9月4日、フリーランスや小規模事業者からなる団体が財務省や国税庁、公正取引委員会に対して、インボイス制度の中止・延期を求めるおよそ36万人分の署名を提出しました。
団体側はインボイス制度に対して、「小規模事業者にとって増税となる制度であり、廃業を考えている事業者もいる」と訴えています。
インボイス制度は「事実上の増税」といわれている
そもそもインボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、2023年10月1日から新たに導入される消費税法上の制度のことです。
年間売上が1,000万円未満の個人事業主や小規模事業者を対象とした制度で、本制度に登録すると、課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を差し引いた消費税の納付義務が新たに発生します。
つまり、インボイス制度に登録をすると、2023年10月1日以降に、これまで納める必要がなかった消費税分を納めなくてはならないということです。
ここで、「そもそもインボイス制度に登録しなければ済む話では」と疑問に思う方もいるでしょう。
しかし、インボイス制度に登録をしておかないと、取引先の消費税負担が増える可能性があり、取引停止を迫られるケースもあるのです。
例えば、売り手側がインボイス制度に登録していない場合、買い手側が課税仕入れにかかる消費税分を控除できず、負担する消費税が多くなってしまいます。その結果、インボイス制度に登録していない事業者は、顧客や取引先から取引停止を迫られる可能性があります。
したがって、「実質的な増税」といわれるインボイス制度は、多くの個人事業主や小規模事業者が登録を迫られています。
そして今回、フリーランスや小規模事業者からなる団体が財務省などに対して、インボイス制度の中止・延期を求める36万人分の署名を提出したのです。また、同日に声優業界などの著名人や有識者らは、衆議院第一議員会館にて緊急提言記者会見を開催しています。
参加者からは、「これまで消費税を納めなくてよかった免税事業者たちが、課税事業者になることを迫られる場面が至るところで起こっています。その影響で、声優やエンタメ業界だけでなく農家さんや一人親方、デザイナー、ライター、漫画家、アシスタント、ヨガインストラクター…その他ありとあらゆる分野で廃業するかもしれない人が多数出てしまうのです」との声があがりました。
また、アニメ『SPY×FAMILY』などで声優活動をしている甲斐田裕子氏によると、「『インボイスを機に廃業を考える』と答えた事業者は、アニメ・漫画などのエンタメ業界で約2~3割、建設業界では約1割にのぼった」とのことです。
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- インボイス制度で声優業界の約3割が廃業を検討|中止・延期を求め36万人分の署名を提出