大変だった介護の末に、親が他界。さて相続はどうしよう、という話になったとき、相続人の子ども同士が諍いになることは、珍しくありません。「介護した人」と「しなかった人」のいるのが、大きな原因です。こうしたケースでの「争続」を避けるためには、どうしたらいいのか、実際にあった「悲劇」を例に考えてみましょう。
母の余生よりも将来の遺産を優先に
東京都内で、末っ子の独身の長女と同居する高齢の母親がいました。子どもは、他に長男と次男がおり、夫はすでに亡くなっていました。
母親には、軽い認知症による物忘れの症状は出ていましたが、指示を出せば、着替えをはじめとする身の回りのことはできるレベル。長女と訪問看護のヘルパー、それに長男、次男の妻が交代で様子を見に来て、食事を作ったりしていました。この状態であれば恐らく争いにはならなかったでしょう。
運命が狂い出したのは、ある日、母親が家の中で転倒し、足を骨折したのが、きっかけでした。すぐに寝たきりにはならなかったのですが、リハビリでも以前のような歩行状態は戻らず、伝い歩きがせいぜい。長い距離は車椅子が必要で、そのうちに筋力が低下して、家の中でも歩くのが困難になってしまったのです。
その状況を見て、担当のケアマネージャーは、「介護施設への入所を考えてみてはいかがですか?」と提案します。母親の年金は月に7万円、預金は500万円ほどでした。認知症もある高齢者をきちんとみてくれる介護施設に入れるためには、心許ない状態ですが、子どもたちにもお金を出す余裕がありません。ただ、長女と住んでいた自宅の土地には、1億円程度の価値がありましたから、それを売却すれば、資金面では問題なしでした。
家族会議では、長男、長女は、介護施設入所に賛成。ところが、次男は「みんなが暮らした実家だから、何とか残せないか」と主張します。話し合いの結果、長男が母親を引き取り、在宅介護サービスを利用することになりました。その状態で1年半、母親は最後は病院で亡くなりました。
遺産分割がうまくいかず、兄弟喧嘩は法廷に
結局、母親は自宅を残したまま亡くなったわけですが、その相続をめぐって、争いは起こってしまいました。次男が、「家を売却して、1/3ずつ分けよう」と言い出したのです。「家を残したい」と主張したのは、もしかすると、この「遺産目当て」だったのかもしれません。
とはいえ、現実問題、残された自宅は、3人の相続人で分け方を決めなくてはなりません。長男は、「最後は自分の家で介護したのだから、財産は多めにもらいたい」と主張しました。対する次男は、「遺言書がないのだから、法定相続分(※1)の1/3ずつだろう」と譲りません。遺産分割協議は、いつしか過去の怨念も絡んだ兄弟喧嘩の場になってしまいました。これを見た長女も、「こんなことになるのだったら、やっぱりあの時に家を売って、お母さんを介護施設に入れてあげればよかった」と、すっかり感情的に。「あの家には私が住み続けるから、預金を2人で分けて」と宣言して、心を閉ざしてしまったのです。
結局、遺産分割は、相続税の申告期限内(亡くなってから10ヵ月)どころか、家庭裁判所の調停でもまとまらず、裁判で争うことになりました。相続発生から4年が過ぎた今も、決着していません。
被相続人(亡くなった人)の遺言書がない場合に、民法に定められた相続人の遺産の取り分。
自分が亡くなる前に「終活」を
遺産分割協議が申告期限までに終わらない場合、いったん法定相続分で分けたとみなして、相続税を支払わなくてはなりません。その際、一定の要件を満たせば、自宅の評価額を8割削減できる「小規模宅地等の特例」を受けることが可能です。遺産分割が決まった時点でこれを適用し、払い過ぎた税金を取り戻すことは可能ですが、少なくともこの時点では、高額の税の支払いを免れないことになります。
訴訟になれば、それぞれが弁護士を立てることになりますから、その費用もバカにはなりません。争いになった結果、払わなくてもいいお金を支出しなければならなくなりました。
