有料老人ホームを月々のコストを優先して選ぶと、期待しただけの介護が受けられず、楽しみのない余生を送ることになるかもしれない、というのがここまでの話。【ケース3】は、介護をめぐるいざこざが、「争族」を招いてしまった事例です。
【ケース3】事情を知らない親族の横やりが……
90歳になるCさんは、10年ほど前にご主人を亡くし、長男夫婦と同居していました。子どもは、他に次男と長女の計3人でした。高齢になってからも、身の回りのことはなんとか自分でこなしていたのですが、さすがに排せつや入浴に不自由さが感じられるようになりました。そこは、長男のお嫁さんが何かと面倒をみてきたわけですが、日に日に足腰が弱り、自宅内での転倒リスクも懸念されるような状態に。
そこで、長男夫婦は、Cさんに自宅近くの介護付き老人ホームに入所してもらうことにしました。ところが、その「報告」を聞いた弟から、強い反対を受けてしまいます。「介護施設に入れるなんてかわいそうじゃないか」「自宅に住まわせてもらっているのだから、最期まで面倒をみるのが当然だろう」と。次男夫婦は、実家にはたまに顔を出すだけなので、元気な頃のCさんのイメージしかありません。お嫁さんの苦労も知らないわけです。
とはいえ、元来気の弱いところもあった長男は、介護施設に入れるのをいったん思いとどまり、自宅での介護を続けました。ところが、1年もすると、Cさんは歩くこともままならなくなってしまいます。さすがに介護の限界を迎えた妻の姿を見て、長男は今度こそ入所を決断しました。次男には、「そんなに介護施設に入れたくなければ、お前が面倒をみろ」と話し、次男も渋々それを認めたのです。
そういう経緯で、ようやく親の介護生活から解放された長男夫婦でしたが、数年後にCさんが亡くなり相続になると、この時の“遺恨”が再燃しました。相続財産は、評価額1,600万円の自宅、1,300万円の預金と1,500万円の死亡保険金の計4,400万円。相続税はかからない(法定相続人が3人の場合の「非課税枠」は4,800万円)レベルの遺産だったにもかかわらず、兄弟で骨肉の争いになってしまったのです。
次男は、「預金の額が少なすぎる。同居しているのをいいことに、引き出して自分たちの生活費などに使ったに違いない」と主張しました。そんなふうに言われた長男側は、「長年苦労して母親を介護したのは、誰だと思っているのだ」と反論します。遺産分割協議は決裂して家庭裁判所の調停に持ち込まれ、それでも決着がつかず裁判になりました。
結局、裁判では次男の主張は認められなかったのですが、2人とも、もらえるはずの財産は、弁護士費用などで大きく目減りしてしまいました。もちろん、長男、次男は、それ以降絶縁状態です。
介護も相続も早めの準備が大事
これらの事例からくみ取れる教訓の1つは、「介護は必要になってから考えると手遅れになりかねない」ということです。【ケース3】に即して言えば、長男は、母親の体調や奥さんのケアの実情について、弟、妹にきちんと話し、事前に理解を得ておけば、希望の介護施設に問題なく入所させることができたかもしれません。まして、兄弟の絶縁のような大ごとにならずにすんだのではないでしょうか。そうした話をする際には、面倒をみてもらっている側の親が参加することも、重要なポイントです。「長男の嫁はしっかりやってくれている」という話を聞けば、他の兄弟たちも納得できるからです。
くり返しになりますが、老人ホームを「料金第一」で選ぶのはリスキーです。さりとて、「いい介護施設」に入るために十分な資金が必要なことは、言うまでもないでしょう。預金や年金の額もさることながら、例えば自宅や他の資産を売却できるのならば、その利益も原資にカウントすることが可能です。とはいえ、すぐに希望額で売れる保証はありません。ニーズに適した介護施設を選び、資金計画を立てるためには、入所予定者が元気なうちから準備を進めることが、何よりも大事になるのです。
老人ホームには、自立した人向けの住居型シニアレジデンスもあります。介護が必要になる前に入居して、新たな生活をスタートさせるという選択肢もあるでしょう。
