引越ししたら確定申告書はどこに提出する? フリーランスの注意点も解説 | MONEYIZM
 

引越ししたら確定申告書はどこに提出する?
フリーランスの注意点も解説

1月1日~12月31日の1年間で得た所得と税金を計算し、申告する確定申告。途中で引越しした場合、確定申告書はどこに提出すればよいのでしょうか。
ここでは、確定申告をはじめ、フリーランス(個人事業主)が引越しするときに注意すべき税務や社会保険などの手続きについて解説します。

確定申告書は引越し後の税務署に提出する

確定申告書は、申告書を提出する時点で納税地がある場所の所轄税務署に提出します。1月1日~12月31日のどこかで引越しした場合はもちろん、翌年の1月以降に引越しした場合でも同様です。

 

ここで注意しておきたいのは「納税地」についてです。フリーランス(個人事業主)で、自宅で事業を行っている場合は、原則自宅が納税地となります。しかし届出を出すことで自宅以外の場所に事務所を構えて納税地とすることもできます。確定申告をはじめとする税務関係で、引越しによる手続きが必要になるのは「納税地」の引越しです。

 

引越し後、確定申告書を提出する税務署は国税庁のホームページで調べることができます。東京都などでは、同一区内でもエリアによって所轄税務署が異なるため、注意が必要です。ホームページでは、郵便番号・住所から税務署が検索できるので活用しましょう。

フリーランス(個人事業主)の場合は届出が必要

フリーランス(個人事業主)が引越しによって納税地が変わるとき、税務署にさまざまな届出を出す必要があります。ここでは、税務関係の手続きを見てみましょう。書類によって提出する税務署が異なるので注意しましょう。なお、いずれも手続きにかかわる手数料は不要です。

 

書類 手続内容 提出先 提出期限
①個人事業の開業・廃業等届出書 事業用の事務所・事業所を移転したときの手続(開廃業等届出書は、事業用の事務所・事業所が納税地であるかどうかにかかわらず提出する) 引越し前の事務所・事業所の住所地を所轄する税務署 引越しした日から1か月以内
②所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書 引越しなどによって納税地に異動があった場合の手続 引越し前の納税地を所轄する税務署 引越し後すぐ
③預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書 口座振替による納税を行っていて、引越し後に所轄税務署が変わった場合に提出 引越し後の納税地を所轄する税務署に提出、または金融機関 確定申告書を提出するタイミングで
④給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 従業員に給与を支払っている場合、給与等の支払を行っている事務所などが移転したことを知らせる手続 引越し前の納税地を所轄する税務署 引越しした日から1か月以内

引越し後の確定申告以外の注意点

引越し後、確定申告をはじめとする税務関係以外にもいくつか注意点があります。

国民健康保険と国民年金の手続きも忘れずに

フリーランス(個人事業主)が自宅を引越した場合、国民健康保険の手続きが必要です。また、場合によっては国民年金の手続きも必要となります。

 

【国民健康保険】
異なる市区町村へ引越しする場合は引越しから14日以内に、引越し前の役所と引越し後の役所でそれぞれ手続きが必要です。同一市区町村へ引越しする場合は、引越しから14日以内に住所変更手続を行います。

 

手続きの際に必要となるものは自治体によって異なるので、事前にお問い合わせください。

 

【国民年金】

原則、手続きは不要です。ただし、ただし、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者は、市区町村の役所に変更届を提出する必要があります(マイナンバーと基礎年金番号の結びつきの状況は「ねんきんネット」で確認できます)。

従業員がいる場合は社会保険などの手続きも必要

フリーランス(個人事業主)が常時5人以上の従業員を雇っている場合は社会保険(健康保険・厚生年金保険)、常時1人以上の従業員を雇っている場合は労働保険(雇用保険・労災保険)に原則、加入の義務があります(加入義務のある事業所を「適用事業所」といいます)。事業を行っている場所の引越し(自宅で事業を行っている場合は自宅の引越し)にともない、社会保険や労働保険の手続きも必要になります。

 

ここでは、社会保険・労働保険関係の手続きについて見てみましょう。なお、提出書類には添付書類が必要です。詳細について社会保険は日本年金機構、労働保険は労働基準監督署・ハローワークにお問い合わせください。

 

書類 手続内容 提出先 提出期限
①健康保険・厚生年金保険 適用事務所 名称/所在地変更(訂正)届 健康保険・厚生年金保険の適用事業所が名称や所在地を変更する際に行う手続 引越し後に所轄年金事務所が変わらない場合…事務センターへ郵送、または所轄年金事務所 引越しした日から5日以内
引越し後に所轄年金事務所が変わる場合…引越し前の所轄年金事務所
②健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届 健康保険・厚生年金保険の適用事業所について、電話番号や所在地、代表者、昇給月などに変更事項があったときに行う手続 事務センターに郵送、または引越し後の所轄年金事務所 引越しした日から5日以内
③労働保険 名称、所在地等変更届 労働保険の適用事業所について、所在地や名所などに変更があったときに行う手続 一元適用事業所…引越し後の所轄労働基準監督署に③を提出後、③の控えと④を引越し後の所轄ハローワークへ提出(※1) 引越しした日の翌日から10日以内
二元適用事業所…引越し後の所轄ハローワークへ③④を提出(※2)
④雇用保険事業主事業所各種変更届

 

※1、2 これは同一都道府県内での引越しの場合です。異なる都道府県への移転の場合は、労働局に問い合わせてください。
※2 これは同一都道府県内での引越しにともなう提出に限ります。引越し以外の変更の場合、このケースとは提出先が異なるので注意してください。

住民税はどこに支払う?

確定申告は国に納める所得税を計算し、納税するためのものですが、一定の所得がある人は、所得税のほかに住民税を市区町村に納めます。住民税をどこに納めるかは1月1日現在の居住地で決まります。

 

住民税に関して、引越しにともなう手続きは特にありません。引越しをする際に提出する転出届・転入届(同一市区町村での引越しの場合は転居届)を出しておけば大丈夫です。

 

フリーランス(個人事業主)は一般的に、普通徴収という方法で住民税を徴収されています。普通徴収の場合は1月1日現在の居住地に基き、納付通知書が郵送されます。

 

たとえば1月1日現在A市に住んでいて、2月にB市に引越しした場合、A市から市民税の納付通知書が届くので、そのまま市民税を納付します。B市から市民税の納付通知書が届くのは翌年からになります(納付通知書が送付される時期は、市区町村によって異なります。詳しくは当該市区町村にお問い合わせください)。

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まとめ

自宅で仕事をしているフリーランス(個人事業主)の場合、自宅の引越しとともに所轄の税務署が変わると、確定申告書は引越し先の所轄税務署に提出します。一方、住民税は1月1日時点の住所を基準にするため、引越し後もしばらくは引越し前の市区町村に市民税を納めることになることがあります。

 

また、引っ越しにともなって、税務関係や国民健康保険について手続きが必要になります。さらに、フリーランス(個人事業主)で従業員がいる場合は、社会保険や労働保険に関する手続きも必要になります。

 

いくつもの役所に書類を提出する必要があるため、引越しが決まったら、必要な手続きをあらかじめリストアップしておくことをおすすめします。不明点は関係の役所に問い合わせ、本業や納税などに影響が及ばないよう、手際よく準備を進めていきましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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