政府が5月に新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の水際対策を大幅に緩和したことで、東京の観光名所にも外国人観光客の姿が目立ち始めています。
本記事では、そんなインバウンド(訪日外国人旅行)などで訪れる訪日外国人数について、これまでの推移や国別ランキング、訪日外国人が増えるメリット・デメリットなどを解説します。
※記事の内容は8月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
そもそもインバウンド(訪日外国人旅行)とは
インバウンドとは、外国人が日本に旅行で訪れることです。そのため、インバウンドのことを「訪日外国人旅行」「訪日旅行」などと呼ばれるケースもあります。
なお、日本に訪れた外国人旅行者が日本でモノや商品を購入・消費することを「インバウンド消費」と言います。
また、日本人が他国へ旅行することを「アウトバウンド」や「海外旅行」と言い、インバウンド・アウトバウンドといった用語は、旅行・観光業界、航空業界で使われるケースがほとんどです。
訪日外国人との違い
訪日外国人は、旅行目的だけでなく、その他の目的で日本に訪れる外国人のことも含みます。
例えば、飛行機の乗り継ぎで日本に一旦訪れる人や、仕事の関係で日本に訪れる人なども含まれます。
一方でインバウンドは、観光目的で日本にくる外国人のことを指すため、訪日外国人という大きなカテゴリーの中に、サブカテゴリーとしてインバウンドがあると言えるでしょう。
日本へのインバウンド需要は高まっている
2023年時点において、日本へのインバウンド需要は高まっていると言われています。
なぜなら、2023年7月の訪日外国人数が新型コロナの感染拡大前である2019年同月比の8割に迫る勢いだからです。
2023年7月の訪日外国人数は、以下のとおりです。
訪日外国人数(推計値) | |
---|---|
2023年7月時点 | 2,320,600人 |
インバウンド需要が高まっている背景には、およそ3年半ぶりに中国の団体旅行が解禁されるなど、新型コロナの感染拡大防止による制限が緩和されていることが挙げられます。
日本政府観光局の調査結果では、新型コロナ感染拡大前の2019年における訪日外国人数で中国人が3割を占めていることから、中国の団体旅行解禁は、日本のインバウンド需要を高めた大きな要因だと言えるでしょう。
新型コロナの訪日禁止期間はどのような影響を与えたのか
次に新型コロナによる訪日禁止期間は、日本経済にどのような影響を与えたのか見ていきましょう。また、新型コロナは2020年から流行し始めたため、流行前の2019年と流行後の2020年の数値を比較しています。
訪日外国人数の減少による日本経済への影響は、以下のとおりです。
- 外国人観光客の日本での旅行消費額が大幅に減少した
- 日本のホテル・旅館宿泊者数が大幅に減少した
- 旅行業における外国人観光客からの収入が99%以上減少した
外国人観光客の日本での旅行消費額が大幅に減少した
新型コロナの影響でインバウンド需要が低下したため、外国人観光客による日本の旅行消費額が大幅に減少しました。
2019年と2020年の1〜3月期における訪日外国人の旅行消費額は、以下のとおりです。
1月~3月期 | 訪日外国人による旅行消費額 |
---|---|
2019年 | 11,517億円 |
2020年 | 6,727億円 |
参照:新型コロナウイルス感染症への対応と観光による再びの地方創生に向けて|国土交通省
新型コロナ流行後の2020年の訪日外国人による旅行消費額は、前年の58.4%まで大幅に低下しています。
日本のホテル・旅館宿泊者数が大幅に減少した
新型コロナによって訪日外国人数が減少したことで、日本のホテル宿泊者数も大幅に減少しました。
2019年と2020年の5月におけるホテル・旅館宿泊者数は、以下のとおりです。
2019年5月 | 2020年5月 | |
---|---|---|
旅館 | 2,400万人ほど | 600万人ほど |
リゾートホテル | 700万人ほど | 50万人ほど |
ビジネスホテル | 800万人ほど | 100万人ほど |
シティホテル | 800万人ほど | 100万人ほど |
参照:新型コロナウイルス感染症が宿泊業に与えた影響に関する研究|内閣府
2019年5月と2020年5月のそれぞれの宿泊者数を比較すると、それぞれの宿泊施設で7〜9割ほど減少していることがわかります。
宿泊者数が減少した理由には、新型コロナによるインバウンド需要の低下による訪日外国人数の減少も関係しており、各宿泊施設は大きな問題に直面したと言えるでしょう。
