年末が近づくにあたって、「節税をきちんとしておけば…」と考えている方もいるのではないでしょうか? そこで、ここではフリーランスの方向けに年末でも出来る節税方法を紹介します!
課税・節税の仕組み
フリーランスが気を付けるべき税金
フリーランスとして働き始め、会社勤めではなくなった瞬間から、事業に関する税金も自分で対処していかなくてはなりません。大多数のフリーランスの方に関わる税金には、以下のものがあります。また、これらに付随して、国民年金の支払いも忘れてはいけません。
- 所得税
所得税は、事業の売上から諸々の経費と各種控除を引いた儲けの部分、すなわち所得にかかる税金です。所得金額が大きくなるにつれ課税率が上昇していく累進課税方式を採っており、7段階で最大45%の税率となります。 - 住民税
住民税の額は、均等割と所得割の合算で求められます。前者は一律の固定額、後者は課税対象となる所得額に一律の固定利率を掛けた額になります。厳密に言えば、これらは更に市町村民税と都道府県民税に分けられており、それぞれ一定割合が決められています。 - 国民健康保険税
会社員であれば健康保険料は会社が社員分もまとめて払ってくれますが、フリーランスとして独立すれば、新たに国民保険に加入することになります。こちらはその際に生じる税金で、額は地域や扶養家族の有無等により変化します。 - 個人事業税
個人事業税は、個人が営む事業が70種の法定業種に当てはまり、かつ、所得金額が290万円を超えた場合に納めることになります。所得のうち290万円を超えた分に掛けられる税率は、業種の分類ごとに3~5%の間で変動します。 - 消費税
原則として、課税売上が1,000万円を超えた年の2年後に消費税の納税義務が生じます。したがって、設立2年目までは免除される場合がほとんどですが、特定の条件を満たすと初年度から支払うことになります。
節税の基本的方法
上記のように、各税の仕組みは様々ですが、免除や軽減の条件をうまく利用したり、多くの税に関係する所得金額を低減させたりすることで、納税額を抑えることができます。基本的な方針としては、課税対象額、控除額、共済額を調整することになります。以下、順に見ていきましょう。
経費計上で節税!
多くの税の課税対象額となる所得金額は、上述のように売上から経費を差し引いて求められますので、経費の額が大きいほど納める税金が少なくなります。特に所得税はフリーランスの方にとって総課税額の大きな部分を占めるので、大幅に削減できればそれだけ効果もあります。一般的に経費は事業に要する諸費用を指しますが、フリーランスの場合は線引きが曖昧になりやすく、例えば自宅で仕事をするような場合、家賃や光熱費などをどのような割合で生活費と事業の経費に分けるのかといった判断は、最終的には事業主本人に委ねられます。
経費計上が可能な支出
経費に計上できるか考えるべき項目として、以下が挙げられます。ただし、あまり欲張りすぎて実態と乖離してしまうと、確定申告時に承認されない可能性がありますので注意しましょう。
- 家賃、水道代、電気代等
自宅が事業所と兼用である場合、敷地のうち事業に供している割合を家賃等に掛けることで経費を割り出すことができます。この処理を家事按分と言い、同様に水道代や電気代、また、不動産取得税や印紙税、固定資産税等の税金も、事業に用いた分を経費にできます。これらは地代家賃、水道光熱費、租税公課として計上することが一般的です。 - 食事代
通常の食費は単に生活費として扱われますが、事業上で必要な出費であったり接待の形をとっていたりする場合は、交際費として経費に計上することができます。 - 電話代やPC等の備品代
それらが事業に関するものである限り、通信費や消耗品費として計上することが可能です。なお、10万円以上の備品の場合は減価償却費として扱われますが、変わらず経費に計上できます。 - 業務に関する新聞代、書籍代等
勘定科目としては新聞図書費に当たります。これらは情報収集や業務遂行のための必要な費用とみなされます。 - 家族への給与
こちらは潜在的な経費を新たに計上するというよりは、ある種の節税術とも言うべきものです。配偶者等の家族のメンバーに事業専従者として事業への協力を仰ぎ、給与を払っているという形にすれば、実質的な家計に変化はありませんが、家族への給与は経費にできますので課税対象の所得金額が抑えられます。ただし、白色申告と青色申告とでは条件が異なる点に注意が必要です。
計上漏れを防止する
経費にできる要素を計上し損ねては勿体ないので、なるべく漏れがないようにすることが重要です。まずは、どんな些細な出費でも徹底してレシートや領収書をもらっておきます。その上で、これらを全てまとめて整理しておき、分散してなくしてしまうといった事態を避けます。そして、計上後も二重、三重に確認を行う方が安全です。独力では心配な場合は、会計ソフトや税理士の手を借りるのも一手です。
控除を見落としてない?
