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親族に財産を譲るときに気になる贈与税と相続税 どう違い、どちらが「得」なのか?~2024年「贈与税改正」の影響も解説~

親族に財産を譲るときに気になる贈与税と相続税 どう違い、どちらが「得」なのか?~2024年「贈与税改正」の影響も解説~

2020年1月22日

親から子などの親族に、お金や不動産などの財産を「渡す」には、生前贈与と相続という方法があります。ただし、どちらの場合にも、一定の金額を超えると税金がかかってきます。せっせと贈与して、相続税を減らすのがいいのか、それとも贈与税よりも「税率の低い」相続税で納めるべきなのか?贈与税と相続税に関する「意外な盲点」、2024年から始まった贈与税の新たな課税方式が及ぼす影響も含めて、解説します。

どちらにも「基礎控除」がある

まず、それぞれの課税の仕組み、税率をみておきましょう。

贈与税の税率

贈与税には、何年にもわたって財産を渡していく場合の「暦年贈与」(「暦年課税」による贈与)と、いっぺんに2500万円まで無税で渡し、亡くなったときに相続税として納付する「相続時精算課税」がありますが、ここでは暦年課税について説明します。

「1年に110万円までの贈与には、税金がかからない」というのをご存知の方は多いでしょう。この110万円を贈与税の「基礎控除額」と言います。基礎控除を超えた贈与を行う場合には、超えた分について贈与税がかかってくるのですが、その税率は、兄弟間、夫婦間、未成年の子への贈与などの「一般贈与財産用」と、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の子や孫に贈与する「特例贈与財産用」で異なり、以下の表のようになります。

  【一般贈与財産用】
基礎控除後の課税価格 200万円 以下 300万円 以下 400万円 以下 600万円 以下 1,000万円 以下 1,500万円 以下 3,000万円 以下 3,000万円 超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円
【特例贈与財産用】
基礎控除後の課税価格 200万円 以下 400万円 以下 600万円 以下 1,000万円 以下 1,500万円 以下 3,000万円 以下 4,500万円 以下 4,500万円 超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

相続税の税率

一方の相続税にも、「この金額までなら無税」という基礎控除額があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人の場合、遺産が4800万円までであれば、相続税はかかりません。

 

それを超えた場合の相続税の金額は、次の表を基に計算します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
引用:国税庁
 

実際に支払う税金は、それぞれの相続人が実際に相続した財産を単純に上の表に当てはめた金額ではないのですが、ここでは説明を省きます。詳しくは、こちらを参照してください。

見かけの税率は、相続税<贈与税

それでは、贈与税と相続税のどちらが、税負担は少なくてすむのでしょうか? 単純比較すると、基礎控除を越えた分にかかる税率は、「受け取る」金額が1000万円以下だと、相続税が10%に対して、贈与税(20歳以上の子や孫の場合、600万円超)は30%。3000万円以下になると、相続税は(1000万円超)15%、贈与税(同、1500万円超)は45%になります。同じ「価格帯」で比較すると、相続税のほうが有利なのは、一目瞭然でしょう。

そもそも、さきほど説明したように、相続では、相続人が3人ならば4800万円まで非課税で財産を譲ることができます。それに対して、生前贈与を行う場合には、無税で1年間に渡せるのは3人合わせて330万円まで。10年かけても3300万円です。そうしたことも考え合わせると、総論的には、「贈与税は相続税よりも高い」と言えるでしょう。

ただし、だから「贈与は基礎控除の範囲にしておいて、残りの財産は相続で渡せばいい」とは単純に言えないのが、難しいところ。例えば、基礎控除額の範囲内の贈与であっても、当然のことながら時間をかけて渡していくほど、非課税で移転できる財産は増えていきます。実際には、親の持つ財産の規模や、相続までの時間などによって、「贈与か相続か」の最適な答えは違ってくる、と考えるべきでしょう。

贈与税のほうが「安い」こともある

特に財産が大きな場合には、「贈与は年に110万円まで」という「常識」にとらわれていると、みすみす多額の税金を支払うことになるかもしれません。贈与税を払ってでも、相続財産を減らしておく方が有利になるケースもあるからです。

相続税の基礎控除後の相続財産が、3億円あったとします。そのままであれば、45%の相続税が、そこに課税されることになります。では、そのうち500万円を成人の子どもに贈与したら、どうなるか? 相続財産が500万円減るため、相続税は、「500万円×45%=225万円」の減額です。遺産がこの規模になると、相続税率も50%に近づく水準になるため、財産の減額による節税効果もより高くなるわけです。

他方、生前贈与を受けた子どもの支払う贈与税は、どうでしょう? 前の表に当てはめれば、「(500万円-110万円)×20%-30万円=48万円」となるのがわかります。すなわち、「225万円(=相続税の節税分)-48万円(発生した贈与税)=177万円」も、支払う相続税を減らすことができるのです。「とにかく贈与税は高い」という固定観念を取り払う必要のあることが、分かっていただけたでしょうか。

ただし、最初にも述べたように、この方法が有効なのは、遺産額がある程度大きな(かかってくる相続税率が高い)場合になります。やはり、すべての家族に通用する法則ではありませんから、誤解なきよう。

2024年からの「贈与税改正」の影響は?