さらに言えば、お金も痛いのですが、今後裁判で決着がついたとしても、兄弟の関係は元には戻らないでしょう。それも、相続の怖さなのです。
ところで、このケースでは、家を売って母親を介護施設に入れるかどうかの家族会議が、大きな分岐点でした。そこで相続についてもきちんと話し合っておけば、訴訟にまで発展することはなかったはずです。
例えば、家を売却するのならば、母親が亡くなった後に残ったお金をどう分けるか。残す場合には、やはりそれをどのように相続するのか。長女が住み続ける場合には、2人の兄に現金を渡して相続する「代償分割」(※2)という方法もあります。
このように、介護と相続はセットで考える必要があります。言い方を変えると、親の介護が必要になったら、相続の相談を始めるべきです。といっても、遺産分割の方法や相続税については、わからないことが多いはず。そういうタイミングで、相続に詳しい税理士に相談してみるのもいいでしょう。
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。
【終の棲家】子供達に資産を残しながら自分も幸せに
~デュオセーヌ国立~
この事例では、母親が寝たきりに近い状態になってしまいましたので難しいと思いますが、今は中高齢者専用の分譲マンションで、自由度の高い生活を楽しむという選択もできます。
今回は、その中から、「デュオセーヌ国立」(東京都国分寺市/国立市、管理・運営=フージャースケアデザイン)をご紹介しましょう。分譲マンションですから、有料老人ホームのように「利用権」ではなく、「所有権」を持つことになります。もちろん、室内での飲食や喫煙、ペットとの同居、家族の宿泊などもOK。売却することもできますから、「高齢者介護施設」でありながら資産価値があるのです。
普通のマンションとの違いは、24時間スタッフが常駐するなど、見守りの体制が整っていること。緊急時の対応が迅速に行えるほか、介護が必要になった場合には、建物内に併設された訪問介護事業所(ヘルパー)、居宅支援事業所(ケアマネージャー)、健康相談室(看護師)を利用することができます。
■同マンションの新田一夫支配人、藤村隆統括部部長にお話を伺いました
開設して1年ですが、現在全228戸のうち157戸にご入居いただいています。年齢的には、90歳代から50歳代の方もいらっしゃいます。若い方には、将来を見越してご購入された方もいれば、親御さんと一緒に住まわれるケースもあります。ちなみに、入居要件は40歳以上となっています。
全体の50%の方はキャッシュでご購入、40%くらいが自宅を売却してご入居、残りの方はリバースモーゲージ(※3)などをご利用、という感じでしょうか。当フージャースグループは、不動産仲介事業も行っていますから、売却のお手伝いもできます。リバースモーゲージに関しては、提携する金融機関のご紹介も可能です。
一般のマンションと違い、コンシュルジュの手厚いサービスを提供できるのが、このマンションの特徴です。12時間人感センサーに反応がなければ駆けつけるといった見守りだけでなく、入居者様に喜んでいただけるような企画の作成、ご提案などにも力を入れているんですよ。
人工温泉の大浴場や、カラオケルーム、麻雀のプレイルーム、ビリヤードラウンジ、マッサージスペースなどの共用施設も充実しています。レストランもあり、入居者以外の方もご予約なしで利用できます。エントランスからは、JR中央線の中央特快停車駅・立川駅などへのシャトルバスも運行されていて、近隣の商業施設や医療機関などへのアクセスも抜群です。
自宅を担保に資金を借入れし、自らの持ち家に継続して住み続け、死亡したときに担保となっていた不動産を処分して借入金を返済する仕組み。
まとめ
「介護」と「相続」はセットにして、親子で話し合うのがベスト。今は、老人ホームの他に、見守り体制が充実したシニア専用分譲マンションも用意されています。選択肢に加えて検討してみてはいかがでしょうか。