現在個人で事業をやっていて、これから法人成りをしようと考えているが、どのような手続きを踏めばいいのかがわからない―今回はそのような方に向けて、法人成りの諸手続きについて特に重要なポイントをまとめました。
法人の種類について
法人にもいくつかの種類があり、実際には「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選ぶことになります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
株式会社とは?
株式会社は、株式を発行して資金を集め、その資金をもとに運営されます。株式会社では、出資者である株主と法人の経営者の役割が切り離されています。ただし、出資者と経営者は、同一人物でも問題ありません。
メリットは、会社形態としての「株式会社」は知名度が高く、取引先や金融機関などの信用度も高くなること、株を発行して資金調達ができることです。
一方、合同会社に比べ、設立に多くのコストがかかる、利益配分は出資比率に応じて行わなければならないという縛りがある、といったデメリットもあります。
合同会社とは?
一方、合同会社は、必ず出資者=会社の経営者である、という特徴があります。合同会社では、出資者のことを社員と呼ぶのですが、従業員という意味ではありません。合同会社の社員は、原則として、経営も行う必要があります。
合同会社は、株式会社よりも設立費用を抑えることができます。後で説明する会社設立の登記の際に納める登録免許税は、株式会社が15万円程度かかるのに対して、合同会社は6万円程度で済みます。また、株式会社は公証役場で定款の認証を受ける必要があり、その費用が3万円から5万円程度かかるのですが、合同会社は不要です。株式会社では最低でも18万円程度かかる設立時の費用が、合同会社の場合は6万円程度に抑えることができるのです。また、社員が経営者となるため、スピーディーな意思決定が可能、役員の任期がない(株式会社は通常2年)、利益配分が自由に決められる、といったメリットもあります。
半面、誰もが知る株式会社と違って知名度が劣るため、人材採用や取引先との関係などにおいて、不利になる場合があります。資金調達の方法が限られる、出資者(社員)同士が対立すると、経営や業務に悪影響を及ぼす可能性がある、という点もデメリットです。
法人成りのメリット・デメリット
法人成りのメリット
①「個人」ではなく「会社」だからこそ使える節税テクニックがある
②助成金が受けられる
③社会的信用度が上がる
④事業継承がスムーズに行える
⑤会社のお金と自分のお金が簡単に線引きできる(経営を明確化できる)
⑥有限責任である
中でも節税テクニックの点を重視して法人成りを検討する人は多いと思いますが、それ以外にもメリットを享受できる点を押さえておきましょう。
法人成りのデメリット
一方で、もちろんデメリットもありますのでしっかり確認しておきましょう。
①事務的な負担が格段に多くなる
②設立の際に法人登記費用が必要
③赤字でも法人住民税の均等割は支払義務がある
④従業員の社会保険や労働保険の負担が発生
⑤交際費が全額費用にならないケースがある
節税のことばかり考えて法人成りをすると思わぬ負担に苦しむ場合があります。
会社設立の手続き
では実際に会社を設立するにあたって、どのような手続きを踏んでいくのかを説明していきます。以下のフローチャートは会社設立までの流れを示します。一つずつ確認していきましょう。
①許認可の取得
扱うビジネスの領域によっては、自治体などの許認可が必要です。例えば旅館なら「旅館業営業許可」、飲食店なら「飲食店営業許可」などが該当します。このような許認可が求められるビジネスは実は数が多く、また種類によって担当機関や窓口が異なっています。
注意したいのは、多くの場合、個人事業で得ていた許認可は無効となり、法人成りに伴って新たに取得する必要がある、ということです。②以降の手続きに時間やコストをかけたのに、①を忘れていたために事業がスタートできなかった、などということがないように、事前にチェックするようにしましょう。
例えば、次のような業種については、新たに許認可の取得が必要です。
<業種> <申請先>
・飲食業 保健所
・建設業 都道府県
・酒類販売業 税務署
・理・美容業 保健所
・医療法人 保健所等
・人材派遣業 労働局
・リサイクルショップ 警察署
②会社の基本事項の決定
法人成りの際には、まず次のような会社の「基本事項」を決める必要があります。これらは、主に後述する「定款」の記載事項になります。
