今年の確定申告の時期は、2月16日から3月15日です。この確定申告に、政府が運営する「マイナポータル」が活用できることをご存知でしょうか? これと連携させることで、年間の医療費や生命保険料の控除証明書などのデータを取得し、確定申告書に自動入力することができるのです。どんなデータが取得できるのか、利用には何が必要なのかを中心に解説します。
マイナポータルとは?
政府が運営する自分専用のサイト
マイナポータルは、2017年11月13日から運用が開始された政府が運営するオンラインサービスです。子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関からの通知を確認できたりする、国民一人ひとりの専用サイトといえるでしょう。
利用に際しては、スマートフォンやパソコンから、マイナンバーカードでログインします。
提供されるサービス
具体的には、次のようなサービスが利用できます。(●=例)
(1)行政手続きの検索・電子申請:地方公共団体が提供している行政機関の手続きを検索したり、オンライン申請したりすることができる
- 年金の免除・猶予申請
- 住んでいる市町村への子育て、介護などの申請
(2)自己表示(「わたしの情報」):行政機関などが持っている自分の特定個人情報が確認できる
- 所得・地方税、医療費通知情報
- 健康保険証情報
- 公的年金の年金資格記録情報、年金支払額や振込予定日などの給付情報
- 児童手当の支払額・支給年月などの情報
- 本人の住民票記録情報
(3)お知らせ:行政機関などから配信される通知、各種証明書などを確認できる
(4)情報提供などの記録表示(やりとり履歴):情報提供ネットワークシステムを通じた住民の情報のやり取りの記録を確認できる
(5)マイナポータル連携:外部サイトを登録することで、マイナポータルから外部サイトへのログインが可能になる
- 国税庁「国税電子申告・納税システム」(e-Tax)と連携して確定申告
- 日本年金機構「ねんきんネット」で年金に関する情報を確認
今回は、(5)のe-Taxと連携した確定申告について説明します。
確定申告にマイナポータルを活用
控除のためのデータが一括で取得できる
【ビスカス公式YouTubeチャンネル】マイナポータルで時短確定申告!より
確定申告でマイナポータルを通じてできることは、医療費控除をはじめとする控除の証明書のデータの取得です。「控除」とは、税の申告の際、経費とは別に、認められている特定の出費を所得から差し引くことをいいます。これを確実に行うことで、所得税の納税額を抑えることができます。
例えば、医療費控除では、申告する本人やその人と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費がある場合、次のように計算した金額を所得金額から差し引くことができます。
A:保険金などで補填された金額
B:10万円(所得合計金額が200万円までの人は、「所得合計金額×5%」)
医療費控除を受けるためには、「医療費控除の明細書」を、所得税の確定申告書に添付する必要があります。
マイナポータルの連携機能を利用すれば、そこに記録された所得控除に関連するデータを取得し、申告書類へ自動的に入力することができます。これまで、1件ごとに紙媒体から確定申告機能の各ステップに転記していたものが自動入力されるので、スピーディーかつ正確な申告が期待できるのです。
医療費控除については、「医療費控除はいつまで申請できる?医療費控除の内容や申請期間を解説 」をご覧ください。
取得できるデータ一覧
マイナポータル連携で取得できるデータには、次のようなものがあります。
①医療費控除(医療費通知情報)
毎年2月上旬以降に取得ができます。原則として、保険診療分の情報を取得できますが、薬局での医薬品購入などは、情報取得の対象になりません。
事前にマイナポータルで代理人の設定を行うことにより、申告に含めることが可能な家族の医療費通知情報をマイナポータル連携で取得することができます。代理人の設定を行う際には、申告する本人と家族のマイナンバーカードが必要になります。また、家族がマイナポータルを開設していることが条件です。
②ふるさと納税(寄附金受領証明書・寄附金控除に関する証明書)
③生命保険料控除(生命保険料控除証明書)
④地震保険料控除(地震保険料控除証明書)
⑤住宅ローン控除(ア:年末残高等証明書/イ:住宅借入金等特別控除証明書)
イは、データでの交付を希望する人に限ります。例年10月下旬頃から取得できます。
なお、②~⑤のアは、契約している保険会社等(控除証明書等の発行主体)がマイナポータル連携に対応していることが必要です。
⑥株式等に係る譲渡所得等(特定口座年間取引報告書)
契約している証券会社等(控除証明書等の発行主体)が、マイナポータル連携に対応していることが必要です。
確定申告にマイナポータルを利用する流れ
利用のためにはどのような手続き(操作)が必要になるのか、説明します。
準備に必要なのは?
