7月14日に、東京国税局は東京都新宿区の化粧品卸会社「雨辰(うしん)」に対し、消費税の不当還付額約44億円を追徴課税したと発表しました。輸出品は免税になる仕組みを利用し、多額の消費税の還付を受けたとしています。
化粧品不正輸出事件から考える追徴課税の重要性と影響力
そもそも追徴課税とは、税務調査等により、納税者が申告した額よりも少ない税額を納付していたことが判明した場合に、不足額を追徴することを指します。追徴課税は、納税者の申告漏れ、過少申告、不申告等が原因で発生します。
追徴課税の対象となる税金は、所得税、法人税、消費税、酒税、たばこ税、自動車重量税などすべての税金です。追徴課税の金額は、不足額に一定の割合の加算税が追加されます。加算税の割合は、申告漏れの場合は10%、過少申告の場合は5%、不申告の場合は20%です。
追徴課税が発生した場合、納税者は追徴課税の通知書に基づき、追徴すべき税額を納付する必要があります。期日までに納付しなかった場合は、延滞税が加算されます。延滞税の税率は、納付期限の翌日から納付日までの日数に応じて、年7.3%から14.6%の範囲で計算されます。
詳しくは「追徴課税とは?請求項目と払えない場合の問題点、実例を解説」をご覧ください。
冒頭の話に戻すと、「雨辰」は2019年から2021年までの2年間で、P&Gや資生堂といった大手メーカーの高級化粧品などを都内の会社から約370億円で仕入れ、ほぼ同額で輸出会社約10社に販売したと税務申告していたそうです。輸出会社はこの化粧品を香港に輸出したと申告していました。輸出品について、仕入れ時に払った消費税が還付される仕組みを利用して、不正に税金の還付を受けていたとみられています。しかし、国税局の調査で、一連の申告は架空の内容で、実際にはペットボトルの水にラベルを貼り、高級化粧品に見せかけていた疑惑が浮上しました。
雨辰は、化粧品の取引があったとされる時期と同時期に、近くの酒屋から飲料水を大量に購入していたことが判明しています。国税局は、箱詰めの水を化粧品と偽って取引していたと判断し、雨辰に対し、実際に仕入れにかかったのは約370億円ではなく、飲料水の代金約30億円だったとして、過少申告加算税を含めて消費税約35億円を追徴課税しました。輸出会社に対しては、不正な還付申告をしていたとして計約9億円を追徴。国税局は、雨辰が不正な還付申告を輸出会社に指南し、還付金を各社で分配する狙いだったとみています。消費税の還付制度は、輸出業者が国内で仕入れた商品を海外に輸出した場合に、仕入れ時に払った消費税を還付する制度です。この制度は、輸出業者の負担を軽減し、輸出を促進するために設けられており、取引額が大きければ還付金も高額になります。
輸出品には消費税が発生せず、輸出元の企業が丸儲けとなる仕組みを利用して発覚した今回の事件。
税務調査のピークは毎年8月のお盆休み明けから11月中旬までの時期となります。税務調査が入ると決まったら、避けることはできません。日頃から正しい会計を心掛け、税務調査に慌てず対応できるようにしましょう。