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「空き家」だけではない?“山”をめぐる相続が大問題に!
2021年2月16日
相続もされずに放置される「空き家」が、地方だけでなく都市部においても問題視されるようになりました。同じような問題が、山林においても深刻化しているのを、ご存知でしょうか? 空き家と違って人目に触れないから、と「先祖代々の山」をそのままにしておくことには、実は大きなリスクがあるのです。どのような問題が起こりうるのか、解説します。
相続した山は、祖父名義だった
例えば、こんな事例が、今の日本では珍しくありません。
父親Aさんが亡くなって、相続になったBさん。父の財産には、実家からほど近い場所にある、先祖から受け継がれる山が含まれていました。ところが、調べてみると、その土地の名義人は、30年前に亡くなった祖父。つまり、おじいちゃんが亡くなったとき、相続人であるおばあちゃんや子どもたち(Aさんとその兄弟たち)は、誰も相続登記(※)を行っていなかったのです。
「使える土地」であればそんなことにはならなかったのでしょうが、林業が廃れたことなどで山の利用価値がなくなり、管理が面倒だから、登記にお金がかかるから、といった理由で「放置」されたのでしょう。しかし、不動産である以上、所有権が消えてなくなるわけではありません。
この場合、祖父の相続においては、山は当時の法定相続人(祖母と子どもたち)が共有する状態になります。その後、おばあちゃんも亡くなったため、その共有持ち分も含めてAさんたち兄弟の共有に。ややこしいのですが、Aさんが亡くなったことで、今度はその持ち分をBさんが相続することになったわけです。
このように、共有不動産は、相続によって所有者がネズミ算的に増えてしまうという恐ろしさがあります。問題は、売却したり、木を伐採して有効活用したりしようとする場合には、基本的に相続人全員の同意を得る必要があるということ。代を重ねるごとに、連絡を取ることさえ困難な状況になりかねません。
相続が発生したときに被相続人が所有していた建物や土地などの不動産の名義変更手続きを行うこと。
相続放棄という方法もあるが
「いらない山」だからと登記をせずにいても、管理責任がなくなるわけではありません。相続税や固定資産税の課税対象から逃れられるわけでもないのです。
Bさんのような場合、家庭裁判所に申し立てを行うことで、「相続放棄」を行えば、「重荷」を下ろすことは可能です。相続の開始を知った日(山林の所有者が亡くなったことを知った日)から3ヵ月以内に申し立てを行う必要がありますが、事情によっては申立期限を延長することもできます。
しかし、この相続放棄には、「すべての相続財産を放棄しなくてはならない」という但し書きが付きます。つまり、不要な山林だけを受け取らない、ということはできないのです。欲しい財産があっても、相続は不可。放棄してからめぼしいものが出てきても、“後の祭り”になるというデメリットは、認識しておかなくてはなりません。
仮に親名義の山林を相続した場合、相続登記を怠ると、自分の子や孫に事例で紹介したようなリスクを背負わせることになります。相続放棄をするならするで、その処遇を明確にすべきでしょう。判断に迷う場合には、相続に詳しい税理士などの専門家に早めに相談してみることをお勧めします。
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「買った山」にもトラブルはある
不要な山林を相続して困る場合もあれば、最近はプライーベートキャンプ用などに山の一部を買う人も増えているようです。こちらは、進んで好みの場所を手に入れるのだから、問題は起こらないように思えるのですが、やはり注意しなくてはならない点はあります。例えば、建物が建てられないような土地利用についての制約がある場合があったり、わずかとはいえ固定資産税などの税金がかかってきたりもするのです。
ここでは、意外な“盲点”を挙げておきましょう。
さきほども触れましたが、土地の所有者には管理責任が生じます。近年、大型台風などによる暴風や大雨が頻繁に襲うようになりましたが、もしも所有する山が崩れて、他人の家屋や田畑、あるいは道路などに被害を与えた場合、その責任を問われる可能性があります。自分だけの山を手に入れたという喜びが、多額の損害賠償を求められるという悪夢に変わるかもしれないのです。
これも最近、イノシシやクマなどが人里に現れて人に危害を与えるニュースを、よく目にするようになりました。山を買うというのは、まさに彼らの生息地にこちらから足を踏み入れる行為であることも、十分認識しておく必要があるでしょう。テレビで流れるソロキャンプ映像とは別の世界が、山には広がっています。
また、水に恵まれた日本の山では、草や木が想像以上のスピードで成長します。テントを張るにも、毎回それなりの労力を使う「整地」が必要になることも、計算に入れておく必要があります。不慣れな人は、それだけで億劫になってしまうかもしれません。
年齢を重ねるにつれ、人の気持ちや体力は変化します。いつしか、そこが「いらない土地」にならない保証はありません。そのときに、すんなり売却できたり、子どもなどが喜んで譲り受けたりしてくれればいいのですが、そのままになれば、「放棄された先祖代々の土地」と同じ運命をたどることになる危険があります。
それは、山のある自治体にとっても由々しき事態です。土地の状況や利用実態などについて、彼らが今後、監視の目を強める可能性もあるでしょう。いずれにしても、地価が安いからといって、山を「衝動買い」するのは考えもの。以上のような注意点も踏まえつつ、慎重に検討すべきです。
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まとめ
相続の際に山林の登記を怠ると、後々さまざまな問題の発生するリスクが高まります。例えば、共有者が増えれば、売却などが困難になるでしょう。相続の際には、結論を先送りせず、相続放棄も選択肢に処遇をはっきりさせるよう努めたいものです。