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これで安心!
個人事業主の確定申告に役立つ勘定科目を徹底解説

「この領収書の勘定科目は何?」

確定申告をするときに迷う個人事業主は意外と多いようです。会計ソフトによっては、勘定科目マニュアルの機能が付いています。しかし、勘定科目の知識だけでは不十分です。そこで、確定申告を行う上で欠かせない、勘定科目について徹底解説します。

勘定科目はお金の使い道を報告するツール

そもそも確定申告は「お金が入出金した結果、儲かった金額」を税務署に報告する作業です。その考えに基づき、勘定科目の役割について見ていきましょう。

そもそも勘定科目って何?

個人事業主は事業所得や不動産所得について、所得の計算方法を税務署が分かるように報告します。その入出金の項目が勘定科目です。税務署に報告する以上、誰もが納得する勘定科目を用いる必要があります。たとえば、店舗の家賃を支払ったとします。家賃の勘定科目を「水道光熱費」としても、経費で落とせますが、それでは自分にしか分かりません。税務署にもお金の使い道が分かるように「地代家賃」として会計処理するのがルールです。

毎年同じ勘定科目を用いよう

税務署は個人事業主のお金の使い道を把握するため、確定申告書を過去と比較します。

たとえば、同じ場所の物件を借りていれば、去年と今年に支払う家賃の金額はほぼ同じになるのが普通です。そのことを税務署に報告するためには、毎年「地代家賃」の勘定科目を用いる必要があります。

反対に、年ごとに用いる勘定科目が異なると、「家賃の水増し計上」など税務署から疑われるためリスクがあります。

このように、税務署からお金の使い道について疑われないためには、毎年同じ勘定科目を用いるのがポイントです。

用いる勘定科目の具体例を解説

実際に仕事をしていると、いろいろな入出金の項目があります。たとえば、同じ税金の支払いでも、種類によって勘定科目は違ってきます。そのような迷いを少しでも解消するために、勘定科目の具体例を解説します。

事業所得の個人事業主が用いる勘定科目

白色申告の収支内訳書、青色申告の青色申告決算書には、いろいろ勘定科目が記載されています。そこで、青色申告決算書の損益計算書をベースとして、勘定科目を解説します。

 

(1)売上(収入)

商品・製品の売上やサービスの提供による収入などです。ただし、事業用に使用した車の売却代金・下取り価格などは譲渡所得のため、除きます。

(2)仕入

商品の購入代金です。

(3)租税公課

仕事用の固定資産に対する固定資産税、収入印紙代、事業税、消費税などです。所得税、住民税、相続税などは除きます。

(4)荷造運賃

商品・製品などを発送するための運送料です。

(5)水道光熱費

仕事で使用した電気代、ガス代、水道代です。

(6)旅費交通費

移動に使用した電車代、バス代、ガソリン代、コインパーキングなどの駐車場代などです。ただし、月極駐車場は除きます。

(7)通信費

事業用に使用した固定電話代、携帯電話代、切手代などです。

(8)広告宣伝費

ウエブ広告代、求人広告代、チラシ代、社名入りカレンダー代などです。ただし、固定資産となる30万円以上の看板代は除きます。

(9)損害保険料

事業用に使用した物件や自動車などの損害保険料です。

(10)修繕費

事業用に使用した物件や自動車などの修理や車検などメンテナンス代です。

(11)消耗品費

プリント用紙・インク台など消耗品代やパソコンなど30万円未満の器具備品代です。なお、30万円以上の器具備品は除きます。

(12)減価償却費

自動車など購入したタイミングにより一括で経費として落とせない30万円以上の固定資産について、使う年数で按分した金額のことをいいます。経費で落とす金額と現金預金の支出額が異なります。