介護の先には、相続が控えています。これもまた、早めに着手するのがベスト。資産の売却と言いましたが、相続で子どもに譲るためにそれはあえて売らないでおく、といった判断もあるでしょう。「どんな介護を望むのか」「どういう相続にしたいのか」をセットにして検討するのが、成功のカギになるのです。
【終の棲家】高級老人ホームという選択肢 ~グランクレール芝浦~
事例のように、子どもの思惑で不幸な老後を送る羽目になったり、逆に親が介護や相続に向けた青写真を持たなかったために、自分の死後に子どもが反目しあったりするのは避けたいもの。「成功例」も紹介しておきましょう。
今年7月開設の東急イーライフデザイン(東急不動産株式会社の連結子会社)が管理・運営する「グランクレール芝浦」には、アクティブシニア(自立)の方向けの住宅型有料老人ホームのシニアレジデンス(52室)・介護が必要な方向けの介護付有料老人ホームのケアレジデンス(88室)があります。
アクティブシニアの方向けのシニアレジデンスは、居室は40~80㎡でキッチン(IHコンロ)・浴室・洗濯機置き場もあります。バリアフリーは当然ながら、在宅中に人の動きがないとアラームが事務所に通知される人感センサーや、緊急コール(居室・トイレ・浴室)・床暖房など安心して生活出来る居室になっています。
介護が必要になれば同建物のケアレジデンスに移動して生活のお手伝いをします。職員体制は2:1以上の手厚いスタッフに加えて24時間看護師常勤、リハビリルームでの専門のスタッフによるリハビリのお手伝いや看取りもあり【自立~介護まで終身でご利用頂ける介護施設】となっております。
今回はシニアレジデンスについて榊原支配人にお話しいただきました。
シニアレジデンスのご入居者様はプライベートを大切にしながら、自分のペースで生活できることに魅力を感じている方が多いですね。52室ある居室には、現在20名ほどの方が入居されていて、平均年齢は82歳。90歳前半から下は60歳前半の方までいらっしゃいます。自立ではない(軽介護・要支援・要介護)方もいらっしゃいますが、介護保険を使った訪問介護で生活援助サービスなどを利用することもできます。料金は居室やサービスの中身によって違ってきますが、月払いならば50万円程度~です。重介護になるようであれば同建物のケアレジデンスにてお世話させていただきます。
候補として見学に来られるのは、ご本人様とご家族様の場合が半々くらいでしょうか。正直、利用料金は高額の部類に入る介護施設ですが、子どもさんが積極的に勧められている姿を見ると、「親にはこういうところで老後を過ごしてほしい」という家族愛を感じますね。入居後も、毎日のように面会に来られる方がけっこういらっしゃいます。
ここは共同生活の場ですので、自宅にいるのとは違った世界が広がるのも大きな魅力だと思います。ご入居者の方は芝浦に何らかの土地勘がある方が多く、食事の時に意気投合して、一緒に出かける関係になるようなこともあります。ご入居者のご趣味に合わせてスタッフが勉強し、一緒に参加させて頂くこともあります。皆様が充実した生活を送れるように、スタッフもカタログやパンフレットでは示せないマインドを前面に、フォローさせていただいています。
入居に当たって、ご自宅を売却される方もいます。入居前に売って資金を確保される場合もあれば、売却は入居してから、という方もいます。そのあたりは、グループ会社に東急リバブルという不動産会社を持っているのも強みで、ご利用いただければ、ニーズに合った対応をさせていただきます。
グランクレール芝浦は、介護施設に相続のフォロー体制が整っている、親子間でコミュニケーションを取ることで相続の話もスムーズに進めることができる介護施設と言えるでしょう。
まとめ
本人にとっても子どもにとっても幸福なシニアライフを送るためには、介護や相続について、元気なうちから準備を進めることが大事です。家族でよく話し合うのと同時に、必要に応じて相続に詳しい税理士などの専門家のサポートを受けるようにしましょう。