日本の大学経営において、光熱費や物価の上昇が課題となり、多くの大学が学費の引き上げを決断していることが報じられています。特に、大規模な私立大学が授業料や入学金など新入生に課する初年度納付金を引き上げている傾向が顕著です。
その一方、東京都は授業料免除対象の都立大学の学生について、収入制限を拡大しました。
物価上昇や光熱費増加が要因?授業料値上げを実施する背景とは
朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」によれば、全学で値上げや一部学部・学科での値上げを実施した大学は、2023年度には7%、2024年度には13%に上りました。私立大学に焦点を当てると、これらの数字はそれぞれ8%と17%に増加しています。
特に大規模私立大学の早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、関西学院大学など多くの大学が最近、全学部での授業料値上げを実施しています。
その理由の一つとして、光熱費や物価の上昇を挙げているケースも見受けられます。
たとえば、早稲田大学は、データ科学センターの設立や、全授業でオンライン教育を実施できる体制の整備などへの投資に伴うコストを考慮し、2021年度から授業料の引き上げを検討してきました。経済情勢の悪化を受けて3年間延期しましたが、2024年度には「物価上昇や光熱費の増加など、大学運営に影響を及ぼす状況を包括的に考慮」し、授業料の引き上げを実施することを決定しました。
その結果、政治経済学部の授業料は約7万6千円上昇し、約129万円に達する見込みです。また、科学技術の基幹を担う基幹理工学部の授業料は約14万円引き上げられ、約184万円になります。
早稲田大学は、「学費を支払うことで提供される文理を横断した全学基盤教育や、膨大な数の図書やオンラインジャーナルなどの教育環境に納得して、学費を納めてくれる」と説明しています。
その上で、経済的に困難な学生に対しては、「総額41億円の大学独自の給付型奨学金を提供し、配慮しています。」という考えを示しました。
また、慶應義塾大学も2023年度に全学部で授業料を2万~5万円引き上げ、2024年度にはさらに3万~6万円の引き上げを検討中です。
同様に、上智大学も2023年度と2024年度の両方で全学部の授業料を引き上げました。
どちらの大学も、以前から消費者物価上昇率などを指標として授業料の変更を行っています。
大学の授業料の引き上げについては、学生や保護者からの反発も考えられますが、大学側は光熱費や物価の高騰に対応し、高品質の教育環境を提供するための必要な措置だと主張しています。
私大で学費が値上げする一方で、東京都は10月13日、授業料を免除する対象の東京都立大(八王子市)の学生を、これまでの世帯年収478万円未満から、来年度以降「910万円未満」に広げると発表しました。
また、扶養する子が3人以上の世帯は、収入が910万円以上の場合も授業料が半額免除となります。
大学授業料は、国が「修学支援新制度」で世帯年収270万円未満の学生に上限額の全額(国公立大学の入学金約28万円、授業料約54万円、私立大学の入学金約26万円、授業料約70万円)、380万円未満の学生には上限の3分の1をそれぞれ助成しています。
都は都立大生に独自の助成を上乗せし、これまで478万円未満まで無償化していましたが、さらに支援を拡充した形です。
今回、授業料の引き上げや東京都の支援拡充が日本の大学教育にどのような影響を及ぼすのか、その動向が今後も注目されます。
- 税理士・税理士事務所紹介のビスカス
- マネーイズム
- トピックス
- 早慶など私大で学費値上げ、都立大学は学費免除拡充