新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、業態転換や新規事業の展開などによる状況の打開を目指す中小・中堅企業を支援する「事業再構築補助金」(2021年3月から公募開始)の第7回公募要領が発表されました。今回からは、コロナ禍に加え、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う原油価格や物価の高騰により業況が悪化している企業の取り組みに対する「緊急対策枠」が新設されています。補助の概要、申請の方法などを解説します。
コロナ禍に苦しむ中小企業などを支援
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業などの事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした制度です(主管は経済産業省・中小企業庁)。コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業のほか、個人事業主、フリーランスも対象となります。コロナを機に事業転換などを模索している事業者にとっては、”渡りに船“の支援策といえるでしょう。
ただし、この補助金には、外部有識者からなる審査委員会の審査があります。確実に補助を受けるためには、制度の内容をよく理解した上で、説得力を持った事業計画書などを用意する必要があります。
主な申請要件
主な申請要件は、次の通りです。条件を全てクリアしていないと申請の対象になりませんから、注意しましょう。
- 売上が減っている
2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して、10%以上減少していること。売上高に代えて、付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費を足したもの)を用いることも可能。 - 事業再編に取り組む
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
事業再構築指針の手引き【経済産業省】 - 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
事業再構築に係る事業計画を、認定経営革新等支援機関(後述します)と策定する。補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(「グリーン成長枠」は5.0%)以上増加、または従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。
なお、次に説明する「グリーン成長枠」、「緊急対策枠」については、(1)の要件は課されません。
事業再構築補助金の補助額・補助率
では、補助の中身を具体的にみていきましょう。この補助金には、「通常枠」のほか、今回の公募から新設された「原油価格・物価高騰緊急対策枠(緊急対策枠)」を含む5つの支援類型(「枠」)があります。「通常枠」以外の補助については、今説明した申請要件以外に、それぞれの要件を満たす必要があります。また、「グリーン成長枠」の補助金額と、各類型の補助率は、中小企業と中堅企業で違いがあります。
通常枠
補助金額
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数20人以下】100万円~2,000万円
【従業員数21~50人】100万円~4,000万円
【従業員数51~100人】100万円~6,000万円
【従業員数101人以上】100万円~8,000万円
補助率
中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
(※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/3
補助の対象となる経費は?
受け取った補助金は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資をすることになります。補助対象経費は、この事業の対象として、他と明確に区分できるものである必要があります。
対象となる経費
公募要領では、次のようなものが、「例」として挙げられています。
補助対象外の経費
一方、次のような経費は対象外とされています。
ポイントは事業計画
今回に限らず、補助金の審査は、申請者から提出された事業計画を基に行われます。採択されるためには、主観に依らない合理的で説得力のある事業計画を作成することが、なにより重要になります。
認定経営革新等支援機関とは
事業再構築補助金の事業計画については、「認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定」することが求められています。「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業を支援できる機関として、経済産業大臣が認定した機関です。全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士などが認定を受けています。
以下で検索することができます。
認定支援機関_検索システム【中小企業庁】
事業計画の記載ポイント
公募要領では、「事業計画に含めるべきポイントの例」として、次のような点を挙げています。
審査項目は?
なお、審査に当たっては、次のような点が問われます(全てではありません)。これらについて、事業計画で明確にされていることが求められます。
- 補助対象事業としての適格性
「補助対象事業の要件」を満たすか。補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%(「グリーン成長枠」については5.0%)以上の増加などを達成する取組みか。 - 事業化点
事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況などから、補助事業の適切な遂行が期待できるか。 - 市場ニーズが検証できているか。
事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。
補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。 - 再構築点
事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。
既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスや、足許の原油価格・物価高騰などの経済環境の変化の影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。 - 政策点
ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
申請のスケジュールと準備
第7回の応募は9月末まで
事業再構築補助金は、7月1日に公募が開始され、現状、今後のスケジュールは次のようになっています。
申請は全て「電子申請」
今回の申請受付は、jGrants(電子申請システム)で行わ
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れます。そのため、「GビズIDプライムアカウント」が必要です。発行に時間を要する場合がありますので、早めのID取得をお勧めします。GビズIDプライムアカウントは、以下のホームページで必要事項を記載し、必要書類を郵送して作成することができます。
- 内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。複数回、事業再構築補助金を受けることはできません(グリーン成長枠を除く)。
- 不正、不当な行為があった場合は、補助金返還事由となります。不正があった場合は、法令に基づく罰則が適用される可能性がありますので、十分ご注意ください。
なお、本事業では、「暫定GビズIDプライムアカウント」での申請も可能ですが、「暫定GビズIDプライムアカウント」はデジタル庁の運用変更により、7月1日以降新たに取得することはできません。採択公表後の交付申請の受付移行の手続きでは、「GビズIDプライムアカウント」が必須となります。
申請の注意事項
経済産業省は、関連ホームページに次のような「注意事項」を掲載しています。
なお、補助金の詳細は、以下の公募要領でご確認ください。
事業再構築補助金 公募要領(7回)【中小企業庁】
まとめ
中小・中堅企業のほか、個人事業主なども対象となる事業再構築補助金の第7回の公募が始まりました。採択されるためには、説得力のある事業計画書が必要ですが、作成には時間がかかります。利用を考える場合には、早めに認定経営革新等支援機関に所属する専門家に相談するようにしましょう。