・会社の形態:最初に説明した「株式会社」か「合同会社」かを、事業内容や資金の状態などを踏まえて検討し、決定します。
・会社名(商号):長く会社の“顔”となることを考えて、検討します。他社との重複(類似商号)にも気をつけましょう。
・事業目的:会社の事業内容です。「適法性」「営利性」「明確性」といった要件を満たす必要があります。定款に記載する際には、将来の事業拡大などを見越して、広めに(複数)記載しておくと、定款変更の手間を省くことができます。
・発起人:会社を設立しようという立案者で、設立の手続きを進めていく人のことです。
・本店所在地:通常は、業務を営む事務所や店舗が「本店」となります。自宅で開業する場合には、そこを本店所在地とすることもできます。ただし、居住用の賃貸物件や分譲マンションなどでは、会社としての登記は不可という契約になっているケースがほとんどです。勝手に登記して、それが発覚した場合には、後の賃貸契約に影響を及ぼすなどの問題が起こる可能性がありますから、注意が必要です。
・設立予定日:会社の設立日は、「法務局に会社設立の登記申請を行った日」です。希望の設立日がある場合には、逆算して準備を進めていく必要があります。
・事業年度:一事業年度は、1年以内の期間である必要があります。1年以内ならば、半年にすることもできます。いつからいつまでを事業年度とするかは(例えば4月から翌年3月=3月決算)、自由に決めることができます。繁忙期が決算期と重ならないようにする、といった工夫も可能です。
・役員構成:個人事業から法人成りにする場合には、事業主がそのまま役員ということになります。
・資本金の額:これも自由に決められます。極論すれば資本金1円でも法人成りは可能なのですが、あまり少額の資本金では、金融機関、取引先などから十分な信頼を得るのが難しくなる可能性があります。一方、資本金が1,000万円以上になると、初年度から消費税が課税されます。1,000万円未満ならば、原則として2年間は免税事業者です。
③会社の印鑑、印鑑証明書の準備
商号が決まったら、会社の印鑑も早めに発注しておきましょう。会社の印鑑には実印、銀行印、角印の3種類があり、それぞれの役割は以下の通りです。
・法人の実印:登記申請や不動産取引など、個人の実印と同じように、重要な場面で使用する会社の代表印です。会社設立の登記申請の際に、同時に法務局に届け出る必要があります。
・銀行印:金融機関の窓口での口座開設のときに届け出ます。金額の大きな振り込みを行うときなどに使用します。
・角印:いわゆる社判で、請求書や見積書などに押印します。日常の認印のような役割を果たします。
通常は上記の3本セットで作製依頼、購入することができます。
また、④の前に、発起人全員分の印鑑証明書を用意しておきましょう。やはり登記申請の際に必要となるためです。
④定款の作成
定款とは、会社の目的や構成、規則などが記載された「会社の憲法」「ルールブック」で、会社設立において最も重要な書類の一つです。定款には、大きく分けて絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類の記載事項があります。
絶対的相対事項とは、目的や会社名、本店の所在地など「これが欠けるとそもそも定款に効力が生まれない」という必須なものです。
相対的記載事項とは、「書いてなくても定款の効力には影響なし。ただし定款に書かないとその事項の効力が生まれない」というものです。株式にかかわることや、取締役や監査役に関することが代表的です。
任意的記載事項は「書いても書かなくても、定款の効力にもその事項の効力にも影響しない」ものです。ただし一度定款に記すと変更の手続きが面倒になるので注意が必要です。営業年度や役員の数など、基本的には変わることがないルールを書いておくといいでしょう。
この定款には、「紙の定款」のほか、パソコンで作成して電子署名を付けた「電子定款」が認められています。定款を一から自分で作成することは不可能ではありませんが、専門知識が必要なため、かなりハードルの高い作業になります。述べたように、「会社の憲法」といわれるような重要な書類ですから、必要に応じて司法書士、行政書士などの専門家のサポートを受けるようにしましょう。
⑤定款の認証
株式会社の場合は、作成した定款について、公証人による定款認証という手続きが必須になります(合同会社は、必要ありません)。「紙の定款」の場合は、作成した定款を印刷して会社の本社所在地を管轄する公証役場に持参し、認証をもらいます。「電子定款」の場合は、PDFファイル化したものを役場にオンライン送信して、認証を受けます。どちらの場合も、基本的に認証を受けた定款を公証役場まで取りに行く必要があります。