ところで、2024年1月から、贈与税の課税の仕組みが改められています(すでに説明した税率などには、変更はありません)。ひとことで言えば、述べてきた暦年贈与は「実質増税」となり、反対に今まであまりポピュラーではなかった相続時精算課税による贈与のメリットが広がりました。それぞれの変更点をみておきましょう。

暦年贈与の「持ち戻し期間」が見直された

暦年贈与には、年110万円までという基礎控除額があり、この範囲内であれば贈与税非課税で、財産を渡していくことができます。ただし、この暦年贈与には、期間の制限が設けられていて、贈与者が亡くなった日から遡る一定期間に譲られた財産に関しては、贈与とはならず、相続財産に加算しなくてはなりません。

これを「生前贈与加算」=相続財産への「持ち戻し」といいます。なぜこのような決まりがあるのかというと、相続税負担を軽くするために、亡くなる直前に“駆け込み贈与”が行われるのを防止するためです。

持ち戻しになった財産には、当然贈与税の基礎控除は認められません。仮にこの期間に贈与税ゼロのつもりで110万円ずつ贈与していたとしても、その金額は被相続人の財産に戻され、相続税の課税対象になる可能性があるということです。

この持ち戻し期間が、法改正によって、それまでの贈与者が亡くなった日から過去3年から7年に延長されました。対象になるのは24年1月1日以降に行われた暦年贈与で、生前贈与加算の期間が順次延長されていき、31年1月1日以降に発生する相続で、MAXの7年となります。

子どもなどに贈与したつもりの財産が、自分の相続財産に戻されてしまう期間が4年長くなる=非課税で渡せる期間が4年も短くなるというのは、暦年贈与をしようという人にとっては痛手です。暦年贈与が「実質増税」というのは、そういう意味なのです。

相続時精算課税に基礎控除が新設された

一方、もう1つの相続時精算課税では、2500万円(特別控除額)までならば、贈与税非課税で財産を渡すことができます。贈与額が2500万円を超えた場合には、その超えた金額に一律20%の贈与税が課税されます。

その後、財産を譲った人が亡くなり相続が発生したときに、この制度を使って贈与された総額を相続財産に加算して、相続税が計算されます(※)。猶予されていた贈与税を相続税で“後払い”するというイメージです。

※特別控除額を超えたために課税されていた贈与税があれば、その分は控除される。

今回の法改正により、この相続時精算課税に、それまではなかった暦年贈与と同様の「年間110万円まで」という基礎控除額が創設されました。2500万円という特別控除額とは別枠のうえ、暦年贈与のような相続財産への生前贈与加算は行われないのがポイントです。相続開始までの間、年間110万円までは、贈与税も相続税も非課税で財産を渡していくことができるようになったわけです。

「相続時精算課税による贈与」が有力な選択肢に?

今回の法改正の中身をみると、国の狙いが暦年課税(贈与税)から相続時精算課税(相続税の課税)への誘導にあることが推察できます。さらにいえば、国は「相続税と贈与税の一体化」=いつ財産を渡しても税負担に差がない、という欧米方式を志向していて、今後もそれに沿った税制改正が行われる可能性もあります。

とはいえ、今回、相続時精算課税に持ち戻し期間のない基礎控除額が設けられたことは、注目に値します。この制度を使って長期に渡って税負担のない(少ない)生前贈与を行い、相続財産をできるだけ減らして相続税を節税する、という選択肢が増えました。

ただし、繰り返しになりますが、親族などに財産を譲る際に、どのような方法が有利なのかは、財産の状況や贈与可能な期間などによって、違ってきます。家族ごとにオーダーメイドで考えないと、正確な答えは導けないものだと考えてください。特に多額の財産をお持ちの方は、一度、相続に関する知識と実績のある税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

まとめ

「贈与すべきか、相続で大丈夫か」は、ケースバイケース。単純比較では、相続税に比べて税率の高い贈与税ですが、場合によっては、それを払ってでも相続財産を減らすメリットが生まれます。気になる方は、早めに専門の税理士に相談を。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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