新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業・フリーランスを含む個人事業主を支援する「持続化給付金」の申請には、売上台帳の提出が必要です。6月29日からは対象が拡大し、委任契約や請負契約で得た収入を、給与所得・雑所得として申告していたフリーランスも給付を申請できるようになった ため、急遽売上台帳が必要になったという人もいるのではないでしょうか。この記事では、売上台帳の作成方法と、作成時にありがちな「よくある不備」について紹介します。できるだけスムーズに給付を受けるために、不備のない書類の書き方をしっかりチェックしておきましょう。
売上台帳とは
売上台帳とは、日頃の取引のうち売上に関するものだけを集計した帳簿です。売上台帳の書式に明確な規定はなく、日付ごとに発生した売上を内容や金額を記入して作成します。
持続化給付金申請時の証拠書類として求められる売上台帳も、日付・取引先・金額・金額の合計といった必須の項目が記されており、かつそれが確認できさえすればどのような書式・メディアでも認められます。
売上台帳の作り方
売上台帳に記載する内容
売上台帳の書式に規定はありませんが、売上台帳とは「どんな売上」が「いつ」、「いくら」あったのかを集計する帳簿なので、最低限以下の情報を記載する必要があります。
- 取引のあった日付
- 売上金額
- 品名やサービスの内容
- 売上の合計金額
- 取引先
持続化給付金の申請で提出する売上台帳等の書類も、「対象月の事業収入であること」、および「対象月の事業収入の合計額」を確認できることが条件とされています。
上記に加えて、販売事業であれば以下のような項目も必要です。
- 単価
- 数量
また、不特定の客にサービスを提供するような事業であれば、取引先の代わりに以下のような項目を記載しておくと当該月の売上状況について把握しやすくなります。
- 客数
- 客単価
既存の帳簿や会計ソフトから出力できる
普段は売上だけに注目した台帳をつけておらず急に必要になったという場合は、既存の仕訳帳や総勘定元帳のリストから売上だけを取り出せば売上台帳を作ることができます。会計ソフトを利用していれば、ほとんどのソフトに総勘定元帳から勘定科目と期間を指定して帳簿をエクスポートできる機能が含まれているため心配する必要はありません。PDFファイルかPNG・JPG形式の画像ファイルとして出力すれば、持続化給付金の申請にも使うことが可能です。
売上台帳は手書きでもいい
売上台帳は決まった書式がないため、事務用品売り場などで「売上帳」のノートを購入し手で書き込むことでも作成できます。持続化給付金の申請に使う証拠書類として提出する場合も、手書きの売上帳のコピーを作成してそれを使用できるとされています。紙の売上台帳を送信するためにデータ化する際には、スキャナで取り込むか、デジタルカメラやスマートフォンなどで内容が読み取れるようにきれいに撮影してPDF・JPG・PNGファイルに保存すれば問題ありません。
収入を給与所得・雑所得とするフリーランスの給付金申請に必要な書類
6月29日から持続化給付金の対象範囲が拡大 したことで、普段委任契約や請負契約の仕事をしていて、その収入を事業所得以外の給与所得・雑所得として申告しているフリーランスも給付を受けることができるようになりました。こうした「主な収入を給与所得・雑所得とするフリーランス」が持続化給付金を申請する際には、通常のケースで必要となる以下の書類
- 確定申告書類
- 対象月の売上台帳等
- 通帳の写し
- 本人確認書類
に加えて、「国民健康保険証の写し」と「業務委託契約書等収入があることを示す書類」の2つを提出する必要があります。
国民健康保険証の写しは、収入を給与申告していたとしても、あくまでも個人事業主として、社会保険ではなく自分で保険に入っているということを示すために提出します。任意継続被保険者や後期高齢医療保険者といった、被雇用者ではないものの国民健康保険に加入していない人については代替の方法があります。前者の場合は国民健康保険証の代わりに退職前の組合発行の健康保険証とともに退職証明書または離職票を提出することが認められており、後者の場合は後期高齢医療保険者証のオモテ面を提出することが認められています。なお、これらも売上台帳と同様に、スキャンした画像だけでなく、デジタルカメラ・スマートフォンで撮影した、字が読み取れるような画像のPDF・JPG・PNGファイルでも提出することができます。
業務委託契約等収入があることを示す書類は、主な収入が業務委託契約等収入であることを示すために提出する書類です。下記1~3の3種類の書類から、いずれか2つの異なる種類の組み合わせで提出します。
- 1.