なお、紙の定款を認証してもらう場合には、印紙税として4万円を支払う必要があります。電子定款のやり取りならば、印紙は不要なのですが、手続きに必要な機材などを一から準備すると、そのコストが4万円を超えることもあります。手続き自体も簡単ではありませんから、やはり司法書士、行政書士などのプロの手を借りるのがスムーズです。
⑥出資金の払い込み
会社を設立するためには、定款に示された資本金が確かに存在することを証明する必要があります。そのために、発起人個人の口座(この時点では、会社の口座は存在しません)に出資金を振り込み、「払込証明書」を作成します。これは、会社の設立登記の際に必要になります。
出資金を払い込む口座は、発起人がそれまで使用していたものでかまいません。また、発起人が1人の場合には、「預け入れ」でOK。ただし、複数いる場合には、誰がいくら入金したのかを明らかにするために、氏名が記録される「振り込み」にする必要があります。入金が済んだら、払込み内容の控え(通帳の場合:表紙・表紙裏・振り込み内容が記帳されているページをコピー、インターネットバンキングの場合:必要な情報が確認できる箇所をプリントアウト)を準備します。
「払込証明書」は、次の7点を記入して作成します。
- 払込があった金額の総額
- 払込があった株数
- 1株の払込金額
- 日付
- 本店所在地
- 会社名(商号)
- 代表取締役氏名
これと、さきほどの払込み内容の控えを綴じて製本します。
なお、出資金の払込みは、必ず定款認証日よりも後の日付になるようにしなくてはなりません。資本金の振込日が定款認証日よりも前になっていると、登記書類を法務局で受理してもらえない可能性がありますから、注意してください。
⑦登記書類の作成
会社を設立するためには、法務局に登記申請を行い、審査にパスする必要があります。書類に不備がないよう、しっかり準備しましょう。株式会社の登記申請に必要な提出書類には、次のようなものがあります。
■全ての会社が必要な書類
・登記申請書:会社名(商号)や本店所在地、登録免許税の金額や添付書類の一覧などを記載する書類です。
・登録免許税の収入印紙を貼付した台紙:会社の登記には、登録免許税という税金がかかり、その金額は「資本金額の1000分の7」(その税額が15万円未満の場合は15万円)と定められています。登録免許税は収入印紙で納付するため、金額に応じた収入印紙を台紙に貼り付けて提出します。
・登記すべき事項:「商号」「本店」「目的」などを記載します。
・定款
取締役の就任承諾書:役職名を記載し、取締役として就任を承諾した旨を証明する書類です。
・払込証明書
・印鑑(改印)届出書:会社の実印を作成したら「代表社印」として法務局に対して印鑑登録を行います。その手続きに必要な書類です。
■場合によっては必要となる書類
・発起人の決定書:発起人全員の合意のもとに、本店所在地が決定されたことを証明するための書類です。ただし次の2つの条件のうち、1と2両方を満たす場合か、1を満たす場合はこの書類は不要です。
1.定款で本店所在地を番地まで含めて記載している。
2.公告方法に電子公告以外を選択している。
・代表取締役の就任承諾書・監査役の就任承諾書:取締役が1人だけの場合は、不要です。監査役を設置しないのであれば、監査役の就任承諾書も不要となります。
取締役全員の印鑑証明書:取締役会を置かない会社の場合、提出の必要があります。取締役会を置いていれば、代表取締役の印鑑証明書のみの添付となります。
●合同会社設立の場合の必要書類
合同会社を設立する場合には、次の書類の提出が必要です。
- 合同会社設立登記申請書
- 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
- 定款
- 代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証明する書面
- 代書社員の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 払込証明書
- 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
- 委任状(代理人が申請をする場合のみ)
⑧会社設立登記の申請
