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家計を節約してつくった「へそくり」でも、相続で大問題になることも
2021年1月12日 最終更新日:2021年9月17日
夫がもらう給料をやりくりして、コツコツ自分名義の預金通帳に貯めているという方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。「長年の成果」が1000万円を超えた、などという話を耳にすることもあります。でも、旦那さんが亡くなって相続になったとき、その「蓄え」が大きな問題を引き起こすかもしれません。今回は、税務署が特に目を光らせる「名義預金」のお話。
相続の“落とし穴”、「名義預金」とは?
ある日突然、「以前のご主人の相続の件で……」と税務署から連絡が来たら、誰しも驚くでしょう。間違いなく相続税の申告を行い、納税もした。ところが、税務署が目を付けたのは、予想もしない自分の「へそくり」だった――。
「奥さん、相続のときに、あなた名義の口座に1000万円の預金残高がありましたね。これは、奥さんが稼いだお金ですか?」
「いえ、私はずっと専業主婦でした。これは、私が生活費を切り詰めて、貯めたものです」
「ということは、お金の出どころは旦那さんの給料ですね。それは『名義預金』です。それにも相続税がかかるんですよ」
「え、私が努力して自分の口座に貯めたのに、どうして相続税を払わなければいけないの?」
「名義預金」とは、「形式的には親族などの名義になっているものの、実質的には別の『真の所有者』がいる預金」のことを言います。この場合、口座を開設してせっせとお金を振り込んだのが奥さんであっても、税務署員が言うように預金の原資は夫の給料ですから、「真の所有者」は旦那さんと認定されるわけです。ですから、「へそくり通帳」に貯めたお金は、残念ながら夫の財産。相続税の課税対象です。
今のは相続人(遺産をもらう人)が名義預金をしていたケースですが、逆に被相続人(遺産を与える人)が、これをすることも少なくありません。子や孫の名義の通帳を作り、彼らに黙って預金をするのが、その典型。子や孫の将来を考えて、というのは一般的な感覚としてはわかるのですが、税法上は「アウト」なのです。
今の例にあるように、名義預金がバレる(相続人がその問題に気づく)のは、多くが税務署による税務調査(※)が行われた際。税の申告期限を過ぎているのが普通ですから、足りなかった分に加えて、そこから日割りで計算される「延滞税」がかかるほか、「過少申告加算税」などのペナルティが課せられることもあります。
あえて付け加えておけば、税務署は、被相続人だけでなく相続人の預金口座も調査する権限を持っています。税務調査に入る前にすべての通帳を覗かれている、と考えてください。
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
「名義預金」と疑われないために
名義預金のようなイレギュラーな形ではなく、親族にお金を渡すにはどうするか? 生前贈与という方法があります。この場合も贈与税がかかりますが、年に110万円の基礎控除額までなら無税で渡すことができるのです。
ただし、贈与は「あげる」「もらう」という両者の合意が前提になっています。へそくりは家族に黙ってするのが普通ですから、どう言いつくろっても贈与にはなりません。奥さんにへそくりをさせなくてもいいように、夫婦で話し合い、合意の上で資金を移動させる必要があります。子どもに贈与するときも同様。
重要なのは、毎回、きちんと贈与契約書を作成することです。実は、相続税の税務調査の結果、税務署に否認される件数が最も多いのは、この名義預金です。わかりやすく言うと、「あなたは贈与を主張しているけれど、名義預金ではないですか?」というパターンが、とても多いのです。せっかく110万円ずつ渡してきたのに、相続になったらその努力が水の泡、という事態は避けたいもの。契約書があれば、痛くない腹を探られるようなことは、起こらないはずです。
困ったら、専門家に相談を
では、相続の前に、今お話ししたような名義預金の問題に気づいた場合、どうすればいいのでしょうか? 税務調査の対象にならないよう運を天に任せる、という選択肢を除くと、1つは預金を解約して、「真の所有者」にお金を戻すこと。この資金移動には、税金がかかったりはしません。ただ、相続のときにそのお金が被相続人の手元に残っていれば、当然その分も相続税の課税対象です。
もう1つは、名義預金分を一括でその名義人に贈与すること。この場合、何年にも渡って入金されていたとしても、基礎控除として預金の総額から差し引けるのは、その年の分=110万円だけ。残りの金額に、贈与税がかかることになります。お金の損得だけで検討するとしたら、さきほどの相続税とどちらが重いのか、という比較になるでしょう。
さて、名義預金について基本的なところを述べてきましたが、現実にはそれに該当するかしないのか、判断に迷うケースも少なくありません。「これが名義預金である」という明確な基準があるわけではないのです。相続の場合、片方の当事者がすでに亡くなっているわけですから、さまざまな「立証」が困難なことも多いでしょう。
これも重要なのは、税務調査の段階では、「預金だ」と立証する責任は税務署の側にある、ということです。ペナルティも怖いのですが、反対にそれを恐れるあまり、認めなくてもいいものを名義預金と認めて、高額の税金を払わされるのも問題でしょう。
そこで頼りにしたいのが、その道のプロ=税理士です。その助けを借りることで、損のない申告をしたいもの。ただし、すべての税理士が相続に詳しいわけではありません。税理士紹介会社を活用するなどの方法で、知識と経験を持つ税理士を探しましょう。
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まとめ
相続の当事者たちが誤解しやすく、同時に税務署が最も目を光らせているのが、「名義預金」。その問題点を理解して、親族にお金を渡すには生前贈与を考えましょう。あとからそれが証明できるよう、契約書を交わすことも大事です。