中小企業もメリットたくさん? 税制上の優遇措置まとめ | MONEYIZM
 

中小企業もメリットたくさん?
税制上の優遇措置まとめ

近年、中小企業で働く従業者数は年々低下しています。中小企業と大企業の違いは資本金と従業者数の差だけでしかなく、売上額や給料とは関係がありません。
一方で、日本の企業の大半を占めるのが中小企業であり、中小企業にはいくつかの税制上の優遇措置があることを知っていますか?今回はこうした優遇措置について、解説していきます。

中小企業とは?

ある企業が中小企業と分類される条件は、中小企業基本法によって定められています。その基準は資本金と従業員数によって定められており、業種によって以下のようになっています。

中小企業
業種 資本金 従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下
小売業 50人以下

中小企業の数は個人と法人を合わせて469万あり、日本の企業全体の99.7%を占めます。また、中小企業で働く従業員数は全体の約70%で、日本全体が中小企業によって支えられていることがよくわかります。
しかし、中小企業で働く人の数は年々減少傾向にあり、経営者の高齢化なども問題になり始めています。こうした傾向から中小企業が衰退してしまうことは、日本の産業全体の衰退にもつながってしまうため、中小企業向けの税制上の優遇措置が現在強化されています。

そのような優遇税制を上手に利用することで、資本金の少ない中小企業でも財政基盤を強化、設備投資や人材投資に割ける資金を増やすことができます。では一体、どのような優遇措置を受けられるのか、上手に優遇措置を利用するポイントと合わせて解説していきます。

法人税率の軽減

法人税率の基本税率は、現在に至るまで徐々に引き下げられ23.4%となりました。一方で、法人が中小法人としての要件を満たしていれば、平成24年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業区分で、各事業年度分の年800万円以下の所得金額に課せられる法人税率が15%にまで軽減されます。なお、所得の800万円超過分については、他の法人と同様に基本税率である23.4%が適用されることとなります。
中小法人とは中小企業の定義とは異なり、資本金又は出資金が1億円以下の法人、もしくは資本又は出資を有しない法人として定義されています。しかし、資本金又は出資金が1億円以下の法人であっても、中小法人に含まれない以下のような例外もあります。

・株主が存在せず、顧客と社員が一致する「相互会社」
・大法人(資本金又は出資金の額が5億円以上の法人)や相互会社等の、「100%子会社」
・100%の完全支配関係にある複数の大法人により、発行済株式を全て保有されている法人
・資産運用を目的とした「投資法人」
・債券等の資産を切り離す目的で設立された「特定目的会社」
・法人や個人に信託を受託される「受託法人」

これらの例外は、大法人に援助されて財政的に比較的余裕のある法人が、税制上の優遇制度を受けてしまうことを避けるために定められています。

例として、どの程度の軽減効果があるか計算してみます。ある中小法人Aが平成28年4月1日から平成29年3月31日の間で1,000万円の所得を得たとすると、800万円までは税率が15%に軽減されて、

 800万円×0.15=120万円

残りの200万円は税率が23.4%で、

 200万円×0.234=46万8千円

合計で166万8千円の法人税を支払うこととなります。一方で、所得全てに23.4%の法人税率がかかる大法人では、同期間の1,000万円の所得に対して234万円の法人税が課されます。したがってこの場合では、中小法人は大法人に比べて
234万円-166万8千円=67万2千円分の法人税が減額されていることになります。

欠損金の繰越控除と繰戻還付

中小法人では、ある事業年度において税務上の赤字が発生した場合、以下に挙げる二つのうちどちらかの方法で、支払う法人税額を減らしたり、支払った法人税額を繰戻してもらうことで相殺したりすることができます。

欠損金の繰越控除

各事業年度において利益を費用が上回った場合、その差を欠損金といいます。青色申告書を提出している中小法人に税務上の赤字である欠損金が生じてしまった場合、欠損金額分を翌事業年以後の9事業年において繰り越して、課税所得から控除することができます。つまり、欠損金の分だけ所得をなかったことにして、法人税額を減らすことができるのです。
なお欠損金の繰越期間は、平成30年度以降は9年間から10年間と延長されます。

