出張旅費規程は作成済みですか?設立間もない会社など、本業を軌道に乗せることも重要ですが、実は出張旅費規程を作成することで節税対策になるなどメリットがあります。今回は出張旅費規程を作成することによって得られるメリットや作成する際のポイントを紹介します。
出張旅費規程を作ると節税対策になる?
出張旅費規程とは、出張にかかる交通費、宿泊費、日当などの諸経費の取り扱いをまとめた条項です。出張が多い会社ではこのような規程を作成しておけば、以下のようなメリットを享受することが可能です。
経費精算の手間の削減
会社の規模が大きくなってくると、従業員の出張回数も増えていきますので、その都度経費精算をしていると、その分の手間とコストがかかってしまいます。また、精算する際、個人の飲食代などが混ざって請求されてしまう可能性もあり、処理がややこしくなってしまいます。そういった問題を解決するために、出張旅費規程では固定費を支給しています。
固定費が支給されるということは、安いホテルに泊まった場合など、余ったお金がそのままポケットマネーになりますので、従業員はなるべく出費を抑えようとする心理が働きます。その結果、実費でその都度計算する場合に比べると、正味の経費が削減される可能性もあります。
節税対策
会社側のメリット
出張旅費規程で定められた出張旅費や日当は、個人の所得扱いとはならず経費として計上することが可能になるため、法人税・消費税・住民税の納付額が安くなり、節税効果があります。また、社会保険料の計算においても、出張旅費や日当は算定基礎となる報酬に含まれないので、会社にとっても個人にとっても嬉しい制度です。
従業員側のメリット
もらった出張日当には所得税や住民税が課せられないので、貰った額がそのまま手取りになります。所得税は収入によって税率が変わりますが、最大50%の節税効果があります。
出張旅費規程による節税効果は?
具体的な節税効果について計算してみましょう。
出張経費を年間100万円給与として支払っていたところを、出張旅費規程を定めて出張旅費として100万円支払った場合について計算してみます。
所得税、住民税
所得税と住民税はどちらも所得額によって計算されます。所得税と住民税の合計税率が50%の役員のケースでは、これまで支払っていた50万円分が節税できます。
社会保険料
社会保険料は約28%で、受け取り側(従業員・役員)と会社で折半して支払います。
上記と同じ設定の場合、会社側と個人でそれぞれ14万円分、合計で28万円分の出費を抑えることができます。
合計
合わせると約78万円もの節約がなされることになります。
出張旅費規程の作成ポイントとは
出張旅費規程の作成ポイントは4つあります。
1.出張の定義を定める
出張費の不正受給やあとで問題となることを防ぎます。
例)「出張とは、通常勤務地を起点として目的地までの距離が片道○○キロメートル以上の場所に移動し職務をすることである」など
2.出張の手続き方法を定める
このとき、会社にとって書類業務などの負担が増えることも考慮しましょう。
例)「出張を命じられた者は所定の出張申請書に必要事項を記入し、所属上長に承認を得なくてはならない」、「出張業務終了後一週間以内に所定の旅費精算書をもって旅費の精算を行うものとする」など
3.出張の金額は高額にしすぎない
通常の出張に必要と思われる額を超えた分に関しては課税されるので、それを考慮して日当などを決めましょう。
日当の相場としては、社長が5,000円程度、役員は3,000円程度、一般社員では2,500円程度といわれています。
宿泊費上限の相場としては、社長が15,000円程度、役員は12,000円程度、一般社員では10,000円程度といわれています。
例)「日当は1日につき次に定める金額とする」「社長5,000円、役員3,000円、一般社員2500円」など
4.アクシデントに備える
過去にあったアクシデントなどは再発しないように、例外規程を作り一括して管理しましょう。また、毎度の手間が省けるような工夫をすると良いでしょう。
例)「不慮の事態で出張が延長されたとき、出張再申請書を記入し、再度所属上長の承認を再度受けなくてはいけない」など
社労士資格と税理士資格のダブルライセンスの税理士など、社内規程と節税対策両方に詳しい税理士と相談することで、通常では得られないような解決策を得られるかもしれません。特に、設立間もない会社などは社内環境を整えつつ、効率的に節税対策をすると良いでしょう。
まとめ
高い節税効果を持つ出張旅費規程は、会社にとっても従業員・役員にとってもメリットが多いので、出張の多い会社などではなるべく早く作成することをおすすめします。どういったタイミングで作成するべきか、作成の際どのようなポイントに留意するべきか、実際に得られる節税効果などは専門家に一度相談してみると良いでしょう。