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お金が出ていくのに節税? 将来のために投資しよう

税金はできれば安く抑えたいですよね。実は税金を安くする一番効果的な方法は、適切なところにお金を使うことなのです。今回は節税のための投資について紹介します。

経費の支払時期を見直そう

経費の1年分前払いによる節税

経費を支払う時期を少し見直すだけで、ちょっとした節税になります。まずは経費を1年分前払いすることで節税する方法です。
これは短期前払費用の特例というものを利用したものです。
前払費用というのは勘定科目の一つで、支払った時点においては資産計上するものの、その後役務の提供を受けていくにしたがって費用化されていくものです。具体的な例を挙げて説明をすると、「賃貸契約を結んでいる場合に、来月分の家賃を今月支払う」など、まだ提供を受けていないサービスに対して代金を支払った際に用いることができる勘定科目ということになります。ただし、ただ前払いをすれば当てはまるというものでもなく、以下に挙げる基準を満たしていない限り、前払費用は用いることができません。

1. 一定の契約に従って継続的に等質・等量なサービスの提供を受けるものであること
2. 役務の提供の対価であること
3. 翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
4. 当期中に支払いが済んでいること

以上の条件を満たす前払費用のうち、支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものを「短期前払費用」と呼びます。この短期前払費用について、次の要件をすべて満たすことで、支払った期に費用として計上することができます。これが「短期前払費用の特例」です。
・毎期継続して同じ経理処理をすること
・収益に直接関係する費用、重要性の原則を適用できないような費用でないこと
短期前払費用であり、これら2つの項目を満たしていれば、特例の適用対象となります。例えば保険料や借入金利息などが当てはまります。
ところで二つ目の項目の「重要性の原則」ですが、これは企業会計におけるルールの一つで、会計において重要性の乏しいものについては、厳密な会計処理ではなく、他の簡便な方法で処理することも正規の簿記の原則にしたがった処理として認められている、というものです。短期前払費用であればすべてが当てはまるわけではなく、収益と直接対応させる必要のある費用や、重要性の原則の枠から大きく逸脱するような必要については、特例は適用できません。この点に注意しましょう。

中古資産の減価償却

中古資産を購入することによって節税効果を得られることがあります。中古資産を購入した場合の減価償却費を計算するには、今後の使用期間を見積もって耐用年数とすることが原則ですが、見積もることが困難なものは、簡便法により以下の計算で求めることが可能です。
(1) 法定耐用年数の全部を経過した資産について
耐用年数=その法定耐用年数の20%に相当する年数
(2) 法定耐用年数の一部を経過した資産について
耐用年数=法定耐用年数-経過年数+経過年数の20%に相当する年数
※1年未満は切り捨てる。
例えば法定耐用年数が6年で、経過年数が4年の中古車を購入した場合について計算してみると、

耐用年数=6年-4年+4年×0.2=2.8年→2年(切り捨て)

となり、新車で購入した場合の耐用年数は6年であるのに対して、4年落ちの中古車の耐用年数は2年で計上することが可能です。
また、平成19年度の減価償却制度の抜本改正により、企業の設備投資を促すために定率法の仕組みが改められ、定額法の減価償却率の2.5倍の減価償却率を定率法に適用することから、250%定率法とよばれます。

耐用年数 H19年4月1日以後取得 H19年3月31日以前取得
定額法
償却率
定率法 旧定額法
償却率
旧定率法
償却率
償却率 改訂償却率 保証率
2 0.500 0.500 0.500 0.684
4 0.250 0.625 1.000 0.05274 0.250 0.438
6 0.167 0.417 0.500 0.05776 0.166 0.319
8 0.125 0.313 0.334 0.05111 0.125 0.250

耐用年数が2年の場合、定額法の減価償却率は50%、このとき定率法の減価償却率は125%となりますが、減価償却率は上限が100%と定められています。減価償却率100%とは、購入価格の全額を1年で100%減価償却することを意味しますが、事業に利用された期間が1年未満の場合、事業に利用された月数に相当する金額を減価償却費として経費に計上します。

