2023年も値上げラッシュ⁈「何」が「なぜ」値上げされるのかを解説 | MONEYIZM
 

2023年も値上げラッシュ⁈「何」が「なぜ」値上げされるのかを解説

2022年後半から、堰を切ったようにあらゆる方面で価格の引き上げが行われています。2023年も値上げの波はまだ収まりそうにありません。
今年はこれからどんな商品が値上げされるのか、その理由は何か、今後の展望や値上げに対し家庭でできる対策はないのかなどを以下に解説します。

値上げラッシュには複数の要因がある

日本も2020年に始まったコロナ禍による経済の低迷からようやく抜け出しつつありますが、ここにきての値上げラッシュが向かい風にならないか懸念されています。
なぜ今値上げの波が押し寄せてきているかについての理由は複数ありますが、主なものは以下の2つです。

円安により原材料の輸入コストが上がった

コロナ禍において、米ドルに対する円のレートはじりじりと円安に進んでいたものの、2021年は1月に104円台だった円相場が115円台で着地したように比較的ゆっくりした値動きでした。
ところが2022年に入ると、ロシアのウクライナ侵攻という有事によるドル買いとアメリカFRBの金融引き締め策が重なりドルの価格が急上昇し、10月にはついに1ドルが151円台となりました。
つまり、1年の間に単純計算で35%以上輸入コストが上昇したことになります。
これは食料品や工業製品などで原材料を輸入に頼っている業種にとって企業努力だけではどうしようもないレベルであり、値上げはやむを得ないといえるでしょう。
その後円高に移行し、現在(2023年2月)は1ドル=130円前後で推移していますが、それでも2021年と比較すればまだドル高であることは変わりません。先行きが見えないこともあり、今年も輸入コストが高い状態が続くでしょう。

原油高による生産コストの上昇

ロシアによるウクライナ侵攻は、ドル高以外にもさまざまな影響を世界中に及ぼしています。その一つが原油高です。原油の需要が増えてきていた時期に、有事により供給が不安定になり2022年に値段が急騰しました。
日本は原油をほぼ100%輸入に頼っており、エネルギーコストの上昇はあらゆるものの価格に影響を及ぼします。直接的には電気料金やガソリン代の値上げがありますが、原油高により物流コストやものを作る機械を動かすコストなども当然に上昇するため、それらを商品やサービスの価格に上乗せせざるを得ない状況となるのです。
 

また、「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれるウクライナの現状は小麦価格に大打撃を与えています。日本はウクライナからほとんど小麦を輸入していませんが、世界的な需要と供給のバランスが崩れており、結果として主な輸入先であるアメリカやカナダの小麦価格まで高騰してしまうのです。

2023年に値上げが予定されている主な品目は?

2023年も前述の状況に明るい展望はあまり見出せそうにありません。したがって今年2023年も値上げラッシュは止まらず、既に値上げが予定されている品目もかなりの数にのぼっています。

気になる食品分野は2022年以上の品目が値上げ

2022年は、食品分野の値上げが累計2万品目を超えました。特に10月の値上げは6699品目と極端に多く、対ドルで最も円安となった時期と重なっています。
明けて2023年は、既に値上げが決まった品目だけでも4000品目以上となっており、2022年以上のペースで値上げが進みそうです。値上げの時期は2月が今のところ突出しています。

中でも多いのが、冷凍食品や缶詰といった加工食品の3798品目です。原料高に加え、生産や物流のコスト高が追い打ちをかけている形です。
砂糖・食用油や大豆の輸入価格上昇により、調味料と菓子の値上げも引き続き多くの品目で行われます。酒類・飲料についても下記の表によれば1442品目での値上げが予定されています。酒類に関しては、ワインなど直輸入している品目の値上げが多く見られます。
品目数はもちろんですが、注目すべきは「値上げ率の高さ」です。前年度と比較すると調味料で4ポイント、小麦・砂糖類に至っては8ポイントも値上げ率が上がっています。いくつかの値上げ要因が今年に入って益々表面化してきたことが伺われます。
2023年に値上げされる中には再値上げ、再々値上げされる品目も多く含まれています。また、値段は据え置いたまま容量を減らす、いわゆる「ステルス値上げ」も多く、家計への影響は図りしれません。

光熱費は2月以降「補助」によって値下がりする?

