森林環境税という目的税として、長野県森林づくり県民税が県内の法人と個人に課税され、税収が森林づくり事業に利用されています。この税目は2021年度で終了予定ですが、代わりとして森林環境税が全国で導入される予定です。そこで、長野県森林づくり県民税を中心に森林環境税について詳しく見ていきます。
長野県森林づくり県民税とは
長野県森林づくり県民税は2008年度から導入されました。土砂災害や地球温暖化を防止し、木材等の林産物を供給するなどにより、森林によって県民1人あたり年間約140万円の恩恵を受けていると試算されたことが導入の背景に挙げられます。それでは制度の概要を見ていきましょう。
納付金額と設定税額の理由
長野県森林づくり県民税の納付金額は次の通りです。
(1)個人
家屋や事務所などの所在地となる県内の市町村ごとに年額500円です。たとえば、長野市と松本市の2つの市町村に家屋がある場合、納付金額は「年額500円×2ヵ所=1,000円」になります。
(2)法人
資本金等の額(≒資本金+資本準備金)に応じて算出した法人均等割額の5%相当額が納付金額です。具体的な税額は次の通りです。
資本金等の額の区分 | ①長野県森林づくり県民税(年額) ②×5% |
②法人均等割額(年額) |
---|---|---|
1千万円以下 | 1,000円 | 2万円 |
1千万円超 ~ 1億円以下 | 2,500円 | 5万円 |
1億円超 ~ 10億円以下 | 6,500円 | 13万円 |
10億円超 ~ 50億円以下 | 2万7,000円 | 54万円 |
50億円超 | 4万円 | 80万円 |
現在の税額になったのは、2011年度に実施した森林税アンケート調査で、県民の56.0%、企業の63.5%が個人は500円、法人は均等割額の5%が適当と回答したためです。
森林づくり県民税の実施期間
長野県森林づくり県民税は期間限定の税金であり、実施期間は次の通りです。
- 個人:2008年度~2021年度の間
- 法人:2008年4月1日~2022年3月31日までに開始する各事業年度
ただ、2018年度から5年間延長された例が示す通り、実施期間が延びる可能性は十分に考えられます。
森林づくり県民税の納税義務者
納税義務者は次の通りです。
(1)個人
次の条件をすべて満たす個人が納税義務者になります。
- 県内に住所、家屋または事務所がある個人
- 県民税均等割の課税対象となる個人(均等割が非課税の個人は納税義務者から外れます)
県民税均等割が非課税になる個人は次の通りです。
- ①生活保護を受けている個人
- ②前年の合計所得金額が125万円以下(給与収入の場合は204万4,000円未満)の障がい者、未成年者、寡婦、寡夫に該当する個人
- ③区分に応じ、次の所得金額以下の個人
- 扶養家族がいない人:31万5千円
- 扶養家族がいる人:31万5千円× 家族数(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+18万9千円
詳しくは均等割の非課税限度額一覧をご覧ください。
(2)法人
県内に事務所や工場などがある法人が納税義務者になります。
森林づくり県民税の課税方式
個人県民税および法人県民税の均等割に上乗せする超過課税方式が採用されています。住民税の一部という位置づけであるため、森林づくり県民税の納付金額は個人事業主や法人の経費では落とせません。
ただ個人の場合、長野県内の「ふるさと信州寄付金」というふるさと納税により、税収の使い道を「③ 自然・環境保全(森林づくり事業)」に指定して所得控除を受けることが可能です。
実は全国で森林税が導入される予定
長野県森林づくり県民税は2021年度で終了する予定ですが、代わりに2023年度から森林環境税(仮称)が全国で導入される予定です。
森林環境税とは
森林環境税は、パリ協定の枠組みの下における温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止などのため、財源確保の観点から創設されます。また、森林環境税の税収を各地方自治体に交付(配分)する制度の森林環境譲与税は2019年度からすでに導入されています。
森林環境税の課税金額
各個人に対して年額1,000 円が課税されます。長野県森林づくり県民税と違い、法人は課税対象から外れます。
森林環境税の納税義務者
国内に住所のある個人が納税義務者になり、各人の生活が国内を本拠としているかどうかが具体的な基準になると考えられます。たとえば、日本国籍のない外国人が国内を本拠としている場合、課税対象になる可能性が高くなります。
森林環境税の課税方式
市町村が各個人に対して、個人住民税と併せて課税・徴収します。徴収後、都道府県を経由して、森林環境税の全額が「交付税及び譲与税特別会計」として国に直接払い込まれる仕組みです。
国に払い込まれた森林環境税の税収に相当する金額は森林環境譲与税として各地方自治体に交付されます。配分割合は次の通りです。
- 市町村:税収の9割相当額
- 都道府県:税収の1割相当額
長野県以外の森林環境税
長野県以外の道府県で導入されている森林環境税について説明します。
みやぎ環境税
みやぎ環境税は2011年度に導入されました。税額は次の通りです。
- 個人:年額1,200円
- 法人:法人均等割額の5%相当額
実施期間は2020年度までであり、長野県森林づくり県民税と同じように県民税の均等割に上乗せする超過課税方式が採用されています。
水源環境を保全・再生するための個人県民税超過課税~神奈川県~
神奈川県で2007年度から導入された森林環境税です。個人のみが納税義務者であり、法人は課税対象から外れます。税額は次の通りになり、個人県民税の所得割(もうけに対する税金)にも課税されるのが特徴です。
区分 | 税額 |
---|---|
均等割 | 300円 |
所得割 | 所得金額×0.025% |
実施期間は2021年度までであり、法人県民税の均等割に上乗せする超過課税方式が採用されています。
県民緑税~兵庫県~
県民緑税は2006年度から導入され、実施期間は2020年度までになります。税額は次の通りであり、県民税の均等割に上乗せする超過課税方式が採用されています。
- 個人:年額800円
- 法人:法人均等割額の10%相当額
個人の場合、2023年度まで年額500円の東日本大震災の復興特例加算分も追加納付する必要があるため、2020年度までは年額1,300円、2021~2023年度までは年額500円が個人県民税の均等割に上乗せされます。
ながさき森林環境税
ながさき森林環境税は2007年度に導入されました。税額は次の通りです。
- 個人:年額500円
- 法人:法人均等割額の5%相当額
実施期間は2021年度までであり、県民税の均等割に上乗せする超過課税方式が採用されています。
まとめ
長野県森林づくり県民税をはじめとした各都道府県の森林環境税は県民税の均等割を納める個人と法人に課税される税目です。所得金額が少ないために均等割が課税されない個人は、森林環境税も非課税となるのが特徴といえます。また、2023年度から全国で導入される森林環境税も個人に対して年額1,000円課税される予定であり、制度の詳細が明らかになるのを注視したいところです。
▼参考URL
- https://www.pref.nagano.lg.jp/rinsei/sangyo/ringyo/shisaku/kenminzei/shikumi.html
- http://www.soumu.go.jp/main_content/000599517.pdf
- http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/zeimu/kankyouzei.html
- http://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b001/002.html
- https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kurashi-kankyo/zeikin/kenzeisyurui/sinrinkannkyou/
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012.htm
- http://nagano.tax-furusato.jp/