子どもの医療費助成制度!いくつまで無料になるかは自治体で異なる!? | MONEYIZM
 

子どもの医療費助成制度!いくつまで無料になるかは自治体で異なる!?

日本では、国民皆保険制度により、病院などに支払う直接の負担分は1〜3割です。さらに、国をはじめ都道府県、市区町村には、直接支払う負担を減らす医療費助成制度があります。
この記事では、東京の高校生の医療費無料化の例から子どもの医療費助成制度について考えます。

子どもの医療費助成制度とは?

東京都の子どもへの医療費助成制度

医療費無料化のためのさまざまな助成制度があります。
対象となる範囲が病気である場合、その人の家庭環境による場合、その人の年齢による場合などによって細やかな制度が設けられています。
本記事では対象となる年齢にスポットを当て、「子ども」の医療に係わる助成制度を取り上げます。
 

一例として東京都の子どもの医療助成制度を見てみましょう。
現在、東京都の実施する子どもの医療費助成制度には次のようなものがあります。
 

18歳未満の方で身体障害のある方への医療(自立支援医療) 児童養護施設等へ入所している児童への医療
18歳未満の方への結核医療 一時保護所へ入所している児童への医療
未熟児医療 里親に養育されている児童への医療
乳幼児医療 障害児入所施設へ措置入所している方への医療
義務教育就学児医療 医療型障害児入所施設等へ契約入所している方への医療
小児慢性疾患に対する医療 小児精神病入院医療

これらにさらに追加すべく、2023年度より高校生の医療費の無料化が実施されることになりました。

まず、東京23区においては、令和4年6月、特別区長会において次の発表がありました。
➢ 子育て世帯への所得制限は設けない。
東京都は所得制限をつけての助成であるものの、各区は独自に医療費を負担する。
➢ すべての高校生を対象とする。
➢ 通院1回につき上限200円の自己負担額も各区が助成する。
 

また、23区以外の東京の市町村においても順次調整中のようで、すでに「高校生等医療費助成制度」として市のホームページで紹介している三鷹市のように公表済みの市もあります。

住みやすい街?子どもの医療費助成制度とは?

少子化対策の観点からも、子育てをする世帯への負担を軽減する子どもの医療費助成制度は、全都道府県、全市町村で実施されています。
しかし、子どもの医療費助成制度は国で統一的な制度となっているのではなく、都道府県、市町村ごとに制度が異なっているのが現状です。
 

よくネット上のアンケート結果のランキングで、「住みやすい街」や「子育てのしやすい街」などを見かけますが、子どものいる家庭において、引越し先の子どもの医療費助成制度は要チェック事項のひとつと言えます。
さまざまなランキングがありますが、その中の選定基準として「子ども医療費助成について、対象となる子どもの年齢や所得制限の有無」などが考慮されているものもあります。
高校生までを助成の範囲に入れている市町村であれば、安心して子育てができるといえそうです。
さらに、子どもの医療費助成制度について詳細を見ていきましょう。

自治体によって異なる子どもの医療費助成制度

子どもの医療費の負担割合とは?

国の医療制度において、原則として子どもの医療費の負担割合は下のようになっています。
➢ 義務教育就学前の子ども 2割負担
➢ 義務教育中の子ども 3割負担

従来、国は自治体が実施する医療費助成制度により、窓口負担金が軽減されると、国が負担する医療費が増加することから、自治体の制度により波及的に増加した医療費はその自治体の負担としていました。
すなわち、自治体の独自制度については、市区町村が運営する国民健康保険の国庫負担を減額する措置を取っていたのです。
 

【国保における公費負担の減額調整イメージ】

しかし、平成30年度からは義務教育就学前の子どもについては、国の対策として国庫負担に係る減額調整措置を行わないことにしました。
これによって、自治体は就学前の子どもに対する医療費助成が以前よりは、やりやすくはなりました。
 

