日本でも、さまざまな働き方が認められるようになる中、副業をしている人が多くなっています。
2022年の税制改正で、副業でも領収書の保存が義務化されることになりました。しかし、必須ではなく、領収書の保存が義務化されるケースとそうでないケースがあります。
ここでは、副業における領収書の保存義務について解説します。
副業の収入は雑所得になる
2022年の税制改正で雑所得に関する税制改正が行われ、領収書の保存が義務化されます。
会社員の副業は雑所得になることが多いため、今回の改正の対象となります。そこで、まずは副業の収入と雑所得のそれぞれの定義と関係について見ていきましょう。
副業とは、本業以外の仕事のことです。例えば、会社員がフリマアプリなどで商品の販売をしたり、所有している不動産からの賃貸収入があったりする場合は、すべて副業になります。
本業と副業以外に、所得税法には所得という考え方があります。収入を種類ごとに10の所得区分に分けて、所得金額や税金の計算を行います。副業でいうと、商品販売や執筆業などの雑所得や不動産賃貸などの不動産所得、パート・アルバイトの給与所得に分かれます。このうち、今回の税制改正は雑所得についてのものです。雑所得とは、他の所得に分類できない所得をいいます。
雑所得と似ているものに事業所得があります。事業所得はその業務を独立して行い、継続・反復しているケースです。独立・継続・反復している業務を事業と呼びますが、事業規模にあたらない業務からの収入は雑所得になります。副業で商品の売買や執筆業、プログラムの請負などを行っている場合は、事業所得でなく雑所得になる場合が多いです。
副業でも領収書の保存が義務化
事業所得では、以前から領収書の保存が義務化されています。そのため、個人事業主は領収書を保管しておく必要があります。
一方、雑所得の場合は、領収書の保存が義務化されていなかったため、領収書を保管しておく必要がありませんでした。しかし、2022年の税制改正で、雑所得であっても一定のケースでは、領収書の保存が義務化されました。
そこで、ここからは領収書の保存が義務化されるケースと、そうでないケースについて見ていきましょう。
領収書の保存が義務化されるケース
まずは、領収書の保存が義務化されるケースから見ていきましょう。領収書の保存が義務化されるケースは、前々年分の業務(副業)に係る収入金額が 300 万円を超える場合です。厳密にいうと、雑所得において、前々年分の業務に係る収入金額が300 万円を超える場合は「現金預金取引等関係書類」を保存しておく必要があります。
現金預金取引等関係書類とは、業務に関して自分で作成したもしくは取引先などから受け取った請求書や領収書などの書類のうち、現金の受け入れや支払、預貯金の預か入れや引き出しの動きに応じ作成されたもののことです。保存期間は、確定申告期日(翌3月15日)の翌日から5年間となっています。
この改正は、2022(令和4)年以後の所得税から適用されるため、前々年分である2020年(令和2年)の業務に係る収入金額が300万円を超える場合は、2022年(令和4年)以後、領収書などの「現金預金取引等関係書類」を保存しておく必要があります。
この300万円の基準は、あくまで収入ベースです。経費を差し引いた後の所得が基準とはなっていないので、注意が必要です。
では、領収書などの保存はどのように行えば良いのでしょうか。領収書などは、年度ごとに分けて保存しておく必要があります。保存方法としては、月ごとや種類(勘定科目)ごとにノートに貼ったり、封筒に入れて分けておいたりする方法などが一般的です。
前々年分の業務に係る収入金額が300 万円以下なら現金主義も可能に
雑所得において、前々年分の業務(副業)に係る収入金額が300万円以下なら領収書などの「現金預金取引等関係書類」を保存しておく必要はありません。また、発生主義ではなく、現金主義での収入や費用の計上も可能となりました。
現金主義とは、収入や費用を現金などで受け取ったもしくは支払った日に計上できるというものです。例えば、1月の売上が2月に入金された場合、発生主義では売上が発生した1月に売上計上しますが、現金主義では入金された2月に売上の計上を行います。
特に12月の売上が、翌年の1月に入金される場合など、年度をまたいで入金や支払がある場合、発生主義では利益が変わってしまうため、年度末の経理処理は注意をする必要があります。一方、現金主義では、現金の流れのとおりに売上や経費を認識すればよいので、経理処理は楽になります。
この改正は、2022(令和4)年以後の所得税から適用されるため、前々年分である2020(令和2)年の業務に係る収入金額が300万円以下である場合は、2022(令和4)年以後については現金主義での収入や費用の計上が可能です。また、現金主義で収入や費用の計上をする場合は、確定申告書にその旨を記載する必要があります。
前々年分の業務に係る収入金額が1,000 万円を超えたら注意が必要
雑所得の収入金額に関して、もう1つ注意が必要なのが、前々年分の業務(副業)に係る収入金額が1,000 万円を超えた場合です。前々年分の業務に係る収入金額が1,000万円を超えた場合、確定申告時に確定申告書とともに収支内訳書を税務署に提出する必要があります。
収支内訳書とは、1年間の総収入金額や必要経費の種類(勘定科目)ごとの金額などが記載されたものです。これまでも、事業所得を営む個人事業主は、青色申告なら青色申告決算書、白色申告なら収支内訳書を作成し、確定申告書と一緒に税務署に提出しています。
個人事業主の白色申告と同様に、前々年分の業務に係る収入金額が1,000万円を超えた場合には、雑所得の収入がある人も収支内訳書の提出が求められます。
この改正は2022(令和4)年以後の所得税から適用されるため、前々年分である2020(令和2)年の業務に係る収入金額が1,000万円を超える場合は、2022(令和4)年以後について収支内訳書の提出が必要です。
雑所得の場合の収支内訳書の様式はまだ発表がないため、どの程度の記載内容が求められるのかは不明です。ただし、財務省の公表した「所得税法等の改正」によると、雑所得の収支内訳書の作成および記載方法は、事業所得における収支内訳書と同様ということが書かれているため、求められる記載内容は同じと考えられます。
少なくとも、経費については勘定科目ごとの合計金額の記載をする必要があります。そのため、普段から、日々の取引を勘定科目ごとに帳簿付けしておくことなどが重要となります。
帳簿付けについて不明な点などがあれば、今のうちから、税理士などの専門家への相談や会計ソフトの導入などを検討しておきましょう。
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2022年分から副業でも請求書や領収書を保管しておかなければいけないって本当?|3分でわかる税金
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まとめ
働き方の多様化にともない、副業をしている人も増えてきています。副業にかかわる所得は、雑所得にあたるものや不動産所得、アルバイトやパートなどの給与所得といくつかの種類に分かれます。特に、副業が雑所得である場合は注意が必要です。
2022年の税制改正により、前々年分である2020(令和2)年の業務(副業)に係る収入金額が300 万円を超える場合は、2022(令和4)年以後、領収書などの「現金預金取引等関係書類」を保存する必要が出てきました。
また、前々年分である2020(令和2)年の業務(副業)に係る収入金額が1,000 万円を超える場合は、収支内訳書の作成・提出も必要です。今のうちから、保存方法の確認などの事前準備をしておくようにしましょう。