先の例で、3月決算の法人が耐用年数2年の中古車を500万円で購入し、1月から事業で使用したとすると、1年目の減価償却限度額は3ヶ月分の125万円となってしまい、2年目に残りの375万円が減価償却されます。この例で言うと、中古車を4月から事業で使用していたとすると使用期間は12ヶ月となるので、1年目の減価償却限度額は約500万円になります。

このことから中古資産を購入する場合は、タイミングも重要な節税対策のポイントであることがわかると思います。

社員への利益還元!一石二鳥の節税

決算賞与として臨時の賞与支給

年2回の賞与とは別に、決算賞与を駆使して節税をすることができます。会社が予想以上の利益を上げた場合、その分支払う税金は当然増えますが、そこで従業員に臨時で賞与を与えることで、会社としては賞与の総額を損金処理することができ、結果的に節税になります。これを決算賞与による節税と言います。

また決算賞与を与えることで、従業員のモチベーションアップに繋がります。会社の業績が良くなり賞与が支給されれば、従業員のやる気を引き出して意識を高める効果を発揮してくれます。節税対策としてだけではなく、従業員に利益を還元し、会社全体の雰囲気を良くするという意味でも、決算賞与は一石二鳥の手段であると考えられます。

決算賞与も通常の賞与と同様、税務上費用として管理会計することが可能ですが、会社の資金繰りの都合で決算日までに支給できない場合もあります。そのような場合でも、条件を満たせば未払計上することも可能です。
・会社の従業員全員に、賞与の支給日と金額を通知すること
・決算日1ヶ月以内に賞与を支給すること
・損金として賞与給付を告知した時期に決算処理を行うこと

以上、決算賞与におけるメリットを挙げてきましたが、そのデメリットも踏まえておくことも重要でしょう。長期的な観点を踏まえず、一時的な節税対策として従業員に決算賞与を支給してしまうと、決算賞与は権利であると感じて毎年期待するようになってしまい、決算賞与を支給できないと逆にモチベーションを下げてしまう可能性も考えられます。このような状況は会社の経営にとっては非常に大きなリスクとなってしまうでしょう。

また、節税対策の面でも、税金の金額と従業員への賞与をきちんと計算しないと、支給額が膨れ上がり、節税効果以上に会社のキャッシュを圧迫してしまう結果にも繋がりかねません。そのため、例えば、「目標利益を超えた場合、○○%を従業員に還元する」などの規定を設けておけば、決算賞与を利用するメリットは大きくなるでしょう。

従業員社宅による節税

従業員が今まで給料の中から自分で支払っていた家賃を、会社が支払うことで節税しようという方法があります。
家賃分を上乗せで従業員に支払えば、その分が経費として計上されるのは当然のことですが、その逆もメリットがあります。つまり、給料から家賃分を天引きし、代わりに会社が家賃を支払うのです。従業員からしたら家賃分の給料が減るわけですが、その分所得税が安くなるため、結果的には手元に残るお金は多くなります。ちなみに、会社は権利金や礼金も支払うことになりますが、敷引きや礼金といった、入居者が退去するときにも返ってこないお金については60ヶ月で償却できます。

以上を見たら分かるように、この方法は会社にとっても、従業員にとってもダブルで節税できる、ということになりますが、この節税方法を実践するためには、以下の3つの条件を満たしていなければなりません。

・家賃の全額を会社が負担せず、一部は従業員に負担してもらわなければいけないということ
・社宅は法人契約にしなければいけないということ
・振込は会社名義で行うこと

一つ目については、非常に複雑な計算を行う必要があるため、具体的な金額について今回は触れませんが、通常の家賃の半分を従業員が負担し、残りの半分を会社が負担する、と考えておけばよいでしょう。
次に、形式上、法人が社宅を借りて、それを従業員に貸し付けていることにしなければならないということです。会社契約になっていない賃貸マンションに住む従業員の家賃を補助するとした場合、それは福利厚生と同じ意味合いになってしまいます。これでは家賃補助の額が給料とみなされてしまうため、所得税や住民税の課税対象となってしまいます。
三つ目については当然、家賃の振込は会社名義で行う必要があります。