定款認証を終え、必要な書類の作成も完了したら、法務局に登記申請を行います。登記申請を受け付けてもらった日が、会社の設立日となります。登記申請は、司法書士に依頼する場合には、郵送で行われることも多いのですが、自分で申請するのならば、確実性を期して、法務局まで持参するのがいいでしょう。
なお、法務局に登記申請をしたら、即日、登記事項証明書などを取得できるわけではありません。法務局内でおよそ1週間から10日ほどの審査があることを頭に入れておきましょう。
⑨登記簿謄本、印鑑証明書の取得
審査を経て登記が完了すると、金融機関からの融資や補助金の申請などの際に必要となる「登記事項証明書」(「登記簿謄本」と呼ばれることもあります)、法人の印鑑証明書の取得が可能になります。いずれの書類も、管轄の法務局以外でも、全国どの法務局でも交付してもらえます。
ただし、印鑑証明書については、交付を受ける際に「印鑑カード」が必要となります。管轄の法務局に交付申請書を提出すれば、受け取ることができます。申請は郵送でも可能ですが、窓口に行けば即日発行してもらえます。
⑩法人口座の開設
登記が終了したら、まず行いたいのが、会社名義の銀行口座の開設申し込みです。⑨の書類や定款など必要な書類を揃えて、窓口に行きましょう。
会社の口座を開いても、個人事業主時代の売掛金は、あくまで個人事業主として回収、処理する必要があります。法人成りした後に、個人事業主としての売上を会社口座に入金してしまった場合には、そのままの金額を引き出したり、会社口座から個人口座に振り込んだりして対応します。逆に、会社の売上を個人口座で回収するということも、法人成り直後には発生する可能性があるでしょう。この場合は、個人口座で回収した売掛金を会社口座に振り込んだり、預け入れたりすればOKです。
⑪各機関へ届出
個人事業から法人成りする場合には、法人の開業の届出に合わせて、「個人事業の廃業届出書」も税務署や都道府県、市町村に提出する必要があることに注意しましょう。
提出先 | 提出書類 | 提出する場合 | 提出期限 |
---|---|---|---|
税務署 | 個人事業の廃業届出書 | 必須 | 廃業日から1か月以内 |
青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告の承認を受けている場合 | 廃止年の翌年3月15日まで | |
消費税簡易課税制度選択不適用届出書 消費税課税事業者選択不適用届出書 消費税課税 期間特例選択不適用届出書 |
各種の消費税の特例を選択している場合(いずれか1つを提出すれば、他の不適用届出書も提出した扱いとなる) | 速やかに | |
事業廃止届出書 | 消費税関係の不適用届出書のいずれかを提出しない場合 | 速やかに | |
各自治体 | 事業廃止届 | 必須 | 自治体による |
新設法人を設立するときには、税務署や都道府県、市町村に必要な届を提出します。これは、個人事業主から法人成りした場合でも同様です。
労働基準監督署 | ①法人設立届★ ②青色申告の承認申請書★ ③給与支払事務所等の開設届出書 ④源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書 ⑤棚卸資産の評価方法の届出書 ⑥減価償却資産の償却方法の届出書 ⑦消費税課税事業者選択届出書 |
---|---|
都道府県税務事務所 市町村役場 |
①法人設立届出書★ |
年金事務所 | ①健康保険、厚生年金保険新規適用届★ ②健康保険、厚生年金保険新規適用事業所現況書★ ③健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届 ④健康保険被扶養者(異動)届 |
労働基準監督署 | ①労働保険 保険関係成立届 ②労働保険 概算保険料申告書 |
公共職業安定所 | ①雇用保険適用事業所設置届 ②雇用保険被保険者資格取得届 |
★が付してあるものは必ず提出しなければならない書類です。その他の書類は、例えば従業員を新たに採用した時、など状況に応じて提出が必要になる書類です。どちらも確認しておきましょう。
財産の移行
法人成りというのはつまるところ、個人から法人へと事業内容の移行が行われることですが、事業内容だけではなく、財産も移行可能です。
資産も負債もどちらも移行可能であり、どの資産や負債をどのように引き継ぐかは個人事業主と会社の間で任意に決定することができます。実際の移行方法としては3種類あり、
①売買契約
②現物出資
③賃貸借契約
となっています。
①売買契約
