日本でも最近まであった? 犬に課税されていた犬税とは | MONEYIZM
 

日本でも最近まであった?
犬に課税されていた犬税とは

法人税や所得税など所得に課税される税金や、固定資産税などモノに課税される税金など、わが国の税制度では、さまざまな税金があります。

 

実は、日本には犬に「犬税」という税金が課されていた時代があります。しかも、犬税は意外と最近までありました。そこで、この記事では犬税を中心に、ペットにかかる税金について見ていきましょう。

犬に課税されていた犬税とは

まず、犬に課税されていた犬税や、そのほかの特徴的な昔の税金について見ていきましょう。

犬税とはどんなもの

動物に課されていた税金で、代表的なものが明治時代から昭和50年代まで存在していた犬税です。犬税は、犬を保有していることに対して課される法定外普通税でした。法定外普通税とは、市町村が総務大臣(犬税があった当時は自治大臣)に許可を受けて課すことができる税金のことです。つまり、犬税は国ではなく、自治体単位で設けられていました。

 

犬税は、各自治体が設けていたものであるため、課税体系は統一されてはいませんでした。犬1頭につき金額を決めて税金を課している自治体もあれば、犬の種類や飼育地域、飼育目的によって、税金を課したり、税率を変えたりしている自治体もありました。

 

例えば、京都府や群馬県では、愛玩犬として知られる狆(チン)について他の種類の犬よりも高い税率を設定していたことが記録に残っています。

 

昭和30年には、全国で2,700もの自治体に犬税が導入されました。また、わかっている範囲で最も最後まで犬税が残っていたのは昭和57年までで、長野県の四賀村で存在していました。四賀村では、1頭(生後3か月以上)につき年300円の税金が課せられていたのです。

犬税のほかにもあった動物税

犬税のほかにも、動物税はありました。その代表的なものが、うさぎ税です。明治時代、東京府(現在の東京都)ではうさぎ1羽につき、月に1円のうさぎ税が課されていました。

 

当時、外国産のうさぎをペットとして飼うことがブームになっていました。ブームが過熱化するとともに、中には高値で取引されるうさぎも多く出てくるようになりました。そのうち、投資目的でうさぎを売買する者も多く出てきたため、東京府でうさぎ税が導入されることとなりました。

 

その結果、うさぎの価格は下落し、一部の人を除いて、うさぎをペットとして飼うブームは衰退していきました。

 

動物税には、そのほかにも過去に、馬税・鮎つり税・クジラ税などがあり、昔は比較的一般的な税金だったと言えるでしょう。

世界における犬税の現状

現在の日本では、犬税を導入している自治体はありません。しかし、世界では現在も犬税を導入している国があります。そこで、ここでは世界における犬税の現状を見ていきましょう。

世界には犬税のある国が存在する

犬税を導入している国で代表的なのがドイツ、オランダ、オーストリア、中国です。基本的にヨーロッパでは、自治体ごとに犬一頭につき税金を課しています。それぞれの税金事情は、次のようになっています。

 

・ドイツ
ドイツでは、多くの自治体で犬税が導入されています。犬を飼うと、地方自治体の税務当局に届出をし、税金を支払います。自治体によっても異なりますが、犬一頭につき1万円~2万円程度の税金がかかるようです。

 

・オランダ
オランダでも、多くの自治体で犬税を導入しています。自治体ごとで犬税の金額は異なりますが、高い州では犬一頭につき1万円~2万円程度の税金がかかるようです。

 

・オーストリア
オーストリアでも、多くの自治体で犬税を導入しています。自治体ごとで犬税の金額は異なりますが、犬一頭につき1万円以内の税率の自治体もあります。

 

・中国
中国でも犬税はありますが、とくに有名なのが北京の登録費用です。税金とは少し異なりますが、北京では犬を登録するのに、お金を支払う必要があります。

 

昔は、北京市厳格限制養犬規定(現在は撤廃)により犬一頭に対して約6万円(初年度)の登録費用がかかっていました。現在では、約1万7千円(初年度)の登録費用となっています。

現在の日本でも導入を検討したことも

実は、犬税は過去の話ではありません。現代の日本においても、導入が検討されたことがあります。有名なのが大阪府泉佐野市です。大阪府泉佐野市では、2014年まで犬税の導入が検討がされていました。犬税導入の目的は犬のふん放置対策です。

 

泉佐野市では、環境美化施策の一環として、犬の放置フン対策に取り組んでいます。2006年には、泉佐野市環境美化推進条例を施行し、犬のふんを含むポイ捨てを禁止しました。

そんな経緯のなか、考えられたのが犬税の導入です。犬一頭に対して年間2,000円の犬税を課し、 放置フンに対する啓発や処理するために必要なコストを賄おうと考えました。

 

制度設計上、登録をしてる犬が対象となっていましたが、実際には登録をしていない犬が多い実態が表面化しました。このままでは、税の平等化が図れないなどの理由から、犬税の導入を取りやめました。

 

泉佐野市の犬税の導入は見送られましたが、環境美化の観点から犬税の導入を検討しようとする自治体が現れる可能性は今後もあるでしょう。

実はいまでもペットに税金がかかっている?

犬税をはじめとするペット税は、現在の日本にはありません。しかし、ペットに税金が全くかかっていないわけではありません。実は、今でもペットに税金がかかっているのです。それが消費税です。

 

消費税とは、モノやサービスの消費に対して課される税金です。モノやサービスの消費をしたタイミングで税金を納めることは難しいため、商品を購入したり、サービスを受けた時点で商品代金などと一緒に消費税を支払います。

 

それでは、ペットにかかわるものに税金はかかるのでしょうか。実は、消費税法上の考え方では、ペットはモノとして取り扱われます。そのため、ペットに関するさまざまなものには消費税が課されます。例えば、ペットを購入した場合は、消費税法上モノの購入と考え、ペット代金とともに消費税を支払う必要があります。

 

また、動物病院での診察はどうでしょうか。私たちが病院で診察を受けても、消費税はかかりません。しかし、ペットが病院で診察を受けた場合は、消費税が課されます。そのため、ペットの診察料金に加えて消費税を支払う必要があります。

 

ペットを飼育する上で重要なものが、ペットフードです。江戸時代には、犬銀といって猟犬の餌代に税金を課している藩もありました。現在では、犬銀のような直接エサ代に課税する制度はありませんが、消費税に関していうと、もちろんペットフードには消費税が課されます。しかし、これは人も同じです。人も食材や弁当などを購入すると、食材代や弁当代に消費税が課されます。

 

ただし、人の場合は酒類・外食を除く飲食料品に対して、消費税率8%の軽減税率が適用されます。一方、ペットフードは軽減税率が適用されないため、消費税率10%となります。

 

このように、今でも、ペットに対する税金がかかっている状況になっています。

まとめ

日本には、昔からさまざまな税金がありました。犬に対して課されていた犬税もそのひとつです。その後、日本の犬税はなくなりましたが、世界を見てみると、まだまだ犬税を導入している国や地域が多くあります。また、かつて泉佐野市で試みたように、現代の日本でも犬税の導入が検討される余地はあるようです。

 

消費税法では、ペットはモノと考え、消費税の課税対象となります。今後、日本でも、まだまだペットに対する税金の課税が検討される可能性はあります。ペットを飼っている場合は、ペットに対する税金の課税について、注視しておいたほうが良いでしょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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