京都市が、空き家や別荘など利用されていない住宅の所有者に対する新たな税金の導入を進める方針だ、と報じられました。社会問題にもなっている空き家に対しては、近年、特に自治体レベルでの「規制強化」の動きが目立っており、その一環として税制面からのプレシャーも強まっています。今回は「空き家と税」の現状と対策をまとめました。
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全国初の京都市の新税「空き家税」とは?
家屋の利用促進を促す
京都市の新税「空き家税」は、正式名称を「非居住住宅利活用促進税」といいます。空き家や別荘など普段利用されていない住宅の有効活用を促すのが目的とされ、課税能力の高い人、つまり“立地や広さなどから利活用しやすい不動産を持つ人”への税率をより高める仕組みになっています。
具体的な課税額(①+②)は、次の通りです。
①家屋価値割:「家屋」の固定資産税評価額の0.7%
②立地床面積割:敷地の「土地」1㎡当たり固定資産評価額×家屋床面積
- 「家屋」の固定資産税評価額が700万円未満は、その10.15%
- 同じく700万円以上~900万円未満は、その0.3%
- 同じく900万円以上は、その0.6%
なお、所有する不動産の資産価値が低いため売却が困難な人などに配慮するため、新税の導入から5年間は「家屋の固定資産税評価額が100万円に満たないケース」を対象外にするとしています。また、所有者が死亡してから3年間は、課税が猶予されます。
導入は2026年度以降か
京都市は2022年2月の定例市議会に、この新税創設の条例案を提出する方針だとされています。可決された場合にも総務大臣の同意が必要で、システム開発などにも時間が必要なため、導入は2026年度以降になる見通しです。
同様の税としては、静岡県熱海市が「別荘等所有税」を導入済みですが、「空き家」まで含めたものは全国初だといいます。人が住んでいない住宅の有効活用をうたう今回の京都市の税は、ピンチ化している市の財政対策という一面もあるようです。今後全国の自治体で同じような動きが連鎖するとは考えにくいですが、空き家に対する行政の目が厳しさを増しているのは、紛れもない事実です。
空き家にかかる税金とは?
そもそも、空き家にはどのような税金が課税されるのでしょうか?
住んでいなくても固定資産税がかかる
利用している・いないに関わらず、土地や家屋を所有する人は、原則として「固定資産税」という地方税を納めなくてはなりません。具体的には、毎年1月1日時点で不動産を登記している人に対して、「固定資産税評価額(課税標準)×1.4%」が課税されます。また、都市計画法に基づく市街化区域にある土地や家屋には、「都市計画税(課税標準×0.3%上限)」が別途課税されます。
詳しくは東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」をご確認ください。
固定資産税が空き家の原因に?
ところで、この固定資産税には、土地の上に住宅が建てられている場合には「住宅用地の特例」が適用されます。土地に対する固定資産税の課税標準が1/6に減額される、すなわちそうでない場合に比べ納税額が1/6で済むのです(小規模住宅用地=200㎡以下の部分)。都市計画税についても、1/3に減額されます(同)。
裏を返すと、土地が住宅の建っていない「更地」の場合には、この特例は適用されません。家を取り壊してしまうと固定資産税が6倍に跳ね上がることになり、これが空き家の増える大きな要因となっています。
放置しておくと、やっぱり税が6倍になるリスク
しかし、2015年の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の施行で、少しだけ状況が変わりました。家屋が法に定められた「特定空家」に指定されると、やはり「住宅用地の特例」から除外され、固定資産税の額が6倍にアップすることになったのです。
特定空家とは、次のような状態をいいます。
- (1) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- (2) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- (3) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- (4) 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家を判定し、法に則った措置を進めるのは市町村で、通常、次のような流れになります。
「空き家」の苦情・相談
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状態把握
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「特定空家」に指定
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助言・指導:法に基づき、除却、修繕、樹木の伐採などの措置をとるよう助言、指導が行われます。
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勧告:従わない場合には、同上の措置をとるよう勧告がなされます。この段階で、「住宅用地特例」の対象から除外され、土地の固定資産税・都市計画税が大幅に上昇することになります。
↓
命令:さらに従わないでいると、同上の措置をとるよう命令がなされます。この命令に違反した場合には、50万円以下の過料が科せられます。
↓
行政代執行:最終的には、自治体が空き家を取り壊す「行政代執行」が行われます。その費用は、所有者に請求されます。
有効な空き家対策と注意点
特定空家とまでいかなくても、住んでいないのに税金や管理コストを払い続ける状況の長期化は、避けたいものです。空き家を「負の財産」ではなく、有効な資産として生かす方法を検討すべきでしょう。空き家を相続する(親が亡くなった後、実家に誰も住まない)可能性がある場合にも、早めの対策が必要です。
空き家を賃貸に出す
誰かに住んでもらえば、安定的な賃料収入が期待できます。集合住宅に比べて戸建ての賃貸物件は供給が限られているため、思わぬ好条件の借り手が現れることもあります。リフォームなどの初期費用や設備の管理コストは負担しなくてはなりませんが、とりあえず土地や家を手放さずに済むメリットもあります。
家が古い場合には、更地にしてコインパーキングなどとして活用する方法もあります。ただし、この場合は解体費用がかかるうえに、さきほど説明したように固定資産税が上がりますので、注意してください。
空き家を売却する
将来的に利用する予定がない不動産については、売却も選択肢になるでしょう。もちろん買い手が付くというのが条件ですが、売却によりまとまった資金を手にできるのは魅力です。
ただし、不動産を売却した際の「譲渡所得」には税金がかかる場合があります。譲渡所得は、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)」によって算出し、この金額に対して所得税や住民税が課税されます。
「譲渡価額」というのは、不動産を売却して得た金額、「取得費」はその購入金額です。つまり、不動産の売値から買値や売却にかかった不動産会社の手数料といった「譲渡費用」などを差し引いた金額に課税されることになります。買値よりも売値が安かった場合などには、税金はかかりません。
売却には空き家の特例措置がある
この譲渡所得には、「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」があります。被相続人の死亡により空き家になった不動産を、相続により取得した相続人または受遺者(遺言で取得した人)が売却した場合には、要件を満たせば売却した際の譲渡所得から3,000万円を控除する(差し引く)ことができる…という制度です(さきほどの計算式の「特別控除額」に該当します)。
主な要件には、以下のようなものがあります。
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものであること(老人ホームに居住していた場合も可)
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 2023年12月31日までに譲渡すること
また、空き家を相続した際に相続税を納めている場合、相続税の申告期限から3年以内にそれを売却すれば、売却した空き家に対応する相続税額を先ほどの計算式の「取得費」に加算して、譲渡所得を減額することができます。
まとめ
空き家を放置すると、固定資産税が毎年課税されるだけでなく、過料や行政による「代執行」の対象になるリスクがあります。所有している場合には、賃貸や売却といった有効活用の手立てを検討するようにしましょう。
売却の際には空き家の特例なども使えますが、要件が複雑であり、手続きを自分で行うのは大変です。空き家対策全般も含めて、不動産に強い税理士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。