次に、自治体による子どもの医療費助成制度を見てみましょう。

自治体の中における子どもの医療助成制度の違い

現状では、国の医療費助成制度に加え、自治体それぞれの医療費助成制度があるわけですが、さらに都道府県と市区町村においても子どもの医療費助成制度に違いがあります。
 

下の表は群馬県における子どもの医療費助成制度の一部です。
群馬県としては補助対象の基準を中学校卒業までの子どもとしていますが、見てわかるとおり、県の制度と市の制度を同じとしているところと、市独自の制度を設けているところがあります。
 

さらには、支給方法においても現物支給(自己負担額を支払わなくてよい方法)と、償還(病院窓口では自己負担額を支払い、後で助成分の償還を受ける方法)などさまざまです。

子どもの医療費助成制度により安心して子育てができることで、その地域に「若い世代の定住」を呼び込むこととなり、自治体においては重要な政策と言えます。

統計から見る子どもの医療費助成制度 厚生労働省のデータより

都道府県における医療費助成制度

子どもの貧困という問題が深刻になる中で、子どもの医療費無償化の位置づけは重要になってきます。
ここで、令和2年度に厚生労働省が調査した結果をもとに、実際の都道府県における子どもの医療費助成制度について見ていきましょう。
 

この調査は、令和2年4月1日現在におけるすべての都道府県及び市区町村の乳幼児等に係る医療費の援助について調べたものです。その後、見直しが行われている地域もありますが、全体の傾向を見るにはよい資料と言えます。調査は通院と入院について分けられていますが、利用頻度の多い通院について見ていきます。
 

まずは、47都道府県について見ると年齢によりバラつきがあることがわかります。
就学前までの子どもを対象としている道府県が25あり、全体の約半数となりますが、義務教育までをカバーしているのは10県となります。
 

【通院】乳幼児等医療費援助の対象となる年齢
4歳未満 富山、石川、熊本の3県
5歳未満 山梨
就学前 北海道、青森、岩手、宮城、埼玉、神奈川、長野、岐阜、愛知 滋賀、大阪、和歌山、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、 高知、佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の25道府県
9歳未満 山形、千葉、福井の3県
12歳未満 茨城、栃木、三重、福岡の4県
15歳未満 秋田、群馬、東京、京都、兵庫、奈良、徳島の7県
18歳未満 福島、静岡、鳥取の3県
その他 新潟(交付金化により、対象年齢の規定なし)

また、医療費無償化において所得制限を設けていない府県は、以下の19県でした。
山形、栃木、群馬、新潟、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、滋賀、京都、鳥取、島根、愛媛、佐賀、長崎、大分、沖縄
 

都道府県の制度をベースに市区町村の制度があるわけですが、地域により差があることがよくわかります。

市町村における医療費助成制度

上記の都道府県で設けられた基準があっても、さらに市区町村において手厚く助成制度がある場合にはもちろん、後者が優先となります。
次に、市区町村について見ると次のようになっており、都道府県で多かった就学前までの医療費無償化は全体の約3%に留まり、15歳までが約50%、18歳までが約42%と分布の幅が狭くなっていることがわかります。
 

【通院】乳幼児等医療費援助の対象となる年齢
就学前まで 56自治体
9歳年度末まで 10自治体
12歳年度末まで 66自治体
15歳年度末まで 873自治体
18歳年度末まで 733自治体
20歳年度末まで 2自治体
22歳年度末まで 1自治体

特記すべきは、0歳から満22歳到達後最初の3月31日までの医療費をカバーしている北海道南富良野町です。保護者が町内に居住しておれば、対象となる子どもが高校や大学進学で町外に転出した場合であっても対象となるなど非常に手厚い制度が設けられています。

まとめ

子どもの医療費助成制度だけではありませんが、本来は国内のどの地域に住んでいても同じような制度を受けられるのが理想です。
一方で、子どもの医療費無料化をはじめ医療費助成制度がその地域の活性化に一役買っている現状もあります。しばらくは、他の制度とのバランスや実効果を考えつつ、様子を伺うといったところでしょう。
 

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
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