「子育てにはお金がかかる」と漠然とわかっていても、具体的にどれぐらいかかるかイメージできるでしょうか。今回は、内閣府や文部科学省などの調査を通じて子育てにどれぐらいの費用がかかるのかシミュレーションしてみました。また、子育て費用を支援してくれる公的制度もご紹介します。
子育てにかかる養育費はいくら?
まずは、子育てにはどれぐらいの養育費がかかるのか見てみましょう。
教育費と養育費の違いとは
教育費と養育費は何が違うのでしょうか。
子どもを育てるために必要となるあらゆるお金を「養育費」とよんでいます。衣食住に必要な費用をはじめ、医療費や教育費、おこづかい、子どものための預貯金などの項目に分かれます。
「教育費」は、子どもに教育を受けさせるための費用のことです。幼稚園・保育所の利用料や学校の授業料はもちろん、学童保育や学習塾費用、塾以外の習い事なども含まれます。
子ども一人当たりにかかる養育費のシミュレーション
内閣府が行った「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」によると、未就園児、保育所・幼稚園児、小学生、中学生の各就学区分における子ども一人当たりにかかる年間養育費と割合は、以下のような結果になりました。
(単位:上段=円、下段=%)
未就園児 | 保育所・幼稚園児 | 小学生 | 中学生 | |
---|---|---|---|---|
衣類・服飾雑貨費 | 68,754 (8.2) |
92,552 (5.5) |
68,970 (6.0) |
76,507 (4.9) |
食費 | 166,387 (19.7) |
224,627 (18.5) |
278,294 (24.1) |
356,663 (22.9) |
生活用品費 | 149,425 (17.7) |
92,522 (7.6) |
83,419 (7.2) |
97,139 (6.2) |
医療費 | 11,867 (1.4) |
13,462 (1.1) |
21,791 (1.9) |
22,624 (1.5) |
保育費(※1) | 62,790 (7.4) |
379,407 (31.2) |
19,268 (1.7) |
― |
学校教育費 (※2) |
― | ― | 105,242 (9.1) |
274,109 (17.6) |
学校外教育費 (※3) |
15,635 (1.9) |
30,784 (2.5) |
106,089 (9.2) |
248,556 (16.0) |
学校外活動費 (※4) |
11,449 (1.4) |
43,179 (3.5) |
94,985 (8.2) |
57,337 (3.7) |
子どもの携帯電話料金 | 21 (0.0) |
127 (0.0) |
3,823 (0.3) |
23,453 (1.5) |
おこづかい | 487 (0.1) |
1,318 (0.1) |
9,605 (0.8) |
39,022 (2.5) |
お祝い行事関係費 | 59,882 (7.1) |
41,066 (3.4) |
31,974 (2.8) |
33,539 (2.2) |
子どものための預貯金・保険 | 199,402 (23.6) |
187,212 (15.4) |
163,037 (14.1) |
179,910 (11.6) |
レジャー・旅行費 | 97,127 (11.5) |
136,383 (14.5) |
167,044 (14.5) |
146,710 (9.4) |
総額 | 843,225 | 1,216,547 | 1,153,541 | 1,555,567 |
(※2)学校教育費…学校の授業料や教材費、PTA会費、給食費など
(※3)学校外教育費…学習塾や通信教育教材、家庭学習用書籍など
(※4)学校外活動費…学習塾以外の習い事に関する費用、短期留学など
各就学区分において、養育費でいちばん割合が高い項目を見ると以下のようになりました。
- 未就園児…子どものための預貯金・保険
- 保育所・幼稚園児…保育費
- 小学生…食費
- 中学生…食費
また、中学生は学校教育費と学校外教育費が高くなっているのも特徴です。養育費に占める学校教育費の割合は17.6%、学校外教育費の割合は16.0%となっています。
子育てにかかる教育費のシミュレーション
文部科学省が発表した「令和3年度子どもの学習費調査(学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計)」と、独立行政法人日本学生支援機構が発表した「令和2年度学生生活調査結果」をもとに、子育てにかかる教育費を公立・私立学校別に見てみましょう。
文部科学省によると、令和3年度における幼稚園3年間、小学校6年間、中学・高校各3年間の学習費総額は以下のとおりです。
公立幼稚園(3年間) | 472,746 |
---|---|
私立幼稚園(3年間) | 924,636 |
