新型コロナウイルスの影響拡大により、注目を浴びているのがベーシックインカムです。ネットやテレビなどで、報じられているのを見たことがある人も多いでしょう。
実は、このベーシックインカムは、導入されると、我々の生活に大きな影響を与えます。そこで、ここではベーシックインカムについて詳しく解説します。
ベーシックインカムとは
まず、そもそもベーシックインカムとはどのようなものか。その内容や、考えが生み出された背景について見ていきましょう。
そもそもベーシックインカムとはどんなもの
ベーシックインカムとは、簡単に言うと「政府がすべての国民が最低限の生活を送れるように、年齢・性別等に関係なく、一律・無条件で現金を給付するしくみ」です。ベーシックインカムで重要なのが、「すべての国民」に対する「無条件」の支給ということです。
現在の社会保障制度では、例えば、高齢者への年金や、所得の低い人への生活保護など、一定の条件を満たした人に現金の支給があります。対して、ベーシックインカムでは、一定の条件を満たした人だけではなく「すべての国民」に現金を支給します。
また、現在の社会保障制度では、支給を受ける側が定期的に申請をすることで、現金が支給されますが、ベーシックインカムでは原則、申請なども不要です。「無条件」で現金が支給されます。
ベーシックインカムが注目を浴びる理由と背景
ベーシックインカムは、「すべての国民」に対する「無条件」の現金の支給です。では、なぜベーシックインカムが注目を浴びているのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で、ベーシックインカムが注目を浴びていますが、実は、ベーシックインカムの考え方は、今に始まったものではありません。ヨーロッパでは、昔からベーシックインカムの考え方が存在していたといわれています。古くからある考えがなぜ今になって注目を集めているかというと、近年、世界で貧富の差が広がってきているためです。
日本でも、貧富の差が著しくなり、ワーキングプアの人が増えてきています。ワーキングプアとは、生活保護の条件を満たさない程度の所得はあるが、生活をしていくには苦しい人々のことです。
また、少子高齢化により「現在の年金制度が続かないのではないか」「将来AI化が進んだときに、人の仕事が少なくなるのではないか」といった不安を多くの人が抱いています。
このように、現在や将来への不安が大きくなったことで、ベーシックインカムの考え方が、注目を浴びるようになってきたのです。
ベーシックインカム導入のメリット
ベーシックインカムには、さまざまなメリットとデメリットがあります。ベーシックインカムを導入したほうが良いのかどうかを判断するには、メリットとデメリットを理解しなければなりません。
ここではまず、ベーシックインカム導入のメリットについて見ていきましょう。
貧困・少子化対策
ベーシックインカム導入のメリットとして重要となるのが、貧困や少子化対策になる点です。
ベーシックインカムでは、「すべての国民」に「無条件」で現金を支給します。例えば、ワーキングプアの方も、現在の仕事の収入とベーシックインカムの収入があれば、生活が苦しくなることはありません。このように、ベーシックインカムは、貧困対策に効果的です。
また、ベーシックインカムの収入に年齢制限はありません。子供も支給対象です。子供が多ければ多いほど、支給される現金が多くなるため、少子化対策にもなります。
労働環境の改善
ベーシックインカムは、国民が生活できる最低限の現金を支給するものです。最低限の生活が保障されているため、生活のため、労働環境や待遇の悪い企業で無理に働き続ける必要がありません。企業側も労働環境や待遇が悪いままでは、労働者に敬遠され、労働力不足に陥ります。そのため、多くの企業で労働環境や待遇の改善が期待できます。
また、ベーシックインカムの導入で、労働人口が増えるといわれています。その理由は、生活保護を受けている人の存在にあります。生活保護は一定の収入があると、現金の支給が打ち切られます。そのため、仕事ができない人もいます。
しかし、ベーシックインカムでは、現金の支給に条件がないため、現在、生活保護を受けている人の中から、仕事をする人も増加します。労働人口が増えることで、人材不足による労働環境の悪化を防げます。
さまざまな働き方ができる
さまざまな働き方ができることも、ベーシックインカムのメリットのひとつです。最低限の生活が保障されているため、収入を得るための残業を増やす必要もありません。
また、子育てや親の介護をしながら、限られた時間で仕事をした場合であっても、生活に困ることはなくなります。自由な時間を大事にしたい人、お金を稼ぎたい人など、自分の望むさまざまな働き方が可能になります。
ベーシックインカム導入のデメリット
ここまでは、ベーシックインカム導入のメリットを見てきましたが、もちろん、ベーシックインカム導入にはデメリットもあります。ここからは、ベーシックインカム導入のデメリットを見ていきましょう。
ベーシックインカム導入には多くの財源が必要
ベーシックインカムを導入するための最大の問題点が、財源です。ベーシックインカム導入には、多くの財源が必要です。総務省の発表によると、現在、日本の人口は約1億2500万人です。すべての人に月7万円支給したとすると、毎月の予算は8兆7,500億円、1年間に換算すると105兆円にのぼります。
月7万円では、最低限の生活の保障は難しいため、もっと必要な金額が増えるケースが予想されます。この莫大な財源を捻出するために、消費税などの大きな増税が予想されます。
労働意欲の低下が起こる
ベーシックインカムのメリットでは、労働人口が増えることに触れました。しかし、逆の考え方をすると、ベーシックインカムの導入では、労働意欲の低下が起こる可能性があります。
ベーシックインカムでは、労働をしなくても、最低限の生活が保障されます。豊かな生活を送るためには、仕事をする必要がありますが、仕事をしなくても生きていけるため、労働意欲が低下し、中には働かなくなる人が増える可能性さえあります。
経済競争力の低下の可能性もある
ベーシックインカムによる収入があれば、労働者が働く会社や職種を選びやすくなります。人気のない職業は、生き残りのために賃金を高くする必要があるため、会社に利益が残りにくくなります。そのため、人気のない職業は、経済競争力の低下をまねきます。
また、財源の捻出のため、国は増税をする必要があります。法人が利益を確保するためには、税金分を自社の商品やサービスに転嫁せざるを得なくなります。そのため、物価が上昇します。
会社に利益が残らなくなることや、物価が上昇することで、企業の経済競争力が低下する可能性も出てきます。
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まとめ
ベーシックインカムは、「すべての国民」に「無条件」で現金を支給します。しかし、貧困・少子化対策や労働環境の改善などのメリットがある一方で、多くの財源が必要、経済競争力の低下の可能性があるなどのデメリットもあります。
今後、日本でもさらにベーシックインカムが注目される可能性があります。ベーシックインカムの導入には、事前にしっかりとした議論をする必要があるでしょう。