法人や個人事業主は、取引を帳簿付けする必要があります。業務量が多い場合、帳簿付けや申告を経理担当者などが1人で行うのは難しいため、会計ソフトの導入を検討します。しかし、会計ソフトにはさまざまな種類があり、どの会計ソフトを使えばよいか迷うことも多いでしょう。ここでは、会計ソフトの正しい選び方を解説します。
会計ソフトとは 会計ソフトで何ができる?
会計ソフトの導入を検討する場合には、まず、会計ソフトとはどのようなもので、何ができるかを知っておく必要があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
会計ソフトとはどんなもの?
会計ソフトとは、簡単に言うと、法人や個人事業主が作成しなければならない会計帳簿や財務諸表を補助・作成してくれるソフトウェアのことです。法人や個人事業主は、日々の取引を帳簿付けし、売上帳や総勘定元帳などの会計帳簿を作成・保存しておくことが義務付けられています。また、金融機関などの外部関係者に決算書などの財務諸表を提示することもしばしばあります。
元々は、手書きや手計算で会計帳簿や財務諸表を作成していましたが、経理担当者の負担が大きかったり、計算間違いが起こる可能性がありました。そこで、パソコンの普及とともに登場したのが会計ソフトです。会計ソフトに日々の取引を仕訳入力するだけで帳簿付けの手間が省かれ、入力した仕訳を自動集計し計算するため、計算間違いのない財務諸表が作成できます。
会計ソフトは、個々のパソコンにインストールして使用する「インストール型」が長い間主流でした。しかし、近年になって、個々のパソコンにインストールせずに、インターネット上で動作する「クラウド型」の会計ソフトが登場し、利用者数を増やしています。
会計ソフトでは何ができる?
会計ソフトには、法人向けのものと個人向けのものがあります。また、インストール型とクラウド型の違いもあります。それぞれでどのようなことができるのかを見ていきましょう。
①法人向け会計ソフト
法人向け会計ソフトは、主に税務申告をする前の作業に機能が絞られています。そのため、税務申告書を作成できないことに注意が必要です。主な機能としては、次のようなものがあります。
取引の入力
領収書や通帳などから、日々の取引の入力を行います。
帳簿の作成
入力された仕訳から自動で、会計帳簿を作成します。現金帳や銀行帳、総勘定元帳などの作成が可能です。これらの帳面は印刷・保存ができます。
財務諸表の作成
入力された仕訳から自動で、決算書や毎月の損益計算書、貸借対照表、試算表などを作成することができます。税務申告書に添付する書類の一部が作成できる機能があったり、税務申告ソフトと連動している会計ソフトもあります。
②個人向け会計ソフト
個人向け会計ソフトは、法人向けのものと基本の機能は同じですが、それに加えて確定申告書の作成機能があります。個人向け会計ソフトの機能は、主に次の4つです。
- 取引の入力
- 帳簿の作成
- 財務諸表の作成(損益計算書、貸借対照表、試算表など)
- 確定申告書の作成
確定申告書、収支内訳書(白色申告の場合)、青色申告決算書(青色申告の場合)の作成ができます。
③インストール型とクラウド型の違い
法人向け会計ソフトと個人向け会計ソフトには、それぞれインストール型とクラウド型のものがあります。インストール型とクラウド型の大きな違いは、所有しているパソコンにインストールするか、インターネット上にあるソフトを使うかです。
基本的には、インストール型の方が、複雑な機能が付いてたり、勘定科目の追加変更などのカスタマイズを比較的自由に行うことができます。自社に合った会計データを作りたい人や会計上級者向けのソフトです。対して、クラウド型のソフトは、使いやすさに重点を置いており、シンプルなメニュー構成になっています。自由度は低いですが、仕訳が苦手な人など会計初心者に考慮したソフトになっています。
会計ソフトを選ぶために知っておきたいポイント
会計ソフトにどのようなものがあるかを見てきました。ここからは、実際に会計ソフトを選ぶために知っておきたいポイントについて見ていきましょう。
①機能や対応機種を確認しよう
会計ソフトを選ぶ際にまず確認しなければならないのが、機能と対応機種です。会計ソフトの基本機能は上述した通りですが、それ以外にも分社機能のあるものや、建設業会計など業種ごとの会計ができるものなど、さまざまな機能があります。そこで、自社に合う機能があるかどうかをまず確認します。次に対応機種です。中にはMacに対応していないものや、あるOSのなかでも対応しているバージョンが限られているものも多いので、自社のパソコンに合ったものを選択します。
②使いやすさを知ろう
機能や対応機種の確認ができたら、次は使いやすさです。希望する機能が備わっていたとしても、使いにくい会計ソフトであれば、ストレスになります。そのため、初期設定は簡単か、仕訳の入力は使いやすいかなどを確認します。使える機能に制限はありますが、無料体験ができる会計ソフトも多くあります。購入前に、必ずソフトを利用して使いやすさを確認しましょう。
③サポートの有無は必須
インストール型もクラウド型も、会計ソフトはパソコンを使って利用します。そのため、起動できないなどのエラーやトラブルが起こることもあります。エラーやトラブルが起こった場合に役に立つのが、会計ソフトメーカーのサポートです。サポートがあれば、安心して会計ソフトを使うことができます。サポートには有料のものもあるので、サポートがあるかどうか、あるなら無料か有料か、有料なら予算内に収まるかどうかも会計ソフトを選ぶポイントになります。その他、できればセキュリティ面や費用面なども、購入前に会計ソフトメーカーのホームページなどで調べておくと良いでしょう。
会計ソフト購入から導入までの流れ
では、会計ソフト購入から導入までの流れを見ていきましょう。
①会計ソフトの購入
・インストール型
インストール型の会計ソフトは会計ソフトメーカーのホームページを通じて、または家電量販店などで購入できます。会計ソフトによって異なりますが、インストール型の会計ソフトはCDからインストールするものと、インターネットを通じてダウンロードするものがあります。
・クラウド型
クラウド型の会計ソフトはパソコンにインストールする必要がありません。会計ソフトメーカーのホームページで購入手続きを行えば、すぐに使えるようになります(購入時にIDやパスワードが発行される)。
②導入設定(各種設定)
会計ソフトをパソコンにインストール、またはクラウド型会計ソフトのホームページにログイン後は、導入設定を行います。導入設定(各種設定)とは、例えば、自社データの作成(会社名や会計期間などの基本的な設定)や勘定科目の設定、残高の設定、固定資産の設定などを指します。導入設定(各種設定)の方法はソフトごとに異なります。多くの会計ソフトでは最初に会計ソフトを起動すれば、スムーズに導入設定ができるようにナビなどを用意しているため、ナビに従えば簡単に導入設定が終わります。
③使用開始
導入設定(各種設定)が終われば、いよいよ会計ソフトの使用開始です。領収書や伝票、預金通帳などから日々の取引を入力していきます。
まとめ
毎月の利益の確認や税務申告を行うためにも、法人や個人事業主にとって、会計ソフトの導入は必要です。しかし、自社に合わない会計ソフトを導入してしまうと、最悪使えないこともあります。会計ソフトメーカーのホームページなどで機能や対応機種などを確認し、しっかりと事前準備をしてから会計ソフトを購入しましょう。