確定申告をする際、添付資料が必要な場合があります。確定申告書が作成できても、必要な添付資料がなければ確定申告を完了したことにはなりません。
この記事では、事業所得のある個人事業主向けに確定申告の添付書類について解説します。また、電子申告の場合についても添付すべき資料について触れていきます。
確定申告に必要な書類とは?
確定申告に必要な書類を説明します。
【共通する書類】
確定申告をする人のなかには、「個人事業主やフリーランス」「会社員」「年金受給者」と、さまざまな立場の人がいます。立場によって必要な書類は変わってきますが、共通するものもあります。まずは、全ての人が必要になる書類を確認しておきましょう。
・確定申告書
確定申告書とは、所得額や控除額、所得税額を記載した申告書です。以前は所得の種類に応じて申告書Aと申告書Bがありましたが、現在は申告書Bに統一されました。
・本人確認書類
マイナンバーカードを持っている場合、本人確認書類はカードのみで済ませることができます。マイナンバーカードがなければ、通知カードや住民票など個人番号が確認できる書類と、以下のような本人確認書類が追加で必要です。
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
・所得金額がわかる書類
所得金額がわかる書類が必要です。例えば、以下のものが該当します。
- 青色申告決算書
- 収支内訳書
・控除の適用を証明できる書類
確定申告では、所得から差し引いて税額を計算する「所得控除」を受けることができます。控除を受ける場合、適用を証明できる書類が必要です。給与所得があり、すでに年末調整で申告が済んでいる書類に関しては確定申告での添付は必要ありません。一方、以下の控除は年末調整ではなく確定申告のときに申請する必要があります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 寄附金控除
それぞれの概要と必要書類は以下の表のとおりです。
控除の種類 | 概要 | 必要書類 |
---|---|---|
雑損控除 | 災害や盗難、横領などによって生活に通常必要な資産について損害が生じたときに受けられる所得控除 | 災害に関して支出を証明する書類(領収書・請求書など) |
医療費控除 | 一定額以上の医療費を支払ったときに受けられる所得控除 | 医療費控除の明細書、医療費通知 |
寄附金控除 | ふるさと納税など寄附したときに受けられる所得控除 | 寄附金額を証明する書類 |
・銀行口座の情報がわかるもの
所得税が還付される場合、銀行口座の情報を記載します。口座情報が確認できるものを準備しましょう。ただし、添付する必要はありません。
【個人事業主やフリーランスが確定申告の際に必要な書類】
個人事業主やフリーランスが確定申告する場合、青色申告か白色申告、どちらかで申告することになります。それぞれ必要な書類を説明します。
〇青色申告で必要な書類
青色申告では、確定申告と「青色申告決算書」を提出します。青色申告決算書とは、年間の収入や経費を記載した書類です。損益計算書とその内訳、貸借対照表から成り、全部で4枚あります。
〇白色申告で必要な書類
白色申告をする場合、確定申告書と「収支内訳書」の提出が必要です。収支内訳書には、「一般用用紙」「農業所得用用紙」「不動産所得用用紙」があります。事業所得であれば、一般用用紙を使いましょう。一般用用紙は、合計2枚で構成されています。
【会社員が確定申告の際に必要な書類】
給与収入が2,000万円を超えていたり、副業の所得が20万円を超えていたりと、会社員でも確定申告が必要な人がいます。また、前述したように医療費控除など一部の控除については、確定申告で申告しなければなりません。会社員が確定申告する場合に必要な書類を説明します。共通する書類と重複しますが、改めて確認しておきましょう。
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 銀行口座の情報がわかるもの
- 所得金額がわかる書類
- 控除の適用を証明できる書類
【年金受給者が確定申告の際に必要な書類】
年金をもらっている人は、年金の受取額が400万円でかつその他の収入が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です。ただし、控除を申告する場合や年金以外の収入が20万円を超える場合は確定申告を行いましょう。必要書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 控除の適用を証明できる書類
- 所得を証明する書類(年金以外の収入が20万円を超える場合)
確定申告書の添付書類とは?
源泉徴収票の添付不要について
平成31年4月1日以後の確定申告書においては、源泉徴収票等の添付が不要となりました。添付省略の理由は国税庁HPにあるように、「納税者の利便性向上を図る観点から」とされています。そして、添付不要となる源泉徴収票については、保存義務はありません。
源泉徴収票「等」とは、給与所得、退職所得、公的年金等の確定申告書で、いずれの源泉徴収票についても添付不要です。また、同時に他7種の書類について添付不要となりました。
- オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書
- 配当等とみなされる金額の支払通知書
- 上場株式配当等の支払通知書
- 特定口座年間取引報告書
- 未成年者口座等につき契約不履行等が生じた場合の報告書
- 特定割引債の償還金の支払通知書
- 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例における相続税額等を記載した書類
上記の中には、普段あまり聞きなれない書類もありますが、株や投資信託をしている人であれば取引報告書等はよく目にすることでしょう。上記各書類で添付不要となったものは、確定申告後の修正申告においても添付が不要であり、保存義務もありません。
実は添付資料については、平成29年分の確定申告から医療費控除の取り扱いも変更されています。
- 医療費の領収書の添付に代わって、医療費控除の明細書または医療保険者が交付した医療費通知書の添付が必要
医療保険者から交付を受けた医療費通知書の添付により明細の記入を省略できる - 医療費の領収書は5年間保管
ただし、医療保険者から交付を受けた医療費通知書を添付の場合は領収書保管不要
添付書類は、いずれも確定申告書を作成するときには必要な書類ではありますが、源泉徴収票のように添付も保存義務もないものもあれば、医療費控除の領収書のように添付不要ですが一定期間の保管が必要なものもあるのが現状です。
電子申告における添付資料とは?
