国民年金保険料の納付が難しい場合の 免除や納付猶予とは? | MONEYIZM
 

国民年金保険料の納付が難しい場合の
免除や納付猶予とは?

新型コロナウイルスの影響で、個人事業主などが加入する国民年金の保険料を納付できない人が増えています。国民年金には免除・納付猶予制度がありますが、2020年5月から臨時特例として、新型コロナによる減収で保険料が納付できない人に向けた免除・納付猶予制度が始まりました。

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新型コロナの影響で国民年金の免除・猶予が過去最大に

2021年6月28日、厚生労働省が発表した2020年度の国民年金保険料納付状況によると、保険料の支払いを全額免除・猶予された人は約609万人にのぼり、前年度に比べて約26万人増加しました。要因のひとつとして、新型コロナウイルスの影響で収入が減少した人が、支払い免除となったことが挙げられます。

 

後述するように、新型コロナウイルスを理由に国民年金の保険料を免除する特例措置が2020年5月に導入されました。しかし、国民年金にはもともと、経済的に苦しい人を対象にした免除・納付猶予制度があります。

国民年金保険料の免除と納付猶予制度とは

国民年金の保険料を納めるのが難しい場合には「免除」や「納付猶予」の制度を利用できます(学生の場合は「学生納付特例」を利用します)。

国民年金保険料の免除制度

「免除」は保険料の納付が免除されることです。免除となる条件や保険料の納付を免除できる期間、免除額などについて条件があります。

 

【免除となる条件】
申請者本人・世帯主・配偶者の前年所得(1~6月に申請する場合は前々年の所得)が一定額以下であったり失業したりした場合、免除申請して審査を受け、承認されると「免除」になります。

 

【申請できる期間】
免除の対象となる保険料は、申請月を基準として過去は2年1か月の分まで、将来は翌年の6月分まで申請できます(1月~6月に申請したときは、その年の6月分まで)。国民年金は7月から翌年6月までをひとつの年度としているため、複数の年度分を申請したい場合は年度ごとに申請書を作成します。

 

【免除される金額】
審査の結果「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」のいずれかの免除額が承認されます。承認されるには、申請者本人・配偶者・世帯主の前年の所得が、いずれも以下の計算式で算出した金額よりも低くなることが条件となります。

 

・全額免除
{(扶養親族等の数+1)×35万円}+32万円※

※令和2年度以前を申請する場合は22万円

・4分の3免除
88万円※+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※令和2年度以前を申請する場合は78万円

・半額免除
128万円※+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※令和2年度以前を申請する場合は118万円

・4分の1免除
168万円※+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※令和2年度以前を申請する場合は158万円

 

「扶養親族等控除額」「社会保険料控除額等」は、年末調整や確定申告で申告した金額です。

 

【免除されたあとの年金について】
65歳以上から支給される老齢基礎年金を受け取るには、10年間の支給資格期間が必要となります。免除や納付猶予の申請をしないまま保険料を支払っていないと「未納」とされてしまい、老齢基礎年金を受け取れなくなることがありますが、免除の承認を受けた期間は受給資格期間に算入されます。

 

ただし、一部免除の場合は減額後の保険料を納付しないと、一部免除を受けた期間は未納とみなされるので減額された保険料を納付しましょう。

 

老齢基礎年金の年金額を計算するとき、免除を受けた期間については全額納付した場合に比べて減額されます。減額される金額は免除された額に応じて決まり、全額免除の場合は全額納付した場合の半分として計算されます(2009年3月分までは3分の1)。

国民年金保険料の納付猶予制度

「納付猶予」は毎月支払う保険料の納付を待ってもらうことです。納付猶予を受けるためにも、いくつか条件があります。

 

【納付猶予となる条件】
申請者が20歳以上50歳未満で、本人と配偶者の前年の所得(1~6月に申請する場合は前々年の所得)が一定額以下である場合、納付猶予の申請をして審査を受け、承認されること。

 

【納付できる期間】
免除と同じです。

 

