2022年10月、火災保険料の値上げが予定されており、10月1日以降、新たに結ぶ契約に適用されます。値上げの背景にあるのは「参考純率」の引き上げです。ここでは参考純率とは何か、また参考純率が引き上げられるのはなぜか解説します。
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2022年10月から火災保険料の引き上げ!理由は何故?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】
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火災保険料値上げの背景は参考純率の引き上げ
「参考純率」は火災保険料算出の目安
参考純率は、保険会社が個人向け火災保険の保険料を算出するために使う数字です。各損害保険会社でつくる損害保険料率算出機構が出しています。
火災保険の保険料を計算する際、保険料率という数字を使いますが、保険料率は「純保険料率」と「付加保険料率」で構成されています。
純保険料率とは、火災や自然災害などで損害が出たときに、保険会社が支払う保険金に使われる部分の保険料率です。一方、付加保険料率は保険会社が事業を行うために必要となる経費の部分の保険料率です。
参考純率は、厳密にいうと純保険料率の算出に使われる数字です。2021年6月に参考純率が全国平均で10.9%引き上げられ、2022年10月の新規契約分から適用されることになりました。
「全国平均で10.9%」という表現になっているのは、火災保険料は建物がある地域や築年数、建物の構造によって異なるからです。たとえば、築5年未満の鉄筋コンクリートのマンション(建物2,000万円、家財1,000万円の場合)について三大都市圏における参考純率の改定率を見ると、以下のようになります。
東京都 +1.7%
大阪府 +15.3%
愛知県 +4.5%
参考純率引き上げの背景は自然災害リスクの増加
参考純率が引き上げられることになった理由として、損害保険料率算出機構は「自然災害リスクの増加」と「築年数が古い住宅の増加」を挙げています。
ここ数年、日本は台風や豪雨による甚大な自然災害が多発し、火災保険の支払金も増加しています。たとえば、2018年度は7月の西日本豪雨や台風21号、24号の被害により、計1兆3,578億円の保険金が支払われています。さらに、2019年度には台風15号、台風19号、10月25日の大雨により、支払保険金は計9,150億円にのぼりました。
じつは、2017年から2018年に大規模な自然災害が発生したことを受け、2019年10月にも参考純率が平均4.9%引き上げられました。しかし、その後も自然災害の発生は増え、今回の参考純率引き上げとなったのです。
参考純率引き上げのもう一つの理由は、築年数が古い住宅の増加です。古い住宅は災害の被害に遭うリスクが高くなっています。住宅全体に占める築年数の古い住宅の割合が増加しており、今後も増加傾向が続くことから、保険会社が支払う保険料も増えると見込まれています。
火災保険の長期契約期間が最大10年から5年へ
参考純率の引き上げと合わせ、火災保険の長期契約期間が最大10年から5年に短縮されます。長期契約を結ぶほど、保険料は割安になりますが、その期間が短縮されることで「お得感」が少なくなります。
参考純率適用期間の短縮で長期契約のメリット低下
「火災保険の長期契約期間が最大10年から5年に短縮される」という話は、正確にいえば「参考純率の適用期間が最長10年から5年に短縮される」ということです。参考純率の適用期間短縮に合わせ、各保険会社は長期契約期間を短縮します。
火災保険は契約期間が長くなるほど保険料が割安になりますが、最大契約可能期間が短縮されると、そのメリットが少なくなります。住宅を所有している限り、火災保険は契約期間が満期を迎えるごとに更新する必要があり、これまで10年に一度の更新期間が5年に一度になると、10年間で支払う保険料は後者のほうが割高になります。
また、今回のような参考純率の引き上げなど火災保険の改定が行われた場合、長期契約者がその影響を受けるのは次回の更新時です。契約期間が短いほど、改定決定時から実際に影響を受けるまでのタイムラグが短くなります。少しでも早く改定を保険料に反映させたい保険会社にとっては、契約期間が短いほうが望ましいといえます。
短縮の背景は自然災害の長期的リスク評価の難しさ
