クラウドファンディング、税務上での扱いは? | MONEYIZM
 

クラウドファンディング、税務上での扱いは?

近年耳にすることが増えてきたクラウドファンディング。手軽に少額からでも資金を用達することができるのは大きな魅力と言えます。しかし、クラウドファンディングにより資金を調達した際、そのお金は税務上どのように扱えばよいのでしょうか? 今回は今流行のクラウドファンディングという資金調達法について、税務の観点から丁寧に解説して行きます。

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クラウドファンディングとは何か?

クラウドファンディングとは、英語の「Crowd(群衆)」と「Funding(資金調達)」を合わせた言葉で、事業に必要な資金を、インターネットを通して不特定多数に呼び掛けて募る資金調達の手法です。自らが構想する事業やプロジェクトの詳細をインターネット上でPRすると、その趣旨に賛同する人が集まり、事業の支援のために寄附を行ってくれるという仕組みです。クラウドファンディングを用いて新しく事業を立ち上げる側と新しい事業を支援する側をマッチングするための場を提供するサービスもあり、多くのクラウドファンディングはそのようなウェブサイトを通して行われます。こうして得られた資金を元手に、立案者は新しい事業やプロジェクトを立ち上げることができます。クラウドファンディングは個人が行うこともあれば、企業や自治体が行うこともあります。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングにはいくつかの種類が存在し、それぞれ特徴が異なります。

購入型

購入型クラウドファンディングは、支援者が事業に対してお金を支援することに対して、事業を立ち上げる側はその対価として何らかの商品やサービスを提供するというものです。後に詳しく述べますが、このような事業に対する法的制約が比較的多い日本では、物品やサービスの購入・販売という形式をとるこの購入型クラウドファンディングが主流です。購入型クラウドファンディングでは事業そのものの内容も重要ですが、支援金の対価として得られる商品やサービスが魅力的であることも同程度かそれ以上に重要になってきます。

 

また、購入型クラウドファンディングにはさらに2つに区分され、それぞれ「達成時実行型」と「実行確約型」と呼ばれます。達成時実行型では、公表されている目標金額に支援金が到達すれば資金が立案者に渡され、事業あるいはプロジェクトが実行されますが、目標金額に届かなかった場合資金は渡されず、多くの場合そのプロジェクトは実行されません。集まった支援金も返金されます。一方の実行確約型では、支援金が目標金額に達そうが達すまいが集まった資金は立案者に渡され、必ずその事業は実行されます。

寄附型

寄附型とは、完全に何のリターンもない純粋な寄附によるクラウドファンディングの手法です。支援者はお金を出すだけで、購入型のように商品は貰えず、また事業が成功してもリターンは一切ありません。場合によってはお礼の手紙等が渡される場合もありますが、基本的には完全な寄附制です。この寄附型クラウドファンディングは、利益が生じるような事業やプロジェクトではほとんど行われず、発展途上国支援や被災地支援などといった社会貢献プロジェクトを立ち上げる場合に多く用いられます。このような事業は、個人や団体で募金活動を行うとなると、充分な資金を得るためには非常に大きな労力を必要とします。寄附型クラウドファンディングを利用することでより効率的に多額の資金を調達することが可能になり、また支援者にとっても自分たちのお金の流れが明瞭になるというメリットがあります。

投資型

投資型は、未公開株やその他の金融商品と引き換えに事業立ち上げのための資金を得るクラウドファンディングの方法です。投資型の中でも大きく分けて3つのタイプがあります。

 

1つ目の株式型は、まだ上場していない株式会社が株を売り出すというもので、支援者は他の株式と同様、事業が成功し株価が上昇すれば利益を上げられます。ただし非上場株は売却が難しいので、支援者にとっては高いリスクが伴うタイプであると言えます。

 

2つ目は貸付(融資)型です。これは、支援者からお金を借りるという形式で資金を得る方法で、事業立ち上げ側は支援者に利子を払うことになります。感覚としては社債や国債に近いものです。

 

3つ目のファンド型は、事業が成功し利益が上がったときに、支援してくれた人に対して金銭や商品を還元する方法です。

税務上の扱いはどうなる?

