2022年から高校で金融教育が導入されることが決まっています。高校生への金融教育は、お金や金融のさまざまな働きを理解して、自立する力を育成することなどを目的としています。その内容は高校生だけでなく、社会人も知っておきたいものが多いです。
ここでは、今注目の金融教育について解説します。
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2022年から高校で金融教育が導入へ
はじめに、2022年から高校に導入される金融教育とはどのようなものかを見ていきましょう。
そもそも金融教育とは
金融教育とは、簡単にいうと、お金や金融の動きやそれが与える影響について理解してもらうための教育のことです。こう書くと「子どもにお金の教育なんて…」と敬遠されそうですが、本来の目的は、お金や金融のことを理解することで、自分の豊かな生活や周囲のよりよい社会づくりに向けて、自ら行動できるような人間を作ることです。
金融教育を実施することで、教育を受けた人が自立する力を身につけたり、社会とかかわる力の育成をすることができたりします。
また、金融教育には「現実の社会と触れ合う機会の提供」「自主的に課題解決ができる人間形成のサポート」「将来への意欲や活力の醸成」の3つの魅力があります。特に、学生や若者にとっては、金融教育を受けることで、現実の社会と触れ合う機会を得ることができます。さらに、現実の社会と触れ合うことで、将来に対する気づきや未来を見出す力が生まれます。
このように、金融教育とは、単に、お金のことについての知識をつけるのではなく、教育を通じた人間形成も目的としています。
2022年から高校の家庭科で金融教育が導入される
金融教育の必要性が訴えられている中で、まずは2022年から高校に金融教育が導入されます。金融教育という科目ではなく、家庭科の中に組み込まれる形でのスタートです。
では、高校での金融教育とは、実際どのような授業が行われるのでしょうか。2022年度から始まる高校の新学習指導要領では、「資産形成」の視点に触れるよう規定があります。
つまり、資産形成の意義や、手段・方法などを勉強することになります。
具体的には、株式や債券、投資信託など基本的な金融商品について勉強をしたり、金融サービスを利用する側、つまり投資家として見た場合に、主な金融商品にどのようなメリットやデメリットがあるのかなども勉強します。
また、先生だけでなく、金融庁の出張授業も検討されているほか、生徒を教える先生にも金融教育のことを深く知ってもらうための施策がとられています。具体的には、学校の先生を対象に、投資商品における投資の効果や節税効果などの理解を深めてもらう取り組みを行っていく予定です。
高校で金融教育が導入される背景
2022年から高校に導入される金融教育には、自立する力を身につけることができるなどの効果が期待されています。ところで、なぜ日本の教育に金融教育が導入されることになったのでしょうか。
金融教育の導入の背景には、世界に比べて日本で金融教育が進んでいないことや、金融リテラシーが低い傾向にあることが挙げられます。
・金融教育が進んでいない
そもそも、他の国では金融教育が進んでおり、日本での遅れも指摘されていたことがあります。アメリカでは「自立を促す実践的な教育」として、1970年代から全国規模で経済教育が行われてきました。また、イギリスでは近年、学校教育の指針に金融教育を盛り込む取り組みが進んでいます。
対する日本では、そもそも金融を学ぶ場がないという指摘が前からありました。金融を学ぶ場がないため、金融リテラシーは低くなります。
・金融リテラシーが低い傾向にある
日本の教育に金融教育が導入されることになった大きな背景には、海外に比べて、日本の金融リテラシーが低い傾向にあるということが挙げられます。金融リテラシーとは、金融についての正しい知識があり、主体的に金融判断や行動を行うことができる能力のことです。
では、金融リテラシーが低いと、どのようなことが起こるのでしょうか。金融リテラシーが低いと、投資と投機の区別がつかなくなります。投資と投機はどちらも、お金を増やすために行うものですが、増やし方や期間が異なります。
増やし方や期間を理解せずに、資産運用をするということは、結婚やマイホームの購入、老後の生活など、人生のさまざまなシーンで必要になるお金の資金計画が立てられず、将来にわたって安定した生活を送ることが難しくなってしまうことになりかねません。
そこで、高校に金融教育が導入されることになりました。
金融教育の導入に合わせて今知っておきたい資産運用のこと
金融リテラシーは、子供だけでなく大人にも必要な能力です。ここでは、今こそ知っておきたい資産運用の基礎について見ていきましょう。
投資と投機の違いとは?