- 1業務委託契約書等
- 2持続化給付金業務委託契約等契約申立書
- 2.
- 1支払調書の写しまたは源泉徴収票の写し
- 2支払明細書(署名又は記名押印)
- 3. 通帳の写し
なお、「2.1 源泉徴収票」を提出する場合は「1」の種類の書類とのみ組み合わせることができます。なお、複数の業者と委託契約を結んでいる場合であっても、1つの契約を選んでそれに関する書類をセットで用意して提出すれば問題ありません。
これらの書類のうち、「1.2持続化給付金業務委託契約等契約申立書」に関しては、当制度特有の書類であり、事務局が規定した書式で作成し、契約の相手方の署名または記名押印が必要となります。詳細については持続化給付金のサイトの「申請・受け取りについて」を参照してください。ちなみに、これらの書類もデジタルカメラ・スマートフォンで撮影した字が読み取れるような画像のPDF・JPG・PNGファイルでの提出が認められています。
売上台帳作成時に注意したいポイントと「よくある不備」
最後に、売上台帳を持続化給付金申請時の証拠書類として作成する場合の注意点と、申請が却下されたり給付が遅れたりしてしまう原因となる「よくある不備」について確認しておきましょう。
売上台帳であるということを明記していない
持続化給付金を申請する際に、当該月の事業収入を確認する証拠として提出する書類の名前は「売上台帳」でなくても良いとされてはいますが、それが何の帳簿か分からないのであれば問題です。はっきりと「売上帳」や「総勘定元帳 売上高」のように記載して、その書類が当該月の売上を集計した帳簿であることを示しましょう。
「いつの売上か」「誰の売上か」が明瞭でない
持続化給付金の申請では、前年同月と比べて50%以下の売上となる対象月の売上を示すために売上台帳を提出します。となると忘れてはならないのが、その売上台帳が今年の何月分の売上を集計したものであるのかという表記です。売上台帳には、帳簿上の各取引の日付に加えて、「2020年〇月」のようにこれがいつの資料なのかを明記してください。
また、意外に報告されているのが事業者名などの記載がなく、そもそも誰の売上台帳かが分からないという不備です。こちらも忘れないようにしましょう。
売上の合計額を記載していない
対象月の売上の合計額も必ず記載しなければならない項目です。対象月に売上が一切ない場合は「合計0円」などと売上が0円であることを明確に記載します。
レシート・給与明細・通帳の写し・請求書などは認められない
書式・形式を問わず、手書きの売上帳をスマートフォンで撮影したものも認められるなど、提出する売上台帳の要件は非常に寛容なものとなっています。しかし、レシート・給与明細・通帳の写し・請求書などに関しては、当該月の売上を確かめるための証拠書類として認められないことが発表されています。委任契約などで給与の形で収入(売上)を得ているフリーランスの場合も、きちんと売上台帳を作成して提出する必要があることに留意しましょう。
まとめ
売上台帳には特定の書式というものはなく、行った取引の中から売上だけを取り出し、各事業者にとって必要な項目とともに記録して作成します。持続化給付金の申請に利用する売上台帳の場合も、特定の書式やメディアは定められていません。ただし、その台帳が「対象月の事業収入を集計したもの」であることと、「その対象月の事業収入の合計額」を明記することを忘れないよう注意しましょう。