公立小学校(6年間) | 2,112,022 |
私立小学校(6年間) | 9,999,660 |
公立中学校(3年間) | 1,616,317 |
私立中学校(3年間) | 4,303,805 |
公立高校(3年間) | 1,543,116 |
私立高校(3年間) | 3,156,401 |
日本学生支援機構の調査によると、令和2年度にかかった4年制大学の学費(授業料や通学費、課外活動費などの合計)は以下のようになります。
国立大学 | 592,000 |
---|---|
公立大学 | 605,000 |
私立大学 | 1,310,700 |
これらの結果を踏まえて教育費をシミュレーションしてみましょう。たとえば、幼稚園から高校までは公立、大学は国立に通った場合、教育費はおおよそ以下のようになります。
公立幼稚園(3年間) | 47万円 |
公立小学校(6年間) | 211万円 |
公立中学校(3年間) | 162万円 |
公立高校(3年間) | 154万円 |
国立大学(4年間) | 237万円 |
総合計 | 811万円 |
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幼稚園は私立、小・中学は公立、高校・大学は私立に通った場合も見てみましょう。
私立幼稚園(3年間) | 92万円 |
公立小学校(6年間) | 211万円 |
公立中学校(3年間) | 162万円 |
私立高校(3年間) | 316万円 |
私立大学(4年間) | 524万円 |
総合計 | 1305万円 |
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大学の場合、子どもが進学のために自宅を出るため、保護者が仕送りをする必要があるケースも多いです。日本学生支援機構の調査によると、国立大学生の約64%、公立大学生の約56%、私立大学生の約34%が自宅外から通学しています。
自宅外から通学する大学生が受けている仕送り金額は平均1,144,700円となっており、4年で約460万円の仕送りが必要です。
子育て費用に対する支援金とは
上記で見たように、子育てにはさまざまな費用がかかります。特に教育費は大きな負担です。しかし、公的な支援などを利用することで子育て費用を軽減できます。
・児童手当・児童扶養手当
現行の児童手当では、中学校卒業までの子どもを扶養している所得制限限度額未満の保護者に対し、月額10,000~15,000円(子どもの年齢、扶養している子どもの人数によって異なる)が給付されています。給付期間は、子どもが15歳になったあとに迎える最初の3月31日までとされていますが、岸田文雄首相が3月末に公表した「異次元の少子化対策」のたたき台の中で、新たに対象を18歳まで拡大し月10,000円を支給する方向で調整に入っていることを明らかにしました。
また、児童扶養手当は、18歳までの子どもを扶養している所得制限限度額未満のひとり親などに対し、月額10,160~43,070円(受給者の所得によって異なる)が給付されるものです。給付期間は、子どもが18歳になったあとに迎える最初の3月31日までです。
児童手当・児童扶養手当を受けるには、住んでいる地域の市区町村への申請が必要です。
・こども医療費助成制度
子どもが病院で診療を受けた場合、保険診療分の医療費を自治体が助成してくれる制度です。対象となる子どもの年齢や保護者の所得制限の有無、助成金額などは自治体によって異なります。
こども医療費助成制度を利用するには、医療証が必要です。住んでいる地域の市区町村へ医療証の交付申請を行います。
・幼児教育・保育の無償化
3~5歳までの子どもと、市町村民税非課税世帯の0~2歳の子どもを対象に、幼稚園や保育所、認定こども園の利用料が無償になっています(給食費やPTA会費などは対象外)。3~5歳の子どもを持つ保護者について、所得制限はありません。
・高等学校等就学支援金制度
年収約910万円未満の世帯の子どもが高校などに通う場合、国から授業料に充てる支援金を受給できます。高校は国公私立、全日制・通信制・定時制を問いません。通学する学校に必要書類を提出し、申請を行います。
・高等教育の就学支援新制度
一定の要件を満たす大学や短期大学、高等専門学校、専門学校に通う学生に対し、世帯収入や通学状況(自宅・下宿など)に応じて給付型奨学金の支給と授業料等の減免が行われます。給付型奨学金は進学前年に高校を通じて日本学生支援機構へ、授業料等減免は入学時に進学先へそれぞれ申し込みます。
まとめ
子どもを育てるにあたり、養育費の中でも1,000万円を超える教育費は保護者にとって大きな負担です。未就園児の養育費において、子どものための預貯金や保険が大きな割合を占めている背景には、将来教育費がかかることを見越してのことと考えられます。
近年、国や自治体は少子化対策の一環として、子どもの教育費支援を打ち出しています。情報を集めて理解を深め、ご自身の負担を軽減しながら子育てをしましょう。