(13)福利厚生費

夜食代など従業員の福利厚生に関する費用です。

(14)給料賃金

従業員に対するパート、アルバイトなどの給料です。ただし、配偶者など家族に対する給料は除きます。

(15)外注工賃

下請け企業への発注費用、ホームページ制作など外注費用のことをいいます。

(16)利子割引料

銀行へ支払う利子のうち、事業用にかかるものをいいます。

(17)地代家賃

賃貸物件の家賃、月極駐車場代のことをいいます。

(18)雑費

振込手数料など(1)〜(17)まで当てはまらない経費です。

(19)専従者給与

配偶者など家族に対する給料です。

(20)青色申告特別控除額

青色申告で確定申告をする場合、65万円または10万円が所得から控除できます。

不動産所得の個人事業主が用いる勘定科目

不動産所得用の青色申告決算書から事業所得との違いを中心に解説します。

(1)賃借料

基本的に毎月の賃貸収入です。

(2)礼金・権利金・更新料

契約または更新するときに、受け取る一時金です。この中には、解約した時に返金しない保証金も含まれます。

(3)租税公課

おもに賃貸物件や月極駐車場の土地などの固定資産税です。

(4)損害保険料

賃貸物件に対する損害保険料や地震保険料です。

(5)修繕費

賃貸物件の修理代やリフォーム代などです。

(6)減価償却費

事業所得と同じ。

(7)借入金利子

賃貸物件などの購入に充てた借入金の利子です。

(8)給料賃金

事業所得と同じ。

(9)その他の経費

(1)〜(8)までに当てはまらない経費です。

(10)専従者給与

事業所得と同じ。

(11)青色申告特別控除額

事業所得と同じ内容です。

(12)土地等を取得するために要した負債の利子の額

土地の購入に充てた借入金の利子です。仮に赤字でも、この利子は他の所得からマイナスできません。

事業所得と不動産所得の個人事業主に共通する勘定科目

青色申告決算書の貸借対照表をベースに解説します。

(1)現金

仕事用の現金です。

(2)当座預金・普通預金・定期預金・その他の預金

仕事用の各預金です。

(3)売掛金または未収賃借料

売掛金は売上代金、未収賃借料は賃貸物件など家賃が未だに入金されていない金額です。

(4)棚卸資産

商品・製品・原材料などの在庫を指します。

(5)前払金

基本的に不動産などを購入するときの手付金です。また、原稿料やデザイン代など入金されるときに天引きされる源泉所得税について、この勘定科目を用いる選択肢もあり得ます。

(6)建物

仕事用で所有する賃貸物件などの建物です。

(7)建物付属設備

建物に付属する給排水設備や空調設備などです。

(8)構築物

所有する月極駐車場などのアスファルト舗装代や煙突などです。

(9)工具器具備品

パソコン、サーバー、プリンタなどの固定資産です。

(10)土地

更地などの土地です。

(11)買掛金

商品・原材料など仕入代金の未払い分です。

(12)借入金

仕事用の金融機関からの借入金元本です。

(13)未払金

電気代など経費の未払い分です。

(14)前受金

受け取った手付金です。

(15)預り金・保証金・敷金

従業員の給料から天引きした所得税、賃貸物件に対して預かった保証金や敷金のうち解約したときに返金する分です。

(16)事業主貸

支払った所得税、住民税、生活費などです。

(17)事業主借

個人事業主のポケットマネーから仕事用に投入したお金です。

勘定科目を用いるときの注意点

勘定科目は確定申告を通じて、お金の使い道を報告するツールです。そのため、税務署から疑われないようにする必要があります。そこで、信頼されるための勘定科目を用いるポイントについて紹介します。

なるべく「消耗品費」と「雑費」の勘定科目は用いない

消耗品費と雑費は税務署が疑う勘定科目です。その理由を説明します。

(1)消耗品費

この勘定科目が多額の場合、本当は貸借対照表の「工具器具備品」などに含まれる30万円以上の固定資産を誤って購入したタイミングで全額経費として落としていると税務署が勘違いするリスクがあります。必要に応じて、事務用品は「事務用品費」など、勘定科目を消耗品費と使い分ける工夫が大切です。

(2)雑費

募金など本当は経費で落とせない費用を水増し計上するために使用される傾向のある勘定科目です。そのため、雑費の金額が多額の場合、税務署が疑う可能性は否定できません。
経費の水増し計上と疑われないために、業者へ支払う情報提供料などは「支払手数料」の勘定科目を用いて、雑費から独立させるのがポイントです。

勘定科目の金額が前年との差が大きい場合の対処方法

税務署は確定申告書を過去と比較しますが、同じ勘定科目が前年との差が大きいと疑う傾向にあります。たとえば、売上が前年の3倍となった場合、「本当に業績が伸びたのか、前年の売上の一部を隠していたのか」など差が大きい理由を知りたがります。そのため、勘定科目が前年との差が大きいときは、便せんなどを用いて、確定申告でその原因を説明するのが税務署から信用されるポイントです。

まとめ

勘定科目は税務署にお金の使い道を報告するツールです。そのため、自分だけがお金の使い道を分かっていても意味はありません。

・毎年同じ勘定科目を用いる

・勘定科目の金額が前年との差があるときはその理由を説明する

など、税務署に分かりやすくするのがポイントです。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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