【納付猶予が承認される所得基準】
申請者本人と配偶者のそれぞれの前年所得がいずれも、以下の計算式で算出した金額よりも低いことが承認の条件です。

 

{(扶養親族等の数+1)×35万円}+32万円※
※令和2年度以前を申請する場合は22万円

 

【納付猶予されたあとの年金について】
納付猶予の承認を受けた期間も、免除と同様に受給資格期間に算入されます。免除の場合は、免除を受けた期間も老齢基礎年金の額が加算されますが、納付猶予の場合は加算されないので注意が必要です。

 

経済的に納付ができるようになったら「追納」というかたちで保険料を納付すれば、納付をしたものとみなされ、老齢基礎年金の計算に反映されます。追納でさかのぼることができる期間は10年以内です(免除を受けた場合も、追納の制度を利用することができます)。

国民年金保険料免除・納付猶予の申請方法

国民年金保険料免除・納付猶予審査は①全額免除②納付猶予③4分の3免除④半額免除⑤4分の1免除の5区分すべてについて、順番に行われます。審査を希望しない区分は申請時に除外することもできます。

 

「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」に必要事項を記入し、添付書類とともに住所地の役場の国民年金担当窓口か年金事務所に提出(郵送も可)します。申請書は日本年金機構のホームページからダウンロードができます。申請書を提出後に審査が行われ、決定通知書が送付されます。

 

【申請書の添付書類】

  • 申請書に基礎年金番号を記入して申請を行う場合は、年金手帳(氏名の記載ページ)または基礎年金番号通知書のコピーを添付
  • 申請書にマイナンバー(個人番号)を記入して申請を行う場合は、マイナンバーカード(または個人番号カード)を窓口で提示するか、マイナンバーカードの表裏両面のコピーを添付(マイナンバーカードがない場合は、①個人番号の表示がある住民票の写しか通知カードと②運転免許証またはパスポートなど)

 

失業や廃業などを理由に免除・納付猶予を申請する場合は、別途添付書類が必要になります。詳細は日本年金機構のホームページで確認してください。

新型コロナウイルス感染症の影響で国民年金免除の特例が受けられる

新型コロナの影響で経済的に困窮し、国民年金の保険料を支払えない人が増えています。そこで、政府は2020年5月1日から、新型コロナの影響で保険料が納付できない人を対象とした臨時特例免除の制度を開始しました。

国民年金免除の特例制度とは 対象者と対象期間について

臨時特例によって免除・納付猶予の対象となる保険料は、以下の期間の納付分です。

  • 令和元(2019)年度分…2020年2月~2020年6月
  • 令和2(2020)年度分…2020年7月~2021年6月
  • 令和3(2021)年度分…2021年7月~2022年6月

 

保険料の免除・納付猶予を受けるには、以下の2点の条件を満たす必要があります。

 

  • 2020年2月以降に、新型コロナの影響で収入が減少した。
  • 2020年2月以降の所得等の状況からみて、当年中の所得が現行の保険料の免除・納付猶予などに該当する水準になる見込みである。

国民年金免除の特例制度の手続きと必要書類

臨時特例による免除の申請は、以下の2点の書類を住所地のある役所か年金事務所に郵送します。通常の免除・納付猶予申請と異なり「所得の申立書」が必要となるので注意しましょう。

※窓口に持参することもできますが、新型コロナ感染拡大防止のために郵送をおすすめします。

 

  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • 所得の申立書
※申請書にマイナンバーを記入する場合は、マイナンバーカードの写しなどの本人確認書類を添付

 

必要書類のダウンロードや記入方法は日本年金機構のホームページをご確認ください。

まとめ

国民年金には免除・納付猶予制度がありますが、2020年5月には新型コロナ対応のための臨時特例による免除・納付猶予制度ができました。

 

国民年金の保険料を未納のまま放置しておくと将来、老齢基礎年金が受け取れなくなることがあります。未納期間が生じないよう、経済的に苦しくなった場合は国民年金の保険料の免除・納付猶予の申請を必ず行いましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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