今、中国経済は不安定な状況にあるといわれています。不動産市場の落ち込みがあったり、失業率が高くなったりと、中国経済が不況に陥っている可能性がある数値に現れ始めています。中国経済の落ち込みは、日本にも影響を与えかねません。
ここでは、今後の中国経済について不動産市場を中心に解説していきます。
※記事の内容は記載当時の情報であり、現在の内容と異なる場合があります。
中国不動産市場の現状とは
はじめに、中国不動産市場の現状について見ていきましょう。
中国の4月-6月期GDPは、前年同時期よりも6.3%のプラスになっています。中国の年間GDPの目標は、前年比5%前後のプラスとなっているため、その目標を上回る結果となっています。
しかし、この結果は、前年度がそもそもゼロコロナ政策のためにGDPが低かったという要因によるもののため、一概に中国経済が良い状況にあるとはいえません。実は、GDPの伸びは2023年初期よりも徐々に減少傾向にあります。
また、不動産開発投資のマイナスや失業率の上昇(6月の失業率:21.3%)など、懸念要素はいくつもあります。
これまで、中国の経済をけん引していたのは不動産市場です。しかし、2023年になると、不動産市場で悪い数字が並びます。2023年の1月〜2月にかけての分譲住宅取引床面積は、前年同期比で6.3%のマイナスになっています。これが5月になると前年同期比で19.7%のマイナスに、6月では28.1%のマイナスと大幅な減少が起こっています。
不動産投資についても、5月・6月ともに前年同比で20%以上のマイナスを記録しました。
このことから、中国不動産市場の現状は、かなり悪い状況にあるといえるかもしれません。
そもそも中国の不動産バブルはなぜ起こった?
中国の不動産市場は不動産バブルと呼ばれるほどに、急激に市場規模を拡大させてきました。いまでは、中国経済をけん引しているといっても過言ではないほどです。では、そもそも中国の不動産バブルはなぜ起こったのでしょうか。ここからは、中国の不動産バブルの推移について見ていきましょう。
中国の不動産バブルの始まりは、実はアメリカのリーマンショックにあるといわれています。
・リーマンショックの始まり
リーマンショックとは、2008年にアメリカが発端で起こった世界金融危機のことです。
当時アメリカでは、住宅購入用にサブプライムローン(金利が高く設定されている代わりに審査基準が低く設定されている、低所得者向けローン。不動産価格が上昇することを前提に、利用者がのちに住宅を売却して返済することを想定していた)がよく利用されていました。しかし、住宅市場の悪化からサブプライムローンが不良債権化したため、大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し、このことをきっかけに株価の暴落など世界的な金融危機が起こりました。
リーマンショックを乗り切るために、アメリカのFRBは政策金利の低下策(金融緩和)を行います。FRBとは「連邦準備制度理事会」のことで、米国の中央銀行です。日本における日本銀行にあたるもので、アメリカで紙幣の発行などの業務を行います。
・中国への影響
リーマンショックにより、アメリカのFRBは政策金利の低下策(金融緩和)を行いました。このことが世界各国に影響を与えます。もちろん、中国においてもリーマンショックの影響があり、中国の中央銀行も金利を下げざるを得なくなりました。
・中国での不動産バブルのはじまり
中国では超緩和的な金融政策を取りました。金利が大幅に低くなったことでお金が借りやすくなり、それが不動産の資金として市場に多く出回ることになったのです。つまり、拡大する融資と低金利の住宅ローンによって不動産バブルが発生しました。
・中国の不動産バブルの現状とは
超緩和的な金融政策が与えた影響は、不動産市場だけではありません。株式市場にも影響を与え、株式バブルも発生していました。
しかし、2015年になると株式バブルが崩壊します。そのため、不動産に資金が集中し、不動産バブルが一層拡大しました。その結果、不動産投資市場も拡大し、住宅などの不動産の価格が急騰し、市民の生活に与える影響が大きくなります。
2020年半ばになると、中国政府も規制を入れるようになります。具体的には、不動産会社への融資や、住宅ローンの融資を規制しました。これは、住宅を投資対象から外させることを目的にした規制でしたが、ここで不動産バブルが崩壊したとの見解もあります。
実際に、中国の不動産会社大手である恒大グループが資金不足によって債務不履行に陥るなどの問題が発生しています。これが、現在の不動産市場の落ち込みの原因のひとつになっています。
中国経済や不動産市場の今後はどうなる?
中国経済や不動産市場は、2023年になってから悪い数字が表面化しています。これは、2008年のリーマンショックの影響から始まった中国の不動産バブルが終了しつつあることが影響しています。
では、中国経済や不動産市場の今後はどうなるのでしょうか。
・中国政府の対策と中国経済の現状
実は、中国政府も、中国経済や不動産市場の停滞の状況を打開するために、さまざまな対策に乗り出しています。
対策のひとつが、中央銀行への公的資金の注入です。中央銀行に公的資金を注入し、住宅ローンの金利などの対策に乗り出しました。具体的には、実質的な政策金利の引き下げです。これにより、住宅ローンの金利も下がり、借りやすくなっています。
また、住宅購入時に頭金の比率が低くても、購入ができるようにしました。開発業者についても不動産基金の創設を行い、規制の緩和策を打ち出しました。例えば、融資の返済期限を延長したり、社債発行の支援などを行ったりしています。今後は、住宅需要を喚起するための新たな政策を打ち出すとも噂されています。
では、これら政府の支援策によって、落ち込んだ不動産市場が持ち直すのでしょうか。現状では、支援策によって不動産市場の景気が良くなるかどうかは判断できません。なぜなら、不動産市場だけでなく、中国経済自体が不安定となっているためです。
2023年6月の失業率を見てみると、16歳から24歳の失業率はなんと21.3%となっています。これからも失業率が増加する可能性は高く、ますます中国経済は不安定になることが予想されます。
・日本への影響
中国経済や不動産市場が停滞すると、日本へも影響が及ぶと考えられます。例えば、最近になってよくニュースなどで報道されているのが、日本の不動産の購入です。中国の富裕者層が、中国の不動産から日本の不動産に乗り換えて、購入しているケースが増えています。
このことが日本にどのような影響を与えるのかは、いまだ不透明な部分はありますが、今後、このほかにも日本に与える影響が増加する可能性もあります。
中国経済や不動産市場がこのまま落ち込んでいくのか、それとも政府の施策によって、景気が上昇していくのか、今後も注視が必要となるでしょう。
まとめ
中国不動産市場の現状は、とても悪い状況にあるといえるかもしれません。なぜなら、GDPの伸びが減少傾向にあり、分譲住宅取引床面積、不動産投資ともに前年より大きく数字を落としているためです。
そもそも中国の不動産バブルは、リーマンショックによるアメリカや中国の低金利政策により始まりました。超緩和的な金融政策により、金利が大幅に低くなったことで、お金が借りやすくなり、それが不動産の資金として、市場に多く出回りました。
一方、2020年になって、中国政府が不動産バブルの対策を行ったことで、今度は逆に中国不動産市場が悪化しています。
最近になって、中国政府は政策を一転し、不動産市場に緩和策を講じています。中国経済や不動産市場がこのまま落ち込んでいくのか、それとも政府の施策によって景気が上昇していくのか、今後も注視が必要です。
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