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違反すれば10万円以下の過料に!「相続登記」が義務化されます
公開日 2021年6月1日 更新日 2023年9月22日
国内で「誰のものかわからない土地」が増えています。所有者不明の土地は公共工事や土地取引の妨げになりますし、災害から復旧するときの足かせになる可能性があります。 そこで対策として、2024年4月から「相続登記」が義務化されることになりました。制度について、くわしく説明します。
九州より広い「所有者不明土地」 なぜそんなことに?
「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」を「所有者不明土地」といい、大きな問題になっています。2016年時点で九州より広い約410万haに達していると推計され、状況を放置すれば、40年には北海道の面積に迫る720万haに達する恐れがあるそうですから、ただごとではありません。
所有者がわからなくなる原因は、「相続登記の不備」が66%、「氏名や住所などの変更登記の不備」が34%を占めており、多くは相続に起因しています。確かに、相続になって先祖代々の土地を調べてみたら、何世代か上の人の名義になっていた、といった例は珍しくないようです。
相続で不動産を譲り受けた場合には、法務局で相続登記(不動産の名義変更)の手続きを行う必要があります。 ただ、これまでは、たとえその手続きを行わなかったとしても、罰則などは設けられていませんでした。
通常の売買で不動産の所有権を移す場合には、必ず所有権移転登記が行われます。そうしないと、自分の権利が守れない=他者に奪われる可能性があるからです。しかし、相続で受け継ぐ場合には、名義人である被相続人が死亡しているため、勝手に所有権を移されたりするリスクは小さくなります。つまり、わざわざお金や手間をかけて名義変更を行わなくても実質的なデメリットはなく、そうした事情が相続登記を曖昧にする一因になっていると考えられます。
相続で争いがなく、以前と変わらず親名義の家に住んでいる、逆に相続人同士が揉めて、誰が不動産を取得するのか決着がつかずにそのままになっている、といったケースもあるでしょう。また近年は、親が地方などに残した土地や家に「魅力」が乏しいために放置されたり、“おひとりさま”が亡くなって、そのままになったりすることも増えているようです。
3年以内の相続登記を義務化へ
今回の法改正は、こうした現状を踏まえ、不動産の相続登記などの漏れを防止することで、「土地の所有者を明確にすること」を目的としたものです。具体的には、次のような点が改められることになりました。
- 相続登記の義務化
相続人が、相続、遺贈(遺言による財産の譲与)による不動産の取得を知ってから、3年以内の登記申請が義務化されました。違反者には10万円以下の過料、という罰則も設けられています。
登記申請は、簡略化が図られることになりました。現行法では、遺産分割による不動産登記などは、他の相続人などとの共同申請となっており、煩雑な作業を必要とします。そのことも登記が滞る原因になっているとして、法改正後は、誰か1人が法務局に戸籍などを示して申し出ればOK、ということになりました。 - 所有者の住所変更登記などの義務化
不動産所有者の「氏名又は名称及び住所の変更登記」も、2年以内の申請が義務化されます。所有者と「音信不通」になることを防ぐための措置ですが、これも違反すると5万円以下の過料の対象となります。 - 土地を国庫に帰属させられる制度の新設
相続などで土地を取得した人が、その所有権を放棄して土地を国庫に帰属させることができる制度が新設されます。土地に建物が建っていない、担保権が設定されていない、土壌汚染や埋設物などがない、などの要件を満たす必要がありますが、受け継いでも管理に困るような土地は、国に「引き取って」もらうことができるようになるわけです。 ただし、この適用を受けるためには、国が10年間管理するのに必要となる費用を納める必要があります。 - 法務局が情報収集し、職権で変更登記
法務局が、住民基本台帳ネットワークなどを使い、亡くなった人の情報や、住所変更の情報を取得し、本人への意向確認のうえ、職権で住所変更登記などを行える仕組みが整備されます。
義務化は2024年から実施
制度の改正は、2024年4月1日から開始されます。2024年4月以降は、親などが亡くなって不動産を相続すると、必然的に対応が求められることになります。またここで疑問になるのが、現時点で「登記を行っていない」「登記したか曖昧」といった土地を持っている場合の対応ではないでしょうか。相続登記の義務化は、法改正後に発生した相続だけでなく、改正以前からの相続にも適用されます。現時点で登記していない不動産を持っている場合、改正法の施行日から3年以内に相続登記をしなければなりません。なお、相続していたが認知しておらず、法改正後に相続していたことを知ったというケースもなかにはあるでしょう。法改正後に相続を知った場合、認知した日から3年以内に相続登記を行う必要があります。つまりこの場合、法改正から3年以内ではなく、相続を知った日から3年以内に相続登記の義務を負うことになるのです。
前述したように、相続登記の義務化には罰則が設けられています。できれば制度が改正される前に、登記していない不動産がある場合は手続きしておくのがいいでしょう。不安のある人は相続にくわしい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
問題は、今現在、相続登記を行っていない、あるいは登記したかどうか曖昧な不動産を「持って」いる場合。今回の法改正が「所有者不明の土地をなくす」ことを目的にしている以上、それらが“お目こぼし”される可能性は、低いとみなくてはなりません。何らかの移行措置などは検討されるかもしれませんが、遠からず正確な登記を求められる公算大です。そもそも、「次の相続」が発生すれば、否応なく義務化の対象になりますから、子どもなどに多大な荷物を背負わせることになるでしょう。
現状では、それらの不動産に対してどのような措置が取られるのか、具体的なことは明らかになっていませんが、相続から時間が経つほど、「正しい登記」に要する労力は大きなものになると考えるべきです。例えば、登記のためには他の相続人(権利者)の同意が必要ですが、亡くなっていたり、あるいは認知症を発症して判断能力を失っていたりすることもあるからです。
罰則規定のある義務化ですから、できれば施行前に正確な登記を行っておくのがベストであることは、言うまでもありません。不安のある人は、相続に詳しい税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。
まとめ
2024年4月1日から、相続登記が義務化されます。4月以降は、不動産を相続したら正しい対応が必要です。また相続登記の義務化は、法改正以前の相続についても適用されます。罰則もあるため、できれば法改正以前に対応しておくのが良いでしょう。不安点や不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談して早めに解決してください。