2023年1月の電気代やガス代の明細を見て、あまりの料金の高さに驚いた人も多いのではないでしょうか。そしてこれらの公共料金は今後さらなる値上げが予測(既に各電力会社は春以降の値上げにつき発表)されています。
この状況を受け、政府は国民の負担を軽減するべく「電気・ガス価格激変緩和対策事業(以下「本事業」)」の実施を発表しました。
本事業は、政府の総合経済対策の一環として実施され、具体的には2023年1月使用分(2月検針分)から電気代・ガス代が約2割値引きされるというものです。詳細な値引き額は下の表をご参照ください。

 

本事業の補助は、電気は原則一般家庭、企業共に対象となりますが、ガスは都市ガス年間契約量1000万㎥未満の一般家庭、企業が対象となります。残念ながらプロパンガス使用者は対象外です。
本事業は各電力・都市ガスの小売事業者が国に補助を申請し、国から得た補助金により利用者の料金を値引きする形をとるため、利用者が何らかの申請を行う必要はありません。自動的に2月の検針分から補助による値引きが実施されます。
ただし、今のところ本事業は9月使用分までの暫定的処置となっています。
また、ここまでの値上げ幅が大きいため、我々利用側にとっては「値下げ」というより「値上げが少しましになった」くらいの実感となりそうです。

値上げ対策にはどのようなものがある?

1月は全国的に大寒波が居座ったこともあり、電気やガスの使用を大幅に控えることは場合によっては命に関わります。
値上げラッシュに対しどのような対策が取れそうか、現実的なところを探ってみましょう。

賃上げにどれくらい期待できるか

日本は長く、「不景気で給料が減る」→「節約でお金を使わなくなる」→「売上減」→「不景気」というデフレスパイラルに陥っており、欧米諸国などと比べ、これまで値上げ幅も賃上げ幅も鈍い状態が続いていました。
しかしこの値上げラッシュに、政府もようやく危機感を持ち始め、産業界に構造的な賃上げを求めるようになりました。
2023年になって、ファーストリテイリングが社員の給与を最大40%引き上げるという思いきった方針を表明し、他にもインフレ率を上回る形での賃上げや初任給の引き上げを表明した企業が少なからず出てきています。
また春闘では「5%の賃上げ」がポイントとなっていますが、日本経済を下支えしている中小企業に、大手企業の賃上げの動きをそのまま反映させられるかは未知数です。

生活で見直せるところをチェック

先述したように、食費や光熱費を極端に切り詰めるなどの節約で身体を壊してしまっては元も子もありません。
例えばこの機会に、これまで特に気にせず放っておいた住宅ローンの乗換えや電気事業者、携帯電話事業者の変更などを検討してみるのも一案です。
また、米や供給が安定している国産の野菜など前年より安価で手に入る食料品をしっかりチェックする、食品を買い込み過ぎない、こまめな消灯を心がけるなどの節約は積極的に行いましょう。

さまざまな「控除」を忘れず節税を

例えば、これまでこちらのサイトで紹介してきたiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA、ふるさと納税などをこの機会に始めてみてはいかがでしょうか。
投資信託であれば売買益や配当に対して通常かかる税金がNISA口座なら非課税になりますし、老後資金を貯めるのが主目的であればiDeCoで掛金を所得控除することができます。
また、給与所得者であっても、仕事に関連するといえる項目で一定額以上の自己負担をしていれば、特定支出控除が受けられます。通勤費や転居費、資格取得費などが対象となっています。
 

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まとめ

複数の要因が絡まり合い始まった値上げラッシュは家計に深刻な打撃を与えています。
しかし、これを機に日本での賃上げ率が今後定常的に上がっていけば、消費意欲が高まり景気の回復に繋がるかもしれません。今しばらくの忍耐が求められていると言えるでしょう。
 

橋本玲子
行政書士事務所経営。宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級取得。遺言執行や成年後見などを行う一般社団法人の理事も務めている。
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