経費による削減もさることながら、控除による節税効果も侮れません。フリーランスの方に関係してくる控除の種類には、おおまかには以下があります。
- 基礎控除
所得税の基本的構造として、所得のあるすべての人が適用されるのが基礎控除です。合計所得金額から自動的に差し引かれる類のもので、控除額は現行制度では一律38万円ですが、2020年より所得の高い人ほど控除額が減る仕組みとなります。 - 配偶者控除、配偶者特別控除
納税者が主として所得の面で配偶者を支えているとみなせる場合に利用でき、控除額は最大38万円(条件を満たせば48万円)です。一定の条件を満たした上で、配偶者の合計所得金額が年間38万円以下ならば配偶者控除が、38万円超123万円以下ならば配偶者特別控除が適用されます。ただし、納税者が配偶者に事業専従者として給与を支払う場合は、その額にかかわらずどちらの控除も受けられません。 - 扶養控除
納税者が主として所得の面で家族を養っているとみなせる場合に利用できます。一定の条件を満たせば、扶養家族の年齢等に応じて38万~63万円の控除を受けることができます。 - 青色申告特別控除
こちらは個人事業主が自力で帳簿を管理することへの援助という意味を持ち、現行では控除額が10万円のタイプと65万円のタイプの2種類があります。前者は簡便な簿記(単式簿記)での記帳の場合、後者はより高度な簿記(複式簿記)での記帳の場合に適用されます。 - 寄附金控除
国や地方公共団体、特定公益増進法人等に対する「特定寄付金」を支出した際に受けられる控除です。近年話題のふるさと納税も、納税の名を冠してはいますが税務上は寄付として扱われますので、所得控除の対象になります。ただし、総所得金額等の40%を超えることはできません。
以上の他にも、医療費控除、雑損控除、障害者控除、社会保険料控除等、様々な制度があり、それぞれに適用条件があります。
共済を利用しよう
共済とは、組合員同士で掛金を出し合うことで、有事の際に借り入れたり、積み立てた金額を退職金代わりに受け取ったりできるという相互扶助の仕組みです。多くの場合、共済金の掛金は一般的な保険よりも低く設定されているため気軽に始められる上、その全額が経費に計上、または所得控除されますので、なにかと不安の多いフリーランスの方にとって心強い味方となります。以下では、国の機関である中小機構が運営する共済を紹介します。
経営セーフティ共済
こちらは、取引先会社の倒産や破綻等に連鎖して事業が立ち行かなくなることを防ぐための共済です。掛金は月額5,000円~20万円と幅広く、全額を必要経費とすることができます。有事には8,000万円を限度に無利子・無担保・無保証人で借り入れができます。掛金の減額や解約手当金の受け取りも可能です。
小規模企業共済
こちらは名称に小規模企業とありますが、個人事業主も参加可能です。事業をやめた後の生活資金を積み立てておくことができ、掛金は月額1,000円~7万円です。この全額が所得控除となり、また長期間積み立てるほど貰える合計額も上昇していきます。こちらも条件を満たせば途中での掛金減額、一定期間の支払い停止、限度額までの低金利での借り入れが可能です。
自分に合った節税とは
経費、控除、共済の活用のそれぞれにメリットとデメリットがあります。もし現在の売上が小さく自由に扱える資金が乏しいならば、経費や共済を考えるよりも、控除を狙った方が確実です。他方で、所得が十分に大きければ、経費や共済により積極的に所得税を低く抑えていくことが重要になります。また、もし売上の上下が激しければ、共済の掛金をいちいち変えるよりは経費で調整した方が良いと考えられ、逆に所得が常に安定しているならば、共済で固定的に節税を行った方が本業により集中できるでしょう。自分の働き方に合わせた節税方法を採用することが重要です。
まとめ
フリーランスでも特に事業が小さく資金繰りも安定しない内は、節税と資金の確保が優先事項となります。また、既に事業が初期段階でなくとも、経営や生活の状況が変われば利用できる制度も異なってきますので、常に自らに合った節税方法を探していくことが重要です。