社会人になってから仕事に関する新しい知識やスキルを身に付ける「学び直し」が改めて注目されています。社会人が学び直しをするためには時間が必要なだけでなく、学び直しのための費用も確保しなければなりません。そうした事情を踏まえ、国として社会人の学び直しを支援する補助金制度があるわけです。
そこでこの記事では、学び直しの現状と学び直しが必要とされる理由だけでなく、個人でもらえる補助金について解説します。
学び直しが必要な理由
学び直しが必要な理由として、まずあげられるのが、平均寿命が伸びたことです。人生100年時代になり、60歳以上でも働く必要が出てきています。最近では、老後不安の問題がメディアでも取り上げられるようになり、60歳で定年ということが難しくなってきています。
一部では80歳まで働く必要があると言われていますが、その年齢まで働くためには、社会や技術の変化に合わせて、学び直しが必要になってきています。50代になり、あとは定年を待つだけとはいかなくなったわけです。
こうした変化は40代以上の世代にのみ当てはまるわけではありません。社会の変化が速いので、若者も学び直しが必要になっています。5年経つともうその知識は古くなっているという業界も多い中で、社会に出てからも学び直しをするかしないかで、大きな差が出ます。
リスキリングとリカレント教育との違いは
学び直しとよく似た言葉としてリスキリングとリカレント教育があげられます。リスキリングとリカレント教育も学び直しですが、学ぶ主体が異なります。リスキリングは企業が主導する学び直しであり、仕事においてスキルをさらに高めることを意味します。
一方リカレント教育は個人主導での学び直しの意味が強く、生涯学習の意味合いが強くあります。リカレント教育の場合、人生を豊かにする学習という意味で用いられ、仕事に直接関係ないことも多いでしょう。
現在では、学び直しは仕事に関わることで使われるようになっているため、リスキリングを学び直しとすることも多いですが、ここでは個人が行う学び直しを中心に解説しています。
学び直しの現状と始め方
学び直しをするためには、現状の把握がまず必要です。そのうえで学び直しを始める必要があります。ここでは学び直しの現状と学び直しの始め方について解説
学び直しの現状
学び直しの現状を見てみましょう。内閣府が行った「生涯学習に関する世論調査(令和4年7月調査)」によれば、月に1日以上学習した内容として、「仕事に必要な知識・技能や資格に関すること」が40.1%、「健康やスポーツに関すること」が31.3%、「料理や裁縫などの家庭生活に関すること」が23.1%で、仕事に関する学び直しをしている人が約40%いることがわかります。
学習した理由としては、「現在または当時の仕事において必要性を感じたため」が53.5%、「家庭や日常生活に生かすため」が47.8%、「人生を豊かにするため」が45.8%と、仕事において学び直しの必要性を感じている人が約半数います。
一方で、学習していない人も24.3%で約4分の1に達することがわかりました。学び直しをしていない人では、そもそも学び直しを必要としていないと考えている人が45.5%でトップでした。ただし「きっかけがつかめない」29.1%、「仕事が忙しくて時間がない」27.5%と学び直しをしたくてもできないという人たちもいます。
現在学び直しをしている人がより学びやすくなり、学び直しのできていない人が始められるようになるためには、何が必要なのでしょうか。前述した調査結果によれば、学び直しが進むためには、「インターネットを利用したオンライン学習の充実」が最も多く40.7%、ついで「仕事に必要な知識・技能の習得や資格取得に対する経済的な支援」が38.2%となっています。
コロナの影響もあり、インターネットを利用したオンライン学習は急速に進んでいます。そのため国としては、経済的な支援をするために補助金制度を整えて、学び直しの推進をしているのが現状です。
何を学び直す
前述したように、学び直しが必要だと考えている人たちが多く、実際に仕事に関する学び直しをしている割合が約40%だとわかりました。では何を学び直せばいいのでしょうか。何を学び直すのかを考える際には、自分自身に必要なスキルが何かを考えなければなりません。
自分がこれからどのようなスキルを身に付けたいか、どのようなキャリアを歩んでいきたいのかを考えることが大事です。そのためには自分ができることは何か、自分自身が現在持っているスキルをあらためて書き出していくことも必要です。
また中高年の場合はセカンドキャリアをどうするかのプランを考える必要もあります。どのような働き方をしたいか、いつまで働くのかを考えなければなりません。そのために必要なスキルも書き出してみましょう。
どこで学び直しをするか
また学び直しをする際には、学び直しをする場が重要です。自分のスキルに見合った学びの場を選ぶことが大事です。自分のレベルに合わないところで学習しても、スキルは身につきません。
また同じテーマであっても、学ぶ場所によって学び方はさまざまです。動画中心の場合もあれば、オンラインでの講義が中心のところもあります。なかなか教室に通えないのであれば、動画中心の講座やオンラインでの学習講座を選択するほうが良いでしょう。自分のライフスタイルと学習スタイルにあった学びの場を選ばなければなりません。
個人が使える補助金「教育訓練給付制度」とは
学び直しをする際には費用も重要な判断基準になります。そこで利用すべき補助金は「教育訓練給付制度」です。ここでは「教育訓練給付制度」の内容だけでなく、受講できる対象者や対象となる教育訓練についても解説します。
「教育訓練給付制度」とは
「教育訓練給付制度」とは、新しいスキルを身につけたり、新しいキャリアを探したりする人を支援する制度です。厚生労働大臣が指定した約1万4000の講座を受講した個人に対して、受講料の20%〜70%を国が支援します。そのため社会人の学び直しには最適な補助金だと言えます。
「教育訓練給付制度」の対象者は?
「教育訓練給付制度」を受けられる対象者は以下の条件を満たす人たちです。
- 雇用保険の被保険者もしくは離職してから1年以内の人で、今までに教育訓練給付を受けたことがない人および雇用保険の加入期間が1年以上の人
- 雇用保険の被保険者もしくは離職してから1年以内のもので、今までに教育訓練給付を受けたことがある人は、前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上の人
雇用保険の加入期間が満たない人は、加入期間が経過した後に受けられるようになります。
教育訓練の種類
「教育訓練給付制度」は対象講座によって3つに分けられます。
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 一般教育訓練
専門実践教育訓練は「業務独占資格などの取得を目指す講座」「デジタル関係の講座」「大学院・大学」「専門学校の課程」で、補助されるのは最大で受講費用の70%(年間上限56万円・最長4年)です。
特定一般教育訓練は比較的取得しやすい「業務独占資格などの取得を目指す講座」「デジタル関係の講座」で、受講費用の40%(上限20万円)が補助されます。
一般教育訓練は「資格の取得を目標とする講座」「大学院などの課程」で、受講費用の20%(上限10万円)が補助されます。
取得する資格によって教育訓練の種類が変わりますので、自分の受講したい講座がどの教育訓練に該当しているのか確認しておきましょう。
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まとめ
ここまで社会人の学び直しの現状と学び直しの始め方、学び直しのために使える補助金について解説してきました。学び直しをしているかどうかで、今後のキャリアに大きな違いが出るのは間違いありません。人生100年時代を生き抜くためにも今から学び直しを始めましょう。
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