最大契約期間の短縮の背景にも、自然災害の頻発があります。保険料は自然災害がどれぐらい発生するか予測したうえで決定しますが、近年は自然災害が頻発し、長期間での災害リスクを予測することが難しくなっています。参考純率の最長適用期間を10年にしていると、大きな災害が頻発した場合に火災保険の収支が悪化する可能性があるため、最長適用期間を短縮する必要があります。
水漏れなどに対する家財補償の自己負担額引き上げ
参考純率の引き上げ、最長契約期間の短縮と合わせ、もう一つ改定される事項があります。水漏れなどに対する家財補償の自己負担額の引き上げです。
現在、各保険会社は家財補償について「免責金額」を設定しています。保険金が支払われる事故・災害であっても、契約者が自己負担しなければならない金額のことで、現在は保険会社によって0~1万円の自己負担額があります。金額は火災や落雷、水災、水漏れ、破損など被害の原因によって異なります。被害額が自己負担額以下の場合は、保険金が請求できません。
2022年10月1日契約分以降、水漏れや破損・汚損を原因とする場合の自己負担額が5万円に引き上げられます。火災や落雷、水災といった自然災害にかかわる自己負担額は値上げされませんが、水道管の破裂が原因で家具が水浸しになったり、不注意でテレビが破損したりといったケースでは自己負担額が引き上げられます。
家財補償の自己負担額引き上げの背景には、近年は数万円単位の家財補償請求が増えており、保険会社にとっては支払い手続きの事務作業が負担になっていることが挙げられます。
保険会社にとって、もともと家財補償は家屋の補償のオプション的な位置づけでした。しかし、パソコンやテレビなど、デジタル家電が高性能化し、補償請求が増えると、加入促進の効果よりも負担のほうが大きくなっていることも、自己負担額引き上げの一因です。
保険料の引き上げ対処法
2022年10月、火災保険の保険料が値上げされます。現在、火災保険を契約中の人は次回の更新時には保険料が上がります。次回の更新に備え、保険料の引き上げに対応できる方法をご紹介します。まずは現在、加入している火災保険の契約内容を確認しましょう。
- 改定前に長期契約を結ぶ
- 必要な補償内容か吟味する
- 複数の火災保険の見積もりをする
2022年10月に満期が近い人、または保険の見直しを考えている人は、改定までに新たに10年契約を結ぶとよいでしょう。改定の影響を受けるのは10月以降、新規で契約を結ぶタイミングです。改定前に10年の契約を結べば、保険料の値上げの影響を受けるタイミングを遅らせられます。
建物の立地や現在の環境に補償内容がふさわしいかチェックし、必要なものを加えたり不要なものを取ったりしましょう。マンションの高層階なのに水害補償が入っている、あるいは10数年前に契約した時のまま、補償内容をまったく変えていないといったことがあります。
現在のご自身の生活スタイルや近年の自然災害の多さなどを考慮し、補償内容を最適化する必要があります。
保険料の引き上げは建物の立地や構造などによって異なります。さらに、保険会社によっても差があります。複数社の火災保険について、保険料改定前後の保険料の見積もりを行い、保険の見直しのタイミングや、どの保険会社にすればよいか見極めましょう。
まとめ
2022年10月、火災保険は「保険料の引き上げ」「最長契約期間の短縮」「家財補償の自己負担額の引き上げ」という3つの改定が行われます。近年、自然災害が多くなり、保険料の支払いが増えていることが保険会社の経営を圧迫し、保険料の引き上げは致し方ない部分があるといえます。
保険料の引き上げは今後も続くとみられます。契約者も保険に加入したあとも、定期的に契約内容などを確認し、必要に応じて保険の見直しを行いましょう。
▼参照サイト
火災保険参考純率改定のご案内【損害保険料率算出機構】
平成30年7月豪雨にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
平成30年台風21号にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
平成30年台風24号にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
令和元年台風15号(令和元年房総半島台風)にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
令和元年台風19号(令和元年東日本台風)にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
令和元年10月25日の大雨にかかる支払保険金(見込含む)年度末調査結果【日本損害補保証協会】
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