ドラマや小説では連帯保証人になったばかりに大変な苦労をする人物が時々登場しますが、現実の世界でも保証人を頼まれるケースは意外とあるものです。通常の保証と連帯保証の違いや、やむを得ず連帯保証人となった際の注意点、民法改正による変更点などを詳しく解説します。
「連帯保証」と普通の「保証」は全く違う!
保証には単なる「保証」と「連帯保証」、そして「根保証」があります。保証人になることを依頼された場合には、まずその内容からどの保証にあたるかを確認することが大切です。
そもそも「保証制度」とは?
保証人は、主債務者が借金を返済する、家賃を払うなどといった債務を履行しない場合に、主債務者と同一の債務履行責任を負います(民法(以下同)第446条)。一般的に融資やローンを組む際、債権者は債務者に保証人を求めますが、これは債権者が貸倒れ等のリスクを避けるためのものであり、社会経済を守るためには保証制度が必要不可欠だと言っても過言ではないでしょう。
しかし自分が借りたわけではない他人の債務を負うと約束するのは非常に重大な決断です。そのため、通常は口頭でも有効とされることが多い「契約」のうち、保証契約は書面で行わなければならない「要式契約」となっています(第446条2項)。保証人には保証内容を理解し熟考した上で保証契約を交わすことが法律上求められているのです。
保証と連帯保証の違いは「履行責任」にある
単なる保証契約の場合、保証人は債権者から支払い(債務の履行)を求められても「まず主債務者に請求してよ」と言えますし(催告の抗弁・第452条)、債権者が主債務者に請求した後であっても主債務者に弁済能力があることを証明して支払いを拒めます(検索の抗弁・第453条)。
一方、連帯保証人は主債務者と「連帯」すなわち一緒になって主債務を負います。連帯保証人には催告の抗弁や検索の抗弁をする権利がありません(第454条)から、債務者に弁済能力があったとしても、債権者が連帯保証人に「支払え」と請求した時点で支払義務が生じてしまうのです。
一般的には「保証契約」と銘打っていても、内容をよく確認すると連帯保証契約であることがほとんどのため、くれぐれも注意が必要です。
なお「根保証契約」とは、例えば企業と金融機関が継続的な取引関係にある場合、関係が継続している限りそこで生ずる債務を一括して保証するといった内容の契約です。
「連帯保証人にはならない!」が大前提だが……
このように、連帯保証は自身に無関係な債務を主債務者に代わって返済することを約束するもので、冷静に考えれば保証人にとって非常に理不尽な制度といえます。
「人の保証人にだけはなるな」と昔から言われているのももっともであり、親しい間柄であっても引き受けるべきでないというのが原則です。
とはいえ、相手が恩のある人だったり、旧知の友人が困っていたりと断わりきれない場合があるかもしれません。また、夫婦が共同で住宅ローンを組んだ際にそれぞれが互いの連帯保証人となることを求められる、子が賃貸借契約を結ぶ際に親が連帯保証人になるなど、日常生活において連帯保証人になるケースも少なくありません。
連帯保証人になることのリスクを知っておき、いざという時の覚悟を決めて契約に臨むことが大切です。
民法改正で「保証人制度」が変わった?
立場上断わり切れず他人の連帯保証人になってしまい、債権者の請求に応じる以外なすすべがない、というのはあまりにも連帯保証人には気の毒です。そこで、個人が連帯保証人になった際に一定の保護をするための規定が2020年の民法改正で生まれました。
2022年に施行された「成年年齢引下げ」が連帯保証人制度に与える影響と合わせて説明します。
連帯保証人の保護を図る規定ができた
2020年改正民法の保証制度におけるポイントは、「個人の(連帯)保証人の保護」です。
まず、個人が「事業用の融資」の保証人(連帯保証・根保証を含む。以下同)になる場合には、保証契約を結ぶ前に作成した公正証書において、「自分が保証債務を履行する」という意思を表示しなければならないという規定が加わりました(第465条の6)。
公正証書作成という「ひと手間」を義務化することで、個人が保証人になることへの理解と熟考を求める趣旨といえます。
同じく個人に「事業用の融資」の保証人となることを依頼する主債務者は、保証人になる者に対し、自身の財産や収支の状況、今回保証を依頼する主債務以外にも債務があるかどうか、ある場合その債務の履行はきちんとされているか、などといった情報を提供しなければならなくなりました(第465条の10)。
また、事業用の債務はもちろん、個人的な債務の保証であっても、債権者は保証人から主債務の元本や利息、主債務の履行状況などの情報を知らせるよう求められれば、速やかに提供しなければなりません(第458条の2)。
さらに根保証契約においては、これまでほぼ貸金契約の場合にしか認められなかった極度額(保証債務に一定の上限額を定めること)が、他の契約で生じた債務においても定められるようになりました。それに伴い民法の根保証に関して定めた第5款第2目のタイトルも「貸金等根保証契約」から「個人根保証契約」に変更されています。
これらの改正は連帯保証のリスクを根本からなくすものではありません。しかし、保証人が保証内容についてしっかり理解すること、主債務者の情報を得ることで自身の状況を把握できるようになったのは一定の進歩といえるでしょう。
「18歳成人」規定で親の負担は減る?
2022年4月に、140年間以上20歳とされていた成年年齢が18歳に引き下げられた(第4条参照)のは記憶に新しいところです。
保証人になれるのは原則行為能力者、すなわち成年のみですが(第450条)、成年年齢引き下げにより、この4月以降は18歳から保証人になれるようになりました。
ここで注意したいのが、18歳は進学や就職などで子が実家を離れることが多い年齢だということです。これまで保護者に任せていた契約などの法律行為を、一人で新しい生活を始めると同時にできるようになるのです。
もしかすると新たな知り合いから保証人になってほしいと頼まれ、相手の環境も保証制度のこともよく分からぬまま引き受けてしまうかもしれません。
これが借金の保証人というのであれば警戒するかもしれませんが、入学した大学の友人から「部屋を借りる時の保証人(実は連帯保証人)になってくれないか」と頼まれて気軽に請け負い、突然家賃支払いや原状回復の請求が来て慌てても後の祭り、結局親が面倒をみることになりかねません。
したがって、親としては連帯保証人になることのリスクを子にしっかり伝え、連帯保証人を引き受けることも、他人に依頼することもせぬよう注意しておく必要があります。
18歳で子が一人暮らしを始めても、これまでは未成年とされ、部屋の賃貸借契約は親の同意が求められ、その流れで親が子の保証人になるというのが通常でした。
しかし18歳が成年となることで、親の同意不要で部屋の賃貸借契約を結べるようになったため、遠く離れた親でなく近くの友人に保証人を依頼するケースが今後増える可能性があります。
親としては、面倒ではあっても子の賃貸借契約に立会い、自身が連帯保証人になる手間を惜しまぬようにしましょう。子に連帯保証について教えられるきっかけにもなるでしょう。
まとめ
保証人の保護を目的とした民法改正がされたとはいえ、連帯保証人が負う「債権者から求められたら主債務者の資力の有無にかかわらず債務の履行をしなければならない」責任自体は変わりません。繰り返しになりますが、やむを得ない事情で連帯保証人になるのであれば、自身の債務であるとも覚悟を決めたうえで主債務者の情報をこまめに求めるなどの手間を惜しまないようにしましょう。
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