予期せぬ病気やケガにより医療費がかさみ、「病院代が払えない」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。
窓口ではクレジットカードや後払いの決済サービスを使う、分割払いを交渉するといった方法でその場を切り抜けられる可能性があります。
また、医療費は公的な制度が整備されていますので適用される場合は負担が軽減できます。まずは制度を知っておくことが重要です。
今回は。病院代が払えない時の窓口での対処法、医療費・入院費の目安、医療費の自己負担をおさえる公的制度7つなどを解説していきます。
病院代が払えない!窓口での対処法とは
クレジットカードを使う
窓口で初診料もしくは再診料、手術費用などが払えない場合はクレジットカードを利用し後払いにするという方法があります。
ただし、クレジットカードに対応している病院でのみこの方法が利用できます。
加えてクレジットカードの引き落としまでにお金を工面しなければいけません。
○○ペイなど、後払いできる決済サービスに対応しているクリニック・病院では決済サービスも利用可能でその場の支払いを後払いにできます。
分割払いの相談をする
医療機関の窓口で、手持ちのお金がないことを説明し分割払いを交渉してみましょう。
医療機関によっては、事前にソーシャルワーカーに相談することも可能です。
医療費・入院費の目安とは
医療費の平均
厚生労働省の「2022年度 医療費の動向」によると、2022年度の1人当たりの医療費は以下の通りです。
出典:厚生労働省「2022年度 医療費の動向」
なお、医療費は年齢とともに高くなる傾向があります。
70歳代までは入院外と調剤薬局といった外来による医療費割合が高いですが、80歳代になると入院(入院+食事療養)の割合が高くなります。
出典:厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(2019年度)(医療保険制度分)」
医療費の一部負担(自己負担)割合は、0歳から小学校入学前までは2割負担、小学校入学後から70歳までは原則3割負担です。
出典:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
70歳以降になると所得によって負担割合が変わり、現役並の所得者は3割負担、一般・低所得者は70~74歳(2014年4月以降70歳となる者)は2割負担、75歳以上の者は1割負担です。
74歳未満の方は国民健康保険を含む健康保険組合に加入し、75歳以上になると後期高齢者後期高齢者医療制度に加入します。
入院時の自己負担費用、いくらかかる?
公益財団法人生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」によると、直近の入院時の自己負担費用(治療費・食事代・差額ベッド代、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)、衣類、日用品など)の平均は 19.8 万円です。
出典:生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」
入院期間が長くなると、自己負担費用も高くなり入院日数「61 日以上」は平均 75.9 万円です。
入院により収入が失われた人は17.4%に上る
同調査では、入院したことにより失われた収入(逸失収入)が「ある」と回答した人は17.4%に上ります。
年齢別に見ると40代では26.3%と割合が高くなっています。
逸失収入の平均は30.2万円です。
出典:生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」
なお、過去5年間に入院経験がある人の自己負担費用と逸失収入の総額の平均は 26.8 万円となっています。
特に個人事業主・自営業者は、傷病手当金のような怪我や病気になった際の公的な補償制度がありません。
医療費に加えてその後の生活にも支障が出てしまいますので、いざという時のお金を多めに準備しておきましょう。
医療費の自己負担をおさえる公的制度7つ
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療費の家計負担の軽減を目的として設けられた制度です。
医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1カ月で上限額を超えた場合に、超えた部分の金額を支給する制度です。
上限額は、年齢や所得に応じて定められています。69歳以下の方の上限額を見てみましょう。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
例えば年収370万円以下の方が1カ月に10万円の医療費を窓口で支払った場合、負担額10万円から上限額57,600円を差し引いた42,400円が支給されます。
同一人物の複数回の受診、もしくは同じ世帯におり同一の医療保険に加入している方が窓口で支払った自己負担額を1カ月単位で合算する「世帯合算」、過去12カ月以内に3回以上、上限額に達すると4回目から「多数回」該当となり上限額が下がる「多数回該当」という軽減措置もあります。
事前に健康保険限度額適用認定証を取得することで、窓口での支払いが上限額までになる
高額療養費制度は、自己負担限度額以上になった場合でも一度窓口でお金を支払う必要がありましたが、健康保険限度額適用認定証を取得することで限度額を超える分を窓口で支払う必要はなくなります。
出典:厚生労働省「高額な外来診療を受ける皆さまへ」
70歳未満の方、70歳以上の非課税世帯の方はあらかじめ健康保険組合に限度額適用認定証の交付を申請します。
70歳以上75歳未満で非課税世帯ではない方、75歳以上で非課税世帯ではない方は申請の必要はありません。高齢受給者証もしくは後期高齢者医療被保険者証を窓口で提出することで、支払いが上限額までとなります。
高額療養費貸付制度
高額療養費貸付制度は、多くの健康保険組合で設けられている制度です。
高額療養費制度では支払った医療費が、一定の上限額を超えた場合に申請を経て超えた部分が支給されます。決定までにおよそ3カ月かかりますので、手持ちのお金が少ない方にとっては困難な状況に陥ってしまいます。
例えば全国健康保険協会(協会けんぽ)では、当座の医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込み額の8割相当額を無利子で貸し付けます。
傷病手当金
傷病手当金は、被保険者が病気・けがにより就業できず事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
会社を休んだ日が連続して3日間あり、4日目以降から支給されます。 事業主から給与が支払われる際には、傷病手当金は支給されませんが、給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。
支給期間は、同一の疾病・負傷に関して、支給開始日から1年6カ月以内で、支給額は給与のおよそ3分の2に相当する金額です。
なお国民健康保険には、傷病手当金制度がありません。
一部負担金減免・徴収猶予制度
震災、風水害、火災などの自然災害の被害に遭った、世帯主(または主たる生計維持者)が事業の休廃止、失業などにより収入が著しく減少したなどの事由があり一部負担金の支払いが困難である際には、一部負担金の減額・免除・猶予ができることがあります。
国民健康保険を含めた健康保険組合に申請すると、審査が行われ決定が下されます。
気になる方は自身が加入する健康保険組合に確認してみましょう。
無料低額診療事業
無料低額診療事業とは低所得者・要保護者・ホームレスなどの生計困難者が必要な医療を受けられるように、無料または低額な料金で診療を行う事業です。
無料低額診療事業を行っている医療機関もしくは福祉事務所・社会福祉協議会に相談し、審査により必要であると認められた方は利用が可能です。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は低所得者・高齢者・障害者などで、一時的に資金が必要な方に対して社会福祉協議会が資金の貸し付けなどを行う制度です。
生活費を貸し付ける総合支援資金・病気の療養費や介護サービス・障害者サービスを受けるために必要な経費を貸す福祉資金・低所得者世帯の子どものための教育支援資金などがあります。
手続きの窓口は、社会福祉協会です。
医療費が足りなくなる前に備えを
「窓口で医療費が払えない」という事態を回避するために、いざという時のお金を準備することをおすすめします。
個人事業主・自営業者の方は傷病手当金が受給できないため、6カ月〜1年程度の生活費の貯蓄を心がけましょう。
会社員・公務員の方も最低3カ月分の生活費は貯金しておきましょう。
まとめ
医療費にお困りの方は、この記事を参考に窓口での対処法や費用負担をおさえられる公的制度などをおさえておきましょう。