以上の3点をクリアすれば、従業員と会社両方が得する節税ができますので、検討してみると良いでしょう。

会社のための投資で節税

人材への投資

平成24年に始まった第二次安倍政権より、デフレからの脱却が重要な課題となっています。会社は新たな人材を雇い入れたり、社員の人数を増加させたりすることで、節税のメリットが受けられるようになっています。これが、所得拡大促進税制と雇用促進税制といわれるもので、どちらかを選択することが可能です。

所得拡大促進税制は、以下の条件を満たせば、引き上げた金額の10%(中小企業などは20%)までを法人税額から控除することができます。
① 雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上になっていること
② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前事業年度)以上であること
③ 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額(前事業年度)を超えること

一方、会社の新たな人材を雇い入れることで、節税につながるのが雇用促進税制です。
この制度は大まかにいうと、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの期間に始まる事業年度にのみ有効なもので、事業年度中に雇用者(雇用保険一般被保険者)数を5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上増加させるなど、無期雇用かつフルタイム雇用者の増加数一人に対して40万円の控除が受けられる、というものです。

多くの人材を呼び込むことで、会社に新たな可能性が生まれるかもしれませんし、それによって節税にもなりますから、よく制度を理解した上で活用してみてください。

社内規程の整備

旅費や交通費、交際費などの規定を明確化するべきだ、ということです。どこからどこまでがどのような費用項目でカウントされるのかをはっきりさせることで、会社の費用負担の範囲を明確化でき、経理処理もスムーズに行えます。社内規定がはっきりしていれば、あいまいに処理していた部分がなくなり、節税につながることも考えられます。一度作ってしまえば後が楽になりますので、ぜひ腰を据えて社内規定の整備に取り組んでみましょう。

また、特に重要であると考えられるのが、有給休暇など、会社で働く上で必要な事柄をまとめた就業規則の規定です。この中には、減給や懲戒解雇などの懲戒処分に関する事柄も含まれており、従業員に何か不始末があったとき、このような就業規則がきちんとしていないまま解雇処分をしてしまうと、不当解雇として訴えられる可能性も出てきてしまいます。

社内規定を整備するためには社会保険労務士などと相談して、経費が発生し、節税効果にもなるので、会社のリスクヘッジと合わせて社内規定を作ることをおすすめします。

別会社の設立

最低資本金制度が撤廃された現在、会社を新しく設立することのハードルが大幅に下がりました。別会社を設立することで、節税効果に加えてリスクの分散にもなります。

まず一つ目に、別会社を設立し、元の会社からその会社に部分的に売り上げを振り分けることによって、消費税が節税できるという点が挙げられます。
例えば、一部の事業を新会社に移し、課税売上高1,000万円以下の範囲で事業活動を行えば、消費税の納税義務は発生しません。これを行うと結果的に、元の会社も含めたグループ全体で年間最大約80万円の消費税を節約することができます。

さらに、別会社の設立により軽減税率が適用されるようになります。資本金1億円以下の中小企業では、年間800万円までの所得について、法人税・事業税の税率が軽減されます。他にも、同じく資本金1億円以下の中小企業について
・交際費が年間800万円までであれば全額を経費にできる
・30万円未満の消耗品が年間300 万円まで一括で経費にできる
というメリットを享受できます。

また、それ以外の節税ポイントは、
・資本金1,000 万円未満の会社は、設立第1 期と第2 期の消費税が免税になる
・新会社に役員や従業員を転籍させれば、元の会社で退職金を計上できる
ということが挙げられます。

このように、別会社の設立は節税には有効な手立てと言えるでしょう。しかし、別会社を設立するとなると、事務作業が増えたり、法人設立のための費用がかさんだりもします。メリットだけでなくデメリットもよく理解した上でアクションを起こしましょう。

まとめ

将来のことを考えて投資することで、結果的に節税につながるということがお分かりいただけましたか?闇雲に溜め込んだり浪費したりするのではなく、正しい時期に正しい遣い道で、積極的に会社の将来に投資をしていきましょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
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