2021年5月に、デジタル改革関連法が参議院本会議で可決・成立しました。これは、デジタル庁の創設などデジタル化におけるさまざまな事項を盛り込んだ法律となりますが、私たちの生活に影響を及ぼすことも多くあります。
この記事では、デジタル改革関連法の内容や、デジタル改革関連法で生活にどのような変化があるのかなどについて解説します。
デジタル改革関連法が参議院本会議で可決・成立
まずは、デジタル改革関連法が参議院本会議で可決・成立したことを受けて、デジタル改革関連法の内容について見ていきましょう。
デジタル改革関連法の成立の背景
菅総理は、2021年9月における自民党総裁選挙で、デジタル庁の創設を政策として掲げ、それに関連するデジタル改革関連法の整備を急いでいました。急ピッチでデジタル改革関連法案を作成し、2021年5月には、デジタル改革関連法の参議院本会議での可決・成立に至っています。
それでは、なぜデジタル改革関連法は急ピッチで可決・成立したのでしょうか。その背景には、何といっても、昨今のデータの多様化があります。データが多様化・大容量化し流通している現代において、スムーズに正しく行政サービスを行うためには、行政においてデータの活用が必要不可欠になってきました。
しかし、データが多様化・大容量化し流通するということは、データの悪用・乱用からの被害が多くなるということです。そこで、法律を整備し、データの悪用・乱用からの被害を防止する重要性が増してきました。また、新型コロナウイルスで給付金を支給する際に、デジタル化の遅れによりスムーズな支給ができない問題も顕在化しました。
これらの社会的な課題解決のために、データ活用が緊急で必要となったこともデジタル改革関連法の成立の背景といえます。
デジタル改革関連法の内容とは
デジタル改革関連法とは、どのようなものなのでしょうか。デジタル改革関連法は、次の6つから成り立っています。それぞれの概要を見てみましょう。
・デジタル社会形成基本法
今までにあったIT基本法に替わる法律です。このデジタル社会形成基本法により、デジタル社会の形成の基本的な枠組みを明確化し、さまざまな施策ができるようになります。
・デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
マイナンバーカードの利便性の向上など、デジタル社会の形成を図るための施策を行うための法律です。
・デジタル庁設置法
デジタル庁の設置と組織の整備などに関する法律です。
・公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律
マイナポータルの口座を登録することができ、緊急時の給付金などに登録口座を利用することができるようになるための法律です。
・預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律
個人番号と預貯金を紐づけする(個人の同意が必要)ことで、相続時や災害時の手続きの負担軽減などができるようになるための法律です。
・地方公共団体情報システムの標準化に関する法律
地方公共団体情報システムを標準化することで、行政運営の効率化などを図るための法律です。
以上6つの法案を成立させることで、総合的にデジタル社会を推進していくことができるようになります。
デジタル改革関連法の成立でデジタル庁の発足へ
菅総理が政策の目玉としているもののひとつが、デジタル庁です。デジタル改革関連法の成立で、デジタル庁を創立することが可能となりました。
そこで、ここでは新しくできるデジタル庁について見ていきましょう。
新しく発足するデジタル庁とは
デジタル庁とは、デジタル社会の形成に関する施策を行うなかで、重要な行政事務の迅速化や、施策の重点的な遂行を図ることを目的としている省庁です。デジタル庁でいちばん権限を持つのは内閣総理大臣です。デジタル庁の長及び主任の大臣を内閣総理大臣とし、その下にデジタル大臣を置く組織となっています。
次に、デジタル庁が行う業務を見ていきましょう。デジタル庁が行う業務内容は、大きく内閣補助事務と分担管理事務の2つに分かれます。
内閣補助事務とは、デジタル社会の形成のための施策を企画立案したり、総合調整したりする業務です。いわば、デジタル庁の大きな施策のもととなる業務になります。
分担管理事務とは、デジタル庁のいわば実務部分の業務です。デジタル社会実現のための、さまざまな計画の作成と推進をします。例えば、情報提供ネットワークシステムの設置や管理であったり、データの標準化や公的基礎情報データベースに関する総合的な政策の企画や立案を行ったりします。
以上のように、我が国のデジタル化に対する施策は、デジタル庁が担っていくこととなります。
デジタル庁の発足で2000個問題の解消へ
デジタル庁の発足で期待されるのが、2000個問題の解消です。2000個問題とは、日本の個人情報保護に関する法令の多さが起こす問題のことです。
実は、日本の個人情報保護に関する法令は国だけでなく、都道府県や市区町村、民間の事業者まで、情報を取り扱っている機関によってさまざまです。その数は、2,000にものぼります。
このような法令の多さにより解釈や運用などに統一性がなく、他の機関同士でデータの連携や活用がしにくい、サービスに遅れが出るなどの問題が生じています。これが2000個問題です。
デジタル庁ができると、それらの法令や施策は、デジタル庁が一括して管理することになるため、2000個問題は解消されます。2000個問題の解消により、データの幅広い利用が可能となり、スムーズな行政サービスなどの提供が期待できます。
デジタル法やデジタル庁で生活はどう変化する?
デジタル法やデジタル庁で私たちの生活はどのように変化するのでしょうか。デジタル法やデジタル庁により実現する、私たちの生活に関する施策には、次のようなものがあります。
・マイナンバーによる給付
これまで、マイナンバーは社会保障、税、災害対策でのみ活用が可能でした。デジタル改革関連法の成立により、マイナンバーに関連付けて給付金の給付ができるようになり、必要な人に速やかに給付金が届くことができるようになります。
・行政システムの統一化
行政システムが統一化されることにより、2000個問題が解消され、行政サービスの効率化が可能です。
・免許更新がオンライン講習に
マイナンバーカードと運転免許証が一体化されることで、免許証更新時の講習をオンラインで行うことが可能となります。
・マイナポータルで健康診断結果の確認
行政間でのデータの共有がスムーズにできるようになるため、マイナポータルから健康診断結果の確認ができるようになります。これにより、保険や診療など、健康診断結果に付随するサービスが利用しやすくなります。
・国家資格証のデジタル化
医師や看護師といった国家資格証もデジタル化が開始される予定です。国家資格証を提示しやすくなったり、偽造を防ぐことができたりするなど多くのメリットがあります。
これ以外にも、私たちの生活に関する施策が行われることが予想されます。デジタル法やデジタル庁で、私たちの生活に与える影響は大きなものになるでしょう。
まとめ
データが多様化・大容量化し流通してる現代において、スムーズに正しく行政サービスを行うためには、行政においてデータの活用が必要不可欠です。そこで、この記事で解説してきたとおりデジタル改革関連法の成立や、デジタル庁の創設などが行われます。
デジタル改革関連法の成立や、デジタル庁の創設は、私たちの生活にも大きな影響を与えます。これから計画される施策が多くあるため、デジタル改革関連法やデジタル庁に関するニュースなどには注視しておきましょう。