例えばある中小法人Aがある事業年に2,500万円の欠損金を出してしまい、翌事業年から7年間毎年400万円の所得があったとします。
始めの6年間は、欠損金から所得を差し引いても欠損金がまだ残っているため、法人税の課税対象となる所得額は0円とみなされます。そして、最後の一年では、所得400万円のうち残った欠損金の100万円分が控除されるので、300万円分の所得のみ課税対象として、法人税の計算が行われます。

欠損金の繰戻還付

欠損金を翌年以後に繰り越して控除する方法以外にも、前事業年度の所得に繰り戻して納付済みの法人税から還付してもらうという方法もあります。以下の要件を満たした中小法人に対して、この繰戻還付が適用されます。
①欠損金が出た事業年度と前年度に連続して、青色申告書として確定申告をしていること
②原則として、欠損金が生じた事業年度における青色申告書を提出期限(年度終了日翌日から2か月以内)までに提出していること
③還付請求書を②の確定申告書に添付して提出していること

例えば、以上の要件を満たす中小企業Bが前年度に500万円の所得を得て、今年度に200万円の欠損金が生じてしまっていたとします。前年度の所得に対して課された法人税額は、

 500万円×15%=75万円

そして今年度還付される額は
(前年度の法人税額)×(今年度の欠損金額)÷(前年度の所得額)
と計算されるため

 75万円×200万円÷500万円=30万円

が還付されると計算されます。

交際費課税の特例

取引先への接待や贈答などに必要な経費は一定の範囲内で交際費としてみなされ、交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされています。しかし、中小法人においては交際費への課税を免れる場合があり、交際費とみなされる対象も複雑です。
例えば、接待等の飲食に対してかかる費用は一人当たり5,000円以下の範囲において交際費等から除外し損金として算入することができます。しかしこの場合、飲食をした年月日や相手先の氏名、名称、関係などを記した書類を保存している必要があります。

従来、中小法人では交際費を800万円までに限り損金として算入できる、定額控除が可能でした。交際費を損金に含めることのメリットは、損金が増えることで所得額が減り法人税の負担を軽減することができる点です。

ここに、平成26年度の税制改正において「交際費のうち接待飲食費の50%を損金に算入できる」という特例が加わりました。そのことによって中小法人は
・交際費を定額控除限度額である800万円まで損金に参入する
・交際費のうち接待飲食費として認められる額の50%を損金に算入する
以上の二つの特例のうち、どちらかを選んで利用することができるようになりました。

飲食費が1,600万円よりも多い場合、二つの特例のうち二番目に示した特例を利用した方が、高い節税効果を得ることができます。このように、中小企業の優遇措置を受ける際には自社の会計状況を把握して正しい判断をした方が、お得になるケースも存在します。交際費の特例については、費用が交際費に含まれるかどうかの判断と、どちらの特例を利用するかの判断の両方を適切に行わなくてはなりません。

☆ヒント
以上に説明してきたような便利な優遇措置がありながらも、税務に詳しくないという理由で利用していなければ意味がありません。
そのような方は、税理士に自社が適用できる優遇措置について相談されてみてはいかがでしょうか。例えば税理士紹介サービスを行っている株式会社ビスカスでは、税制や節税対策に精通した税理士を多数紹介しております。

まとめ

中小企業と大企業との違いは、資本金の多寡と従業員数の差でしかありません。売上額や給料の面では区別されないため、中小企業の中には大企業と同等以上の利益を出しているところもあります。
一方で、中小法人であるという要件を満たせば、税制上の様々な優遇措置が受けられます。こうした優遇措置を上手に利用して、節税対策を考えてみてはいかがでしょうか。

山本麻衣
東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。
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