切手や収入印紙、商品券やギフト券などを総称して「金券」と呼びます。個人事業主や法人が金券を購入した場合、金券を取得するために支出した金額は私的な場合を除き費用として計上することができます。今回は、金券の購入を節税対策に使うことは可能か?金券の正しい費用計上時期はいつか?について解説します。
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商品券を現金で購入したら「経費」として計上できる?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】|3分でわかる税金
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「金券」と「費用」の関係について解説
「金券」にはどのようなものがあるか?
領収書に貼る収入印紙や、御歳暮やお中元などで得意先に贈る商品券、郵送する際の切手など、事業では様々な金券を購入する機会があります。
一般的に「金券」と呼ばれるものを挙げてみましょう。
●郵便切手
●収入印紙、収入証紙
●商品券、ギフト券
「金券」はそれ自体は貨幣ではないものの、券面額と同等の金銭的価値を持つものとして広く認識されています。類似するものとして最近利用されることが多い「カタログギフト」も広い意味では「金券」に該当します。また、ウェブ上で音楽やコンテンツを購入することができる各種ギフトカードなども金銭的価値があるため「金券」に該当します。
金券を購入したときの会計処理
では「金券」を購入したときの会計処理について見ていきましょう。
例:収入印紙50,000円を現金で購入した。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
租税公課 50,000円 | 現 金 50,000円 |
収入印紙は印紙税ですから、勘定科目としては「租税公課」に該当します。費用として計上すべき時期については後述しますが、購入時には一旦全額を費用として計上します。
例:得意先に贈るためギフト券100,000円分を購入した。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
交 際 費 100,000円 | 現 金 100,000円 |
得意先に贈るギフト券については「交際費」という勘定科目で処理します。ギフト券についても収入印紙と同様に、購入時には一旦全額を費用として計上することになります。
なお、従業員に贈るギフト券を購入した場合は、従業員に対して金品を支給したものとみなされ「給与」として源泉課税しなければなりませんので注意してください。
「金券」を資産計上しなければならないケースとは?
購入した時点では費用とならない場合がある
このように「金券」は購入時において一旦費用として計上することになります。しかし税法の原則として、これらの「金券」は使用・消費した時点で費用計上しなければならないとされています。つまり未使用のままでは費用として計上することができないということです。
節税目的で決算日直前に大量の収入印紙を購入したとしましょう。購入した全ての収入印紙を決算日までに使い切れば全額を費用計上することができます。しかし、仮に一部(あるいは全部)が消費しきれず手元に残ってしまった場合、残った部分は費用計上できないことになります。
ギフト券についても同じ考え方をします。購入した後、得意先に渡した時点で使用・消費したと認識されますので、渡さず手元にある時点では交際費として費用計上することはできません。
「金券」は使ったときが費用計上時期であることを覚えておきましょう。
「金券」を資産計上する場合の会計処理
前述したとおり、切手や収入印紙、ギフト券などの「金券」が未使用の場合、未使用部分については費用計上することができません。
では、未使用部分がある場合の会計処理を例示してみます。
例:購入した収入印紙50,000円のうち10,000円分が決算日現在で未使用のまま残った。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
貯 蔵 品 50,000円 | 租税公課 50,000円 |
先の例では、購入時に一旦全額を費用として計上していました。しかし、そのうち10,000円は決算日現在で未使用となっていますので、このままでは費用計上することができません。そこで「貯蔵品」という資産勘定を相手科目にして「収入印紙」をマイナスする会計処理をしなければなりません。
「貯蔵品」や「商品在庫」「仕掛品」など、いわゆる「棚卸資産」は会計上、資産としての性質を持ちますが、同時に費用をマイナスする勘定科目でもあります。
例:得意先に贈るつもりで購入したギフト券100,000円分がそのまま手元に残っていた。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
貯 蔵 品 100,000円 | 交 際 費 100,000円 |
ギフト券も収入印紙と同様に、使用・消費した時点が費用計上時期となります。したがって渡していないのであれば、使用したとはいえませんので一旦全額費用したものを「貯蔵品」を相手科目としてマイナスしなければなりません。
「金券」を費用計上する際の注意点
キーワードは「経常的」「継続的」
「金券」の費用計上時期は原則として使用・消費した時点であることは解説しました。
しかし使用・消費が費用計上の時期なのであれば、金券だけにとどまらずコピー用紙や鉛筆といった消耗品も同様の考え方をしなければならないのでは?という問題が生じます。
決算日現在における未使用のコピー用紙一枚、鉛筆一本にいたるまで貯蔵品として正確にカウントすることができるかといえば実務的には難しいでしょう。
企業会計原則「重要性の原則 」の注釈では、消耗品等の取り扱いについて以下のような例外規定が設けられています。
「消耗品やその他の貯蔵品のうち重要性の乏しいものは、その買入時(又は払出時)に費用とすることができる」
ただし、この規定が適用できるのは「毎期一定額を経常的に購入していること」「一時の費用とする処理を毎期継続的に続けていること」が条件です。
例えば200円の収入印紙を毎月1シート(100枚)ずつ購入していたとしましょう。毎月一定数を経常的に「租税公課」として処理しているのであれば、経常的で継続的な会計処理として一時の費用として認められます。
決算直前の「まとめ買い」は注意が必要
では決算直前に「金券」を大量購入し一時の費用として処理した場合、どうなるでしょう?
結論から言えば「費用とすることはできない」が答えとなります。
先にも述べたとおり、「重要性の原則」注釈が求めるのは「経常的」「継続的」な会計処理です。通常であれば毎月1シートずつ購入しているところを、節税目的で仮に1ヶ月で100シート購入したのであれば「経常的」「継続的」から大きく逸脱しています。切手類や収入印紙が日常的に使用するものだとしても、購入サイクルや購入金額が大きく違いますので税務署に課税回避目的と認定されるのは明らかです。「貯蔵品」に計上し費用をマイナスしていませんので、否認されれば「貯蔵品計上漏れ」として追徴課税されることになります。
「金券」の購入時の仕訳と「貯蔵品」計上時の仕訳を合わせてみると理解しやすいでしょう。決算直前に購入した収入印紙が全て残っていたとします。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
租 税 公 課 50,000円
貯 蔵 品 50,000円 |
現 金 50,000円
租 税 公 課 50,000円 |
借方と貸方に計上した「租税公課」が同額になっています。つまり、一旦全額費用計上した収入印紙は「貯蔵品」として処理することで全額マイナスされます。プラスマイナス0ですから節税効果もゼロとなります。
「金券」を節税目的で購入しても利益を抑えることはできないと理解しておきましょう。
まとめ
現金主義の考え方からすれば、支出があった時に全額費用とすることに何の問題があるのか?という疑問を抱くかもしれません。しかし税法が求めるのは使用・消費したという事実関係です。「金券」の費用計上時期について正しく理解しましょう。