法人を休業しても税金はかかる? 法人の休業について徹底解説 | MONEYIZM
 

法人を休業しても税金はかかる?
法人の休業について徹底解説

法人を経営していると、やむを得ない理由で事業をいったん立ち止まることを考える場合があります。そんなときに行うのが休業の手続きです。休業といっても会社は存続しています。では、法人を休業しても税金はかかるのでしょうか? ここでは、法人の休業に関する手続きや税金について徹底解説します。

事業をやめる手続きには休業と精算がある

事業を一時的にストップするときは、休業する

事業をやめる手続きには、休業と精算の2つがあります。どちらを選択するかにより、やめるという意味合いや、手続きなどが大きく変わります。ここでは、まず休業から見ていきましょう。休業とは事業を一時的にストップすることです。今後の再開の見込みがある場合や、とにかく一旦立ち止まって今後のことを考えたい場合に休業します。
では、休業の手続きについて見ていきましょう。

(1)休業届

法人は毎年国と都道府県、市区町村に申告をして税金を支払っています。そのため、休業するためには、申告している税務署と都道府県、市区町村に休業届(異動届)を提出します。税務署には休業届がないため、異動届出書に休業した旨を記載し提出することになります。都道府県、市区町村では、自治体によって休業届がある場合とない場合があります。休業届がない場合は、税務署と同じように異動届出書に休業した旨を記載し提出します。提出期限は決まっていませんが、休業が決まれば、速やかに提出します。

(2)社会保険

会社を休業し、社会保険の被保険者がいなくなった場合は、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」や「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。後日事業が再開する際には、再加入の手続きをする必要があります。提出期限はどちらも休業してから5日以内です。

(3)登記関係

休業は会社を完全にストップしないので、休業のための登記は不要です。

事業を完全にストップするときは、精算(廃業)する

事業を完全にストップするときには、会社の精算を行います。こちらは完全に会社を消滅させるため、後日再開することはできません。今後の再開の見込みがない場合に行います。
いきなり精算ができるわけではなく、まずは解散してから精算とステップがあります。
では解散と精算の手続きについて見ていきましょう。

(1)廃業届(解散届・精算届)

事業を廃業する場合は、申告している税務署と都道府県、市区町村に廃業届(異動届)を提出します。税務署や多くの都道府県、市区町村には廃業届がないため、異動届出書に廃業した旨を記載し提出することになります。通常、会社は解散したあと会社の財産を整理し精算します。そのため、解散した時点で廃業届(解散届)、精算した時点で清算届(どちらも異動届にその旨を記載)を税務署と都道府県、市区町村に提出します。提出期限は決まっていませんが、廃業が決まれば、速やかに提出します。

(2)社会保険

会社を廃業し、社会保険の被保険者がいなくなった場合は、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」や「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。提出期限はどちらも廃業してから5日以内です。

(3)登記関係

解散したときは解散登記を、精算したときは精算結了登記を行います。

(4)申告関係

解散したときと精算したときにはそれぞれ解散確定申告と精算確定申告が必要です。

休業中の手続きと税金

休業中でも税務署に申告が必要

今までは休業するときの手続きを見てきました。ここからは休業中の手続きについて見ていきましょう。

実際に活動していないので税金はかかりませんが、休業中であっても税務署には申告が必要です。これは青色申告と関係します。休業中で税金がかからないからといって申告をしなければ、青色申告を取り消されます。青色申告にはさまざまな特典がありますが、特に休業中の会社にメリットになるのが、欠損金の繰越控除です。青色申告の確定申告書を継続して税務署に提出している限り、欠損(赤字)の金額を9年間(平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては10年間)繰り越すことができます。事業を休業するということは、繰越欠損金がある場合が多いので、もし繰越欠損金の期間中に事業を再開すれば、その年以降に黒字がでても、繰越欠損金と相殺することができ、かなりの節税となります。
都道府県や市区町村には申告の必要はありません。

休業中は税金がかからない?休業のメリット・デメリット

【休業のメリット】
(1)休業中は基本、法人税等が課されない

休業中のメリットの1つに法人税等が課されないことがあります。これは、休業中は事業活動や経済活動を行っていないためです。法人を残したいが、税金が支払えない場合には使いやすい制度です。

(2)いつでも、事業を再開できる

廃業の場合は、登記上、会社を消滅させています。そのため、事業を再開しようと思うと、一から会社を設立しないといけないため、多くの手間と費用がかかります。
一方休業の場合は、税務署や都道府県、市区町村に届け出をだしますが、登記上何か変更を行うということはありません。事業活動や経済活動を再開すれば、それが事業の再開になり、再開するための手間や費用がかからないメリットがあります。

【休業のデメリット】
(1)役員変更などの登記が必要

休業するときに、登記の変更を行うということはありません。そのため、登記上は休業していない会社と同じ扱いです。休業していたとしても役員はそのまま登記されているため、休業時に変更する場合や休業中に役員の任期が切れる場合などは、役員変更の登記をする必要があります。

(2)みなし解散の危険性もある

みなし解散とは登記の変更を12年間行っていない法人に対して、法務局自ら解散の登記を行うことです。通常、会社法では10年に1度役員変更の登記を行うことが義務付けられています。そのため、10年を超える12年間登記の変更を行っていない法人を休眠会社とみなし、数年に1度法務局で整理します。ただし、いきなり行われるのではなく、みなし解散する旨の通知をその会社に行い、2か月以内に事業を廃止していないという届出をしない場合のみ、みなし解散を行います。

休業中でも税金がかかることもある?

法人地方税の均等割に注意

休業中は税金がかからないということを上述しましたが、例外があります。それが法人地方税の均等割です。均等割とは、都道府県や市区町村に法人が存在し、地域サービスを受けていることに対する税金で、法人の経済状況が黒字・赤字に関係なく課される税金です。それでも通常休業の場合は、均等割もゼロの自治体が多いですが、登記上休業していない法人と変わりなく、会社の状況で判断するため、なかには均等割の支払いを求める自治体もあり、注意が必要です。

事業活動や経済活動を行った場合は注意

簡単に言うと、事業活動とは売上や仕入など事業に関する行為のことをいい、経済活動とはお金を生み出す行為のことをいいます。実は、休業とは事業活動や経済活動を行わないことを前提としています。たとえば、何気なく会社所有の固定資産を売却したり、会社の借金を免除してもらったりした場合は事業活動や経済活動を行ったとみなされ、休業でなくなる可能性もあります。その場合は税金が課せられる可能性もあります。このようなことがあった場合は、個別事案として対処方法が異なります。税理士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

法人が事業をストップする方法には、休業と精算(廃業)があります。今後再開する見込みがある場合は、メリットが大きい休業を選択しましょう。しかし、休業には注意点もあります。この記事を参考に、まずは休業の知識を付けることから始めましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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