①マイナンバーカードの取得
確定申告にマイナポータルを利用するためには、マイナンバーカードを持っている必要があります。マイナンバーカードは、スマートフォン・パソコン・証明用写真機・郵送のいずれかで申請することができます。また、2021年1月からは、カード未取得の人を対象に、QRコード付きの「マイナンバーカード交付申請書」が発送されていますから、そのコードをスマホで読み取ることで、比較的容易に申請を行うことができるようになりました。
②マイナンバーカードとパスワード
- 利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)
- 署名用電子証明書のパスワード(英数字6文字~16文字)
③マイナンバーカードの読取機能のあるスマートフォンまたはICカードリーダライタ
マイナポータル連携を利用するには事前設定が必要
確定申告にマイナポータル連携を利用するためには、事前設定が必要です。この事前設定は、初めて利用する1回目のみで、次回からは原則として設定不要です。
事前設定については、マイナポータルに設定方法の案内をする専用ページ(確定申告 | マイナポータル)が開設されています。画面の案内に沿って進めることで、設定を完了することができます。
以下に設定手順の概要をまとめます。
事前設定の手順
確定申告の事前準備のため、以下の5つの手順を進めます。
【手順1】加入している保険会社等がマイナポータル連携に対応しているか確認する
契約中の保険会社等が対象になっているか、「マイナポータル連携可能な控除証明書等発行主体一覧|国税庁」をご覧ください。
【手順2】取得したい証明書等を選択する
マイナポータル連携・自動入力の対象となる控除証明書等は、下記の通りです。
- 医療費通知情報
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 保険料控除証明書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 寄附金受領証明書・寄附金控除に関する証明書
- 特定口座年間取引報告書
- 公的年金等の源泉徴収票
【手順3】保険会社等が対応している民間送達サービス(「e-私書箱」など)を選択して連携する
【手順4】連携した民間送達サービスから保険会社等の利用設定をする
【手順5】e-Tax(マイナンバーカード方式)で確定申告する
マイナポータル連携に対応している会計ソフトや、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から確定申告書の作成を開始し、確定申告書を作成する手順に沿ってマイナポータルと連携して、控除証明書などを取得します。
手順の詳細については、各会計ソフトや確定申告書等作成コーナーを参照してください。
確定申告にマイナポータルを利用するメリットと注意点
マイナポータルを使うことで、これまでよりも簡単に確定申告を行うことができるようになります。申告書に控除証明書などの金額を手書きや手入力する必要はなく、書類データを一括で取得し、各種申告書へ自動入力ができるため、手間や時間を大幅に削減できるだけでなく、金額の転記ミスなどを防ぐことができます。
居ながらにして各種の証明書類を入手できるので、例えば生命保険会社から証明書がいつ届くのかやきもきしたり、申告書作成時に見当たらず慌てたり、といった必要もなくなるでしょう。
注意点としては、「取得できるデータ」のところでも述べたように、生命保険会社など証明書発行者のすべてがマイナポータルと連携しているわけではないことが挙げられます。また、証明書発行者によっては、連携の設定からデータ発行まで、数日を要する場合があります。
マイナンバーカードを利用してデータを取得しますが、マイナンバーそのものを使うわけではないので、番号が流出したりする恐れはありません。ただし、常に悪用のリスクにさらされているのは、他のネット情報と同じです。パスワードやマイナンバーの管理は、自己責任でしっかりと行いましょう。
まとめ
マイナポータルでは、オンラインでの行政手続きや、特定個人情報の確認などができるだけでなく、確定申告に必要な控除証明書のデータを取得し、申告書に自動入力することができます。パスワードの管理などを徹底したうえで、賢く使ってみましょう。
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