その名の通り、資産や負債について会社と個人事業主の間で売買契約を結ぶことです。分かりやすく手続きもシンプルです。注意するべき点としては、会社側に資産を買い取れるだけのお金が必要であるという点です。
②現物出資
個人事業で有していた財産を出資する方法です。出資は金銭のみならず、車などの有形資産から、知的財産権などの無形資産まで可能です。この方法は資本金に充てられる金額が大きくなるというメリットがあります。ですが、資産の時価をどのように算定するかという点は少々ややこしい場合がありますから、その際はプロに頼むなどで解決しましょう。
また、現物出資をする際には定款に現物出資についていくつか記載事項が必要になるので注意しましょう。
③賃貸借契約
不動産業界に多いもので、個人と会社の間に賃貸借の契約を交わすことです。会社は資金を事前に用意しておく必要がなく、個人は会社から恒常的にお金を得ることができますし、なにより名義変更がなくて済みます。便利ですが、例えば部屋を個人が会社に貸すことにした場合、個人としては毎年家賃収入について確定申告をする必要があります
これら財産の移行については、現物出資の関係もあり、定款に手を付けるころまでには終えていることが好ましいでしょう。
名義変更
最後に名義変更についてです。個人から法人へと事業体が変わるため、多くのものについて名義変更が必要です。名義変更が必要な主なものを以下に挙げます。
・銀行口座(名義変更というより開設)
・事務所や駐車場の賃貸借契約
・車両と車両保険
・電気・ガス・水道・ネット回線などのインフラ系
・リース契約
・借入金
・その他取引先との契約書
法人成りした年の個人確定申告について
個人事業を廃業した年も、確定申告が必要です。事業の所得については、例年と違う点はありません。特別の処理が必要になるのは、法人に個人の資産を譲渡するケースです。資産の売却も現物出資も、個人としては資産を法人に渡して、対価としてお金や株式を受け取ったということになります。その際、利益が出た場合には、その分も申告しなくてはなりません。
また、個人が納めるべき事業税のように、法人成りの後(個人の確定申告終了後)に、個人事業主の必要経費にすべき支出が発生することがありえます。このような場合には、確定申告を訂正する「更正の請求」という手続きを行うことで、税金の還付を受けることができます。
消費税の課税事業者だった場合には、消費税の確定申告も必要です。在庫や固定資産などを法人に譲渡した場合には、その対価にも消費税がかかることに注意しましょう。
よくある質問
手続きは一人でも可能か
自分一人で会社を設立することは、もちろん可能です。ただし、設立登記などには専門知識も必要で、そうした蓄積のない人が全ての手続きをやり遂げるのは、至難の業といっていいでしょう。個人事業主が法人成りを考えるステージにあるということは、売上が増え、仕事もかなり忙しい状況になっているはず。ハードルの高い法人化の手続きに手間や時間をかけていると、本業に支障をきたす可能性もあります。ミスを防ぐ上でも、専門家のサポートを受けることをお勧めします。
法人成りのサポートを頼める専門家には、司法書士、行政書士、税理士などがいます。このうち、登記の代行を依頼できるのは、司法書士だけです。行政書士は書類作成のプロ、税理士は会計、税務のプロという特徴があります。これらの専門家が開業支援のネットワークを築いていることもあります。個人事業時代に顧問税理士がいたら、相談すれば、適切な専門家を紹介してくれるかもしれません。
手続きを完了するまでどれくらいの時間(期間)が必要か
一般的に、設立登記申請まで、株式会社で2週間、合同会社で1週間程度の時間が必要です。合同会社が株式会社よりも短期間で申請まで行けるのは、事前準備の段階で決定すべき事項が少ないことなどによるものです。さきほど説明したように、法務局の審査期間が1週間ほどありますから、法人成りまでには、株式会社3週間、合同会社2週間というのが、目安になるでしょう。
ただし、これは書類のミスなどがなく、スムーズに進んだ場合と考えてください。一方、「登記申請まで数日」を売りにするような事務所もあります。ニーズに応じて、相談してみるのもいいでしょう。
おわりに
法人成りをどのように進めていくべきか理解できたでしょうか。ひとつひとつステップを踏んでやっていくことができれば、それほどハードルの高いものではありません。それぞれのシーンで助けてくれるプロもいるので、ぜひこのマニュアルを参考にしながら法人成りについて考えてみてください。