミュレーションしてみると簡単に計算できます。
https://www.satofull.jp/static/calculation01.php
原則、所得税と住民税からそれぞれ控除されます。ただし、個人住民税のうち、特例控除額が個人住民税所得割額(住民税のうち所得に応じて課税させる分)の約2割を超えた場合、2,000円よりも自己負担は増えます。家族構成等により、控除額は変わりますが、大方、年収500万円の人の上限は4万9,000円です。
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【超簡単に理解できる】ふるさと納税って何?お得なの?|3分でわかる!税金チャンネル
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まとめ
人口減少の他にも新型コロナウイルスの流行や集中豪雨の被害などにより、経済に深刻なダメージを受ける地方自治体が増えています。そのような時だからこそ、少しでも手助けができれば…と考える方も多いのではないでしょうか。
納税する側とされる側双方にメリットのある「ふるさと納税」ですが、税額計算に対する知識に自信がなく二の足を踏んでいる、といった場合は税理士に相談してみるのも一つの方法です。