クラウドファンディングは資金を調達する有効な手段の1つですが、それぞれの方式によって課される税金の種類も変わってきます。

購入型

購入型クラウドファンディングで資金調達をする際は、支援金を得るリターンとして何かの商品やサービスを支援者の方に提供することになります。これをより一般的な形で表現すれば、お金と引き換えに商品やサービスを提供するということになり、通常の商品やサービスの販売と変わりありません。よってここで得られた資金は、立案者が個人の方ならば所得税の対象となりますし、法人ならば法人税の対象となります。通常の商品やサービスの販売との違いがないということは、得られた利益は通常通り年度の最後の確定申告の際に他の利益と必要経費と合算され、そこに税金が課せられます。

 

よって、購入型クラウドファンディングによって得られた資金に対して別個に特定の税金が課せられるということはありませんし、クラウドファンディングの実施にあたって必要経費が発生すれば、税金の額が一気に跳ね上がるということもありません。むしろ購入型クラウドファンディングの場合には、提供する商品やサービスの準備を経費として計上できるため、税金は比較的抑えられる傾向があります。

 

しかしながら、購入型クラウドファンディングが税制上の通常の商取引として認められるためには、得られた支援金に対して提供する商品やサービスの価値が、価格設定として適切である必要があります。例えば1万円の支援金に対するリターンがポストカード1枚など、通常の取引ではありえないものである場合には、購入型ではなく寄附型のクラウドファンディングとみなされるので注意が必要です。

投資型

投資型クラウドファンディングも、税制上では基本的に購入型クラウドファンディングと似たような扱いになります。未上場株式などを提供する代わりに支援金を得た場合、その時点では税金は発生しません。しかし、株式を発行して得た資金で何らかの活動やプロジェクトを行い、それによって利益が生じた場合、購入型クラウドファンディングと同様に個人の場合は所得税が、法人の場合は法人税の納税義務が発生します。こちらもクラウドファンディングで得られた資金に対して別個に特定の税金が課せられるということはなく、年末に他の利益や費用と合算した合計額が課税対象になります。そのためこの場合でも、クラウドファンディングを実施するにあたって必要経費が発生すれば、税額が一気に跳ね上がるということはありません。

寄附型

寄附型クラウドファンディングは、支援者側が個人か法人か、そしてそれを受け取る側が個人か法人かの計4通りでそれぞれ税金の仕組みが異なります。

個人から個人への支援の場合

この例に当てはまる場合、まず支援者には一切納税の義務は発生しません。しかし支援を受ける側は、この場合には贈与を受けているとみなされ、一定条件の下で贈与税が課されます。1年間に受け取った贈与額のうち110万円を超えた分に関して贈与税が発生します。そのため、1年間の目標金額を110万円に設定し、それ以上の寄附を受け取らないようにすれば個人から個人への寄附の場合には税金は発生しません。

個人から法人への支援の場合

この場合でも、個人である支援者には一切納税の義務は発生しません。一方の支援を受ける法人側では、受け取った寄附金は受贈益として計上されます。これは益金の一種であるため、法人税の課税対象となります。上記の購入型および投資型と同じく、クラウドファンディングで得られた資金は、最終的にその他の益金と必要経費等の費用と合算され、課税対象額が算出されます。この場合においても、クラウドファンディングの実施に要した費用は損金算入が可能です。

法人から個人への支援の場合

法人が個人に対して支援を行う場合は、ある一定範囲までは寄附金を費用として計上し、法人税を減らすことができます。ですが、それを超える分については費用として計上できないため、多く寄附しすぎてしまうと実際の利益よりも法人税課税対象額が高くなってしまい、税の負担が増えてしまうので注意が必要です。

 

支援を受ける個人に関しては、一時所得となり、所得税が課税されます。一時所得の金額は「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)」で算出されます。

法人から法人への支援の場合

法人が法人に対して支援を行う場合でも、ある一定範囲までは寄附金を費用として計上し、法人税を減らすことができますが、それを超える分については費用として計上できません。ただし国や地方公共団体に対する寄附金および国によって指定された種類の寄附金に関しては、全額費用として計上することができます。

 

一方、支援を受ける法人側は、個人から支援を受ける場合と同様に、受け取った寄附金は受贈益として計上され、法人税の課税対象となります。

☆ヒント
クラウドファンディングは資金調達の有効な手段の1つですが、その形態によって課税の仕組みが異なるという煩雑な面もあります。この点を理解せずにクラウドファンディングで得た資金に対する税金に関して問題を起こせば、支援者からの信頼を大きく損ねてしまいます。弊社では各種税制に精通した優秀な税理士を多数紹介しておりますので、クラウドファンディングで得た資金の取り扱いについて気になることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

クラウドファンディングは新しいプロジェクトを始めるにあたっての有効な資金調達法の1つです。クラウドファンディングには実に様々な種類がありますが、それぞれ税金の仕組みが少しずつ異なる点に注意が必要です。それぞれのクラウドファンディングの種類とその税の仕組みについてしっかり理解し、クラウドファンディングを有効に使えるようにしましょう。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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