経理から見た中小企業経営 -経理が経営を左右する-
12月に入り少し寒くはなりましたが、快晴の日も多くなりました。いかがお過ごしでしょうか。
*** 税務・会計・経営 ***
少しリアルな話になりますが、経理と経営についてご説明します。
「経理が経営を左右する」のは事実です。 私は銀行、東芝グループ会社を通じて数多くの会社の事例を見てきましたが、経理が弱い会社は 必ずと言っていいほど、どこかで会社経営に直結する問題が起こってきます。
その内、初歩の初歩、しかし最近お問い合わせが多い、決算・節税対策についてご説明します。
先般、ある会社からお電話を頂き、伺ったところ、決算書を見せていただき、借入がやや多い感じは しましたが(業種柄、借入が多い業種)、損益・資金繰りとも問題なさそうでした。
「何の問題があるのですか?」とお伺いしたところ、「今の税理士に不満がある、脱税は行なわない、 しかし、きちんとした節税対策がとれない」というわけです。
「1年前もいくら税金がかかりますかと確認したのに、前の年と同じくらいですと答えられ、いざ払う 時になったら前の年の3倍の税金だった」 「今年も節税をしたいと言ったら、コピー用紙を向こう1年分買っておいてくださいと言われ、焼け石に 水、何の効果もない」とのことでした。
お怒りはごもっともです。なぜなら、節税分で借入の返済ができたでしょうし、従業員の方の雇用 確保やボーナスの支払にも当てられたでしょう。
しかし一方、そのお話を聞いて思わず苦笑いしてしまいました。
まずい点その1:決算・節税対策はその場で行うものではない
期の途中から今期の損益はどうかを考えながら用意周到に行うものです。 よく新聞で、上場企業が決算見通しを発表し、その後、上方修正だとか下方修正だとかをさらに 発表しているのをご存じだと思います。これは期中から決算損益を見ている証左です。 もちろん、同時に上場企業でも節税対策を採っています。
その場で十分な決算節税対策が採れるものではありません。
まずい点その2:税務申告は事後処理、決算節税は事前処理
税務申告は決算数字を見てから法人税法等に則って税額を計算することですが、決算節税は 決算数字を出す前の経営処理です。 それには日頃から、経理知識を持った人間が、経理の目で会社の経営を見て、考えていることが 必要になります。 会計事務所は通常、前者中心になるので、企業の中で経営に近いところで経理を行ってきた者で ないと後者のことまでわからないということでしょう。
会社の舵取り、経営は事前に行ない、結果は後で出てくるもの。 舵取り、経営を事前に行なう場合、その結果がどう出てくるのか事前に数字で予想しておくこと。 そして、そのフォローをすること。
その辺りが、経営に役立つ経理と単なる会計・税務処理との違いではないでしょうか。