e-TAXや市販の税務・会計ソフトにより電子申告をする場合、必要な添付資料は別途郵送によることもできますが、平成29年より特定の添付書類については、イメージデータ(PDF形式)による提出が可能となりました。
さらに、平成30年4月以降は添付書類をイメージデータで提出した場合は、保存が不要となりました。
電子申告における書類の添付方法は次の2とおりあります。
- 申告、申請・届出等データを送信した後に、メッセージボックスからイメージデータを提出する方法
- 申告、申請・届出等データと同時に添付書類(PDF形式)を提出する方法
電子申告においてイメージデータで送信可能なものとして、住宅ローン控除にかかる書類があります。下記の添付資料のすべてについて、イメージデータでの送信が可能であり、初年度の住宅ローン控除であっても電子申告のみで済ませることができます。
- 登記事項証明書
- 売買契約書の写し
- 住宅借入金等の残高証明書(適用1年目のみ)
- 補助金等の額を証する書類
- 長期優良住宅建築等の計画の認定通知書の写し
- 住宅用家屋証明等
- 検査済証の写し
- り災証明書等
まだまだ多い確定申告における添付資料
確定申告書の添付資料保存とは?
確定申告書時に必要な所得控除や税額控除の添付書類について取り扱いの一覧を挙げておきます。保存となった場合の保存期間は、原則として法定申告期限から5年間となります。
<所得控除関連>
・医療費控除
制度の利用方法 | 記載方法 | 添付要否 | 添付書類の保存 |
---|---|---|---|
納税者が医療費控除の 明細書を作成の場合 |
明細を記載 | 不要 | 領収書の保管必要 |
合計額のみを記載 | 要(明細書) | 領収書の保管必要 | |
健保組合等からの 医療費通知利用の場合 |
合計額のみを記載 | 要(医療費通知) | ― |
医療費控除の明細書を添付した場合でも領収書の保管は必要となりますが、医療費通知を添付すれば、領収書の保管は不要となります。
・セルフメディケーション税制を選択した場合(医療費控除)
制度の利用方法 | 記載方法 | 添付の要否 | 添付書類の保存 |
---|---|---|---|
納税者が医療費控除の 明細書を作成の場合 |
明細を記載 | 不要 | 領収書の保管必要 |
合計額のみを記載 | 要(明細書) | 領収書の保管必要 |
・社会保険料控除その他
電子申告による確定申告の場合、一定の記載事項を入力して送信することで、書類の原本提出を求められない「第三者作成書類」があります。支払先から発行される国民年金保険料の控除証明書、生命保険料控除の証明書、計算明細書などが第三者作成書類に該当します。
また、平成31年1月からは保険会社等から電子データによる保険料控除証明書を交付することができるようになりました。保険会社等から交付を受けた電子データ形式の控除証明書等は、電子申告の際の添付書類とすることができます。
制度名 | 記載方法 | 添付の要否 | 添付書類の保存 |
---|---|---|---|
社会保険料控除 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除 地震保険料控除 寄付金控除 勤労学生控除など |
第三者作成書類などの添付書類を参照して記載 | 持参・郵送の場合 添付要 |
― |
電子申告の場合 省略可 |
省略の場合は添付資料 保管要 |
電子申告の場合、添付資料を省略しても、税務署等からこれら書類の提示又は提出を求められ、その求めに応じなかった場合には、確定申告書に添付又は提示がなかったものとして取り扱われます。結果的に控除が受けられなくなりますので、省略の場合は必ず5年間は保管しましょう。
<税額控除関連>
制度名 | 記載方法 | 添付の要否 | 添付書類の保存 |
---|---|---|---|
住宅ローン控除関係 | 添付書類を参照して記載 | 要(一部省略可) | (省略時は保管要) |
政党等寄付金特別控除 | 添付書類を参照して記載 | 要/電子は省略可 |
住宅ローン控除においては、持参、郵送、電子申告にかかわらず、初年度は多くの添付資料が必要となります。電子申告の場合は前述のようにイメージデータの添付が必要です。しかしながら、2年目以降の「住宅ローン年末残高証明書」については、第三者作成書類として電子申告における添付を省略することができます。
また、政党等への寄付金については第三者作成書類扱いとなります。
結果的に電子申告で書類添付が不要になったしても5年間の保管義務が生じるのであれば、添付する方が「保管の手間が省ける」という考え方もあるでしょう。
まとめ
確定申告は、税制改正を気にしつつ、添付書類の内容を転記しながら、税額を確定させる地道な作業です。そして最後にチェックするのは、確定申告書とともに提出すべき添付資料はどれかということです。
電子申告においては省略可能な添付書類がありますが、その後の保管義務は増えていきます。このような背景があることから、今後は電子データの活用が増えてくると予想されます。
▼参考サイト
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/06.htm
- https://www.e-tax.nta.go.jp/imagedata/imagedata1.htm
- https://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/imagedata/shinkoku01.pdf
- https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/kakutei/tempu01.htm
- https://www.soumu.go.jp/main_content/000330216.pdf
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/0019009-126.pdf
- https://www.mext.go.jp/content/20200508-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/b/04/4_01.htm