旅行業における外国人観光客からの収入が99%以上減少した
新型コロナによってインバウンド需要が低下したことで、旅行業の外国人観光客からの収入は99%以上減少したとされています。
2019年と2020年の4月における主要旅行業者総取扱額は、以下のとおりです。
4月期 | 外国人旅行における総取扱額 |
---|---|
2019年 | 282億円 |
2020年 | 1億円 |
参照:新型コロナウイルス感染症への対応と観光による再びの地方創生に向けて|国土交通省
旅行業者は、新型コロナの影響によって外国人観光客からの取扱額が99%以上減少したため、大打撃を受けたことがわかります。
日本と中国を行き来する航空便に影響を与えている
日本の観光分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員によると、新型コロナは日本と中国の航空便に影響を与えていると述べています。
理由としては、新型コロナで訪日外国人数が減少したことで、航空便の本数が減少したことを述べています。
このことから、中国人旅行者の制限が解除されたとしても、中国人観光客が一気に増えることはないとのことです。
2023年のインバウンドにおける訪日外国人数
2023年における1〜5月のインバウンドにおける訪日外国人数は、以下のとおりです。
インバウンドにおける訪日外国人数(2023年) | |
---|---|
1月 | 1,308,606人 |
2月 | 1,297,458人 |
3月 | 1,582,518人 |
4月 | 1,738,172人 |
5月 | 1,656,118人 |
参照:訪日外客数(2023 年 7 月推計値) |日本政府観光局
また、2023年6月の訪日外国人数は、推計値として「2,073,300人」と記載されています。
2022年のインバウンドにおける訪日外国人数推移
2022年のインバウンドにおける訪日外国人数は、以下のとおりです。
インバウンドにおける訪日外国人数(2022年) | |
---|---|
1月 | 649人 |
2月 | 999人 |
3月 | 3,371人 |
4月 | 6,166人 |
5月 | 7,308人 |
6月 | 12,405人 |
7月 | 30,315人 |
8月 | 31,441人 |
9月 | 42,108人 |
10月 | 326,699人 |
11月 | 773,983人 |
12月 | 1,252,391人 |
参照:訪日外客数(2023 年 2 月推計値)|日本政府観光局
訪日外国人数の国別ランキング
2023年7月における訪日外国人数の国別ランキングは、以下のとおりです。
2023年7月 | 国・地域(推計値) |
---|---|
1位 | 韓国(626,800人) |
2位 | 台湾(422,300人) |
3位 | 中国(313,300人) |
4位 | 香港(216,400人) |
5位 | 米国(198,800人) |
参照:訪日外客数(2023 年 7 月推計値) |日本政府観光局
国別ランキングを確認すると、アジア圏からの訪日外国人が多いとわかります。
インバウンド需要が高まるメリット
インバウンド需要が高まると、日本社会の経済を活性化します。
2023年1~3月におけるインバウンドでの訪日外国人の消費額は、1兆146億円と大きな額であることが観光庁の「訪日外国人消費動向調査」からわかります。
日本では少子高齢化や人口減少が続いており、国内マーケットの収縮が考えられているため、インバウンドで訪日外国人数を増やしていく必要があると言えるでしょう。
インバウンド需要が高まるデメリット
インバウンド需要が高まって訪日外国人数が増えると、外国人観光客によるマナー違反や、文化の違いによるトラブルが発生するなどのデメリットがあります。
国によって文化やマナーは異なるため、日本では当たり前のことが外国人からは失礼な行動にあたることもあるでしょう。
文化や考え方の違いによる外国人観光客とのトラブルを防ぐためにも、トラブルを未然に防げる環境づくりが重要だと言えます。
まとめ
今回は、インバウンドや訪日外国人数について紹介しました。
2023年は中国の団体旅行が解禁されるなど、新型コロナ感染拡大の制限が緩和されてインバウンド需要が高まった年です。
岸田総理は、「政府は今年3月に観光立国推進基本計画を定め、2025年に向けて訪日客をコロナ前の水準まで回復することや、外国人の旅行消費額5兆円の早期達成などを目標に掲げている」と述べていることから、今後もますますインバウンド需要が高まっていくと考えられるでしょう。
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