一般的に会社員の場合、住民税は給与から天引きされており自分で納付する必要はありません。しかし個人事業主の方や会社員でも副業をしている方、退職して転職先が決まっていない方など自分で納付しなければいけない場合もあります。
住民税を自分で納付しなければいけないのに、うっかり滞納してしまった、という方も多いのではないでしょうか。
「滞納した分はいつまでに支払えばいいの?」「延滞金はとられるの?」「納付する余裕がない場合どうしたらいいの?」など不安なことも多いと思います。
ついつい滞納してしまった場合の対処方法やずっと支払わないとどうなってしまうのか、など解説いたします。
そもそも住民税とは何か?
住民税とは住んでいる都道府県や市町村に納める税金です。公共施設や上下水道、ごみ処理、学校教育といった行政サービスの運用に住民税は使用されます。つまり住民税によって地域の公共サービスの運用費を住民みんなで分担しています。
住民税の対象者は、1月1日時点で日本に住所があり一定額以上の給料をもらっている人です。
地域住民の生活を保障するために、住民税は支払わなければなりません。
住民税は法人住民税と個人住民税に分けられますが、今回は個人に対して課税される個人住民税について解説いたします。
個人住民税の納付額は「所得割」と「均等割」の額の合計額です。
住民税額計算
課税所得金額 × 税率10% ー 税額控除額 = 所得割額
所得割額 + 均等割額5,000円 = 住民税額
住民税の徴収方法は?
住民税の徴収方法は「特別徴収」と「普通徴収」に分けられます。
特別徴収とは、従業員が納付するべき住民税を勤務先の会社が毎月の給与から天引きし、会社が代わりに納付する方法です。
原則として給与支払者(勤務先の会社)は、従業員の住民税を特別徴収することが法律で義務づけられています。(地方税法第321条の4)
特別徴収であれば、自分で支払う手続きがないので、うっかり納付を忘れる心配がありません。
もう一つの徴収方法である普通徴収は、送付されてくる納付書を使って自分で住民税を納付する方法です。6月ごろに納付書が届くので、6月8月10月翌年の1月と、4回に分けて納付します。
普通徴収の該当者は個人事業主やサラリーマンで副業をしている人などです。また、サラリーマンの方も転職する際に転職をした人も、書類の手続きを転職前の職場と転職先の職場がやり取りをしていなければ普通徴収に切り替わります。「給与所得者異動届出書」という書類を転職前の会社に記入してもらってから受け取り、転職先の会社に提出する必要があります。
退職後に転職先が決まっていない人も、同様に普通徴収に該当します。
普通徴収でうっかり納付を忘れてしまったら
前述したように普通徴収は1年で4回納付するので、自分でスケジュールを管理する必要があります。そのためうっかり納付期限を忘れて滞納してしまう可能性があります。
それでは住民税の納付期限を過ぎてしまうとどういうペナルティが発生するのか、下記で詳しく解説していきます。
YouTubeで「住民税」について解説中!
住民税を1か月滞納したら危険です!
住民税を滞納した後の流れは?
税務署から督促状が届く
滞納日から20日以内に督促状が発送されます。督促状から差し押さえまでは意外と速やかに進んでいくことがあるので、自治体から重要書類が届いたらなるべく早く開封しましょう。
電話や郵便による催告が行われる
督促状が届いても納付を行わなかった場合、電話や郵便による催告が行われます。
財産調査が行われる
差し押さえのための財産調査が行われます。また同時に、身辺調査も行われます。
差し押さえ処分
電話や郵便による催告でも納付を行わなかった場合、最終的に銀行口座や給与を差し押さえられます。
法律では「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押さえなけらばならない」と決められています。
督促状は20日以内で送付されるため、最短で滞納から約1カ月後に差し押さえられる可能性があります。
ただし、差し押さえまでの期間は各自治体によって異なるため、明確に差し押さえまでの期間は決められていません。
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
住民税を滞納した場合のリスクは?
住民税を滞納すると、大きく2点のリスクがあります。下記で解説していきます。
延滞金が課される
住民税を滞納すると延滞金がかかります。滞納分を完納するまでずっと延滞金がかかってしまうため注意しましょう。
延滞金の計算方法は下記です。
②納付すべき本税の額×延滞税の割合×日数(2月を経過する日の翌日から完納の日)÷365
①の金額+②の金額=延滞金の額(100円未満は切り捨て)
延滞金の割合(令和3年1月1日以後/年)
納期限の翌日から2カ月を経過する日まで | 納期限の翌日から2カ月を経過した日以後 |
---|---|
・7.3% ・延滞税特例基準割合+1% どちらか低い方 |
・14.6% ・延滞税特例基準割合+7.3% どちらか低い方 |
引用:延滞税について| 国税庁
延滞税特例基準割合とは、国が制定した銀行の新規の短期貸出約定平均金利を元にした割合で、財務大臣が各年の前年の11月30日までに告示します。令和4年1月1日~令和5年12月31日までの延滞金特例基準割合は1.4%です。
例として、納付期限:令和5年1月31日 税額:10万円 を令和5年4月27日に納付した場合で延滞金を計算してみましょう。
①税額10万円×2.4%(延滞税特例基準割合+1%)×28日÷365=184.1円 端数処理により184円
②税額10万円×8.7%(延滞税特例基準割合+7.3%)×58日÷365=1,382.4円 端数処理により1,382円
①+②=1,566円 端数処理により1,500円
以上の計算により延滞金は1,500円となります。
差し押さえされると社会的信用を失う
差し押さえられる対象は銀行口座や給与です。まずは銀行口座から差し押さえされますが、勤務先の給与も差し押さえの対象となっているため会社に通知が届き、解雇されることはなくても、会社内の信用を失う可能性があります。
副業をしていて、副業分の収入を普通徴収にしている場合には注意が必要です。
また、転職時に特別徴収の引継ぎ手続きを行っていない場合も、転職先の会社へ給与の差し押さえ通知が届く場合があります。
納付できない場合の対処方法
経済的な余裕がなく納付ができない場合、すぐに役所に相談に行くことをおすすめします。納付できない理由を説明すると納付期限の猶予を与えてもらったり、分割納付にしてもらえることがあります。まためったに起こらないケースですが、減免してもらえる可能性もあります。
ただし納付期限の猶予をもらったり、分割納付ができるかどうかは各役所の担当者が決定するため、断られるケースもあります。納付ができないと分かり次第、なるべく早く役所に相談して支払う意思があることを示すことが重要です。督促状が届いてしまう前に役所に相談に行くことができれば、担当者にも理解を得やすいでしょう。
滞納した住民税を免除してもらう方法は?
原則として滞納した住民税が免除されることはありません。時効の制度は設けられていますが、実際に時効になったケースはありません。
住民税の減免の制度もありますが、納期限が過ぎてしまった住民税は減免の対象外です。
まとめ
いかがだったでしょうか。住民税を普通徴収で支払う場合、常に納付期限を把握しておく必要があるため、うっかり期限切れになってしまうことはあると思います。滞納してしまうと延滞金が発生するため、気付いたらすぐに納付しましょう。
住民税の納付忘れを避ける方法として、口座の自動引き落としやクレジットカード払いができる自治体もあります。一度納付忘れをしてしまったのであれば、自動的に支払える方法を住んでいる役所に確認してみるといいかもしれません。
またどうしても住民税の納付が厳しいのであれば、なるべく早く役所に相談することをおすすめします。相談してもどうせ支払えないからと先延ばしにしていると、どんどん条件が悪くなっていきます。延滞金も増え、最悪の場合差し押さえになってしまいます。
なるべく迅速に行動することをおすすめします。
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