資産運用をする際に最も重要なことが、投資と投機の違いを理解することです。投資と投機では、資産運用する期間や特徴に次のような違いがあります。
・投資
投資とは、資産を長期的に運用し増やすことをいいます。長期的に運用を行うため、経済の成長とともに資産を増やしていくことができます。
投資の特徴としては、投機に比べてローリスク・ローリターンということです。長い期間にかけて資産を運用していくため、紛争や感染症の蔓延、大手企業の倒産などで一時的に生じる急激な値動きなどに左右されません。そのためリスクは低いです。
ただし、投機のような高いレバレッジ (口座に預けたお金を担保に、そのお金の数倍の取引ができる仕組み)がないため、投機に比べて短期間で大きな利益を生むこともできません。
また、ローリスク・ローリターンであるため、ライフスタイルに合わせた長期的な資金計画を立てるのに適しています。投資の代表的なものとして貯金や株、投資信託、iDeCo(イデコ)などがあります。
・投機
投機とは、資産を短期的に運用し増やすことをいいます。投機の特徴としては、投資に比べてハイリスク・ハイリターンであるということです。
投機は資産運用する期間が短いので、通常の運用方法であれば小さな利益しか得ることができません。そのため、レバレッジの設定を大きくすることで、少額でも大きな利益を得ることができる代わりに、大きな損失を被る危険性も高くなります。投機の代表的なものには、ギャンブル、FX、デイトレードなどがあります。
・投資と投機の違い
投資 | 投機 | |
---|---|---|
資産運用期間 | 長期 | 短期 |
特徴 | ローリスク・ローリターン | ハイリスク・ハイリターン |
金融商品例 | 貯金、株、投資信託、イデコなど | ギャンブル、FX、デイトレードなど |
代表的な資産運用方法
計画的に資産を増やしていくためには、投資をすることが重要です。投資の代表的なものには貯金、株、投資信託、iDeCo(イデコ)などがあります。
それぞれについて簡単に見ていきましょう。
・貯金
実は、貯金も資産運用の方法のひとつです。貯金は通常、銀行に現金を預金しますが、預金口座には、普通預金や定期預金、積立預金などさまざまな種類があります。
普通預金にくらべて、一定期間が経過しないと払い出しができない定期預金や、毎月積み立てをする積立預金のほうが、利率が高いです。より高い利率の預金に現金を預けることで、資金を長期的に増やすことができます。
・株
株取引とは、企業が発行している株を購入して、資産運用する方法です。保有している株の企業が利益を出せば、配当を受け取ることができます。また、株価が上昇すれば、売却益を得ることも可能です。
・投資信託
投資信託とは、証券会社などの投資のプロが、多くの投資家から集めた資金を運用し、運用益を投資金額に応じて投資家に分配するという投資商品です。少額から出資できることや、自分で運用する必要がないことから、投資の初心者に人気があります。
・iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは、自分で掛金を拠出し、自分で運用することができる私的年金の制度です。長期で運用し、60歳以降に給付金を受け取ることができます。毎月の掛金の金額を自分で設定できるので、無理なく資産運用をすることができます。
まとめ
日本では、昔に比べてさまざまな仕事や働き方が増えており、これからも多様性が求められていくことが予想されます。そこで、重要になるのが金融リテラシーを身に着けるための教育です。
2022年から高校で金融教育が導入されるように、子供だけでなく大人も、金融リテラシーは重要です。豊かな生活を送るためにも、投資と投機の違いなど、金融について正しい知識を身につけましょう。