ビザの中には、ゴールデンビザというさまざまな特典が付与されたビザがあり、インドネシアは2023年9月に、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏に対してゴールデンビザを初めて発行しました。
本記事では、ゴールデンビザの特徴やインドネシアがゴールデンビザを導入した背景などを紹介します。
※記事の内容は2023年10月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
ゴールデンビザとは?
ゴールデンビザとは、一定の条件をクリアした投資家や起業家、アスリート、文芸創作家などに対して与えられるビザで、通常のビザと比べてさまざまな特典が付与されています。
日本では、インターネット動画で芸能人らを脅迫した容疑で逮捕された東谷義和(ガーシー)容疑者が「僕のビザは10年です」とインスタライブで答えたことで、アラブ首長国連邦のゴールデンビザを文芸創作家として取得した可能性があると報道されました。
アラブ首長国連邦の場合、ゴールデンビザを取得すると、在留期間が5年または10年となり、パスポートを紛失しても滞在が可能となります。
インドネシアが導入したゴールデンビザの取得方法
ゴールデンビザの取得方法は、国によって異なります。そして、インドネシアが導入したゴールデンビザの取得方法は、以下のとおりです。
法人がインドネシア法人を設立する場合
∟2,500万ドル「日本円約37億5,000万円」の投資をすること
個人がインドネシア法人を設立する場合
∟5年間滞在の場合は250万ドル「日本円約3億7,500万円」の投資をすること、10年間滞在の場合は500万ドル「日本円約7億5,000万円」の投資をすること
インドネシア法人を設立しない場合
∟5年間滞在の場合は35万ドル分「日本円約5,250万円」の資金を株式購入などに充てること、10年間滞在の場合は70万ドル「日本円約1億500万円」の資金を準備すること
インドネシアの場合、インドネシア法人を設立するかによってゴールデンビザの取得方法は異なり、設立しない場合でも最低で35万ドル「日本円約5,250万円」が必要です。
インドネシアが導入したゴールデンビザの特典
インドネシアが導入したゴールデンビザの特典は、以下のとおりです。
- 従来のビザよりも有効期限が長くなる
- 出入国がしやすくなる
- 一時滞在許可証(ITAS)の申請が不要になる
- 国内で資産を所有する権利を獲得できる
一時滞在許可証とは、一時的にインドネシアに滞在する場合に必要となる許可証で、申請者の滞在目的やステータスにもよって30日から5年の滞在が許可されます。
インドネシアのゴールデンビザは、これからインドネシアでビジネスをしようと考えている起業家には、事業を営む上でさまざまなメリットが得られるビザだと言えるでしょう。
インドネシアのその他の訪問ビザ
インドネシアの訪問ビザは、3種類です。
到着ビザ
∟滞在日数30日以内、インドネシア政府に許可された国籍者のみが取得できるビザ
シングルビザ
∟滞在日数60日以内、現地法人設立前に出張で行く際などに取得するビザ
マルチプルビザ
∟1回の滞在日数は60日以内(有効期限1年間)、インドネシアに渡航実績がある人が取得できるビザ
インドネシアの訪問ビザは、最大で60日間の連続滞在が許可されているビザや、インドネシアへの渡航実績の有無によって有効期限が1年間のビザなどがあります。
したがって、5年・10年の滞在が許可されているゴールデンビザは、訪問ビザと比べて、特別な優遇処置が取られていると言えるでしょう。
インドネシア初のゴールデンビザは「OpenAIのサム・アルトマン氏」に発行
インドネシア初のゴールデンビザは、OpenAIのサム・アルトマンCEOに発行されました。
サム・アルトマンCEOは、人工知能の研究や開発を行っている人物で、Tesla(テスラ)のイーロン・マスクCEOと共同会長として、2015年12月11日にOpenAIを設立しています。
最近では、OpenAIが提供している対話式AIである「ChatGPT」のユーザー数が1億人を超えるなど、世界で多くの注目を集めています。
インドネシアの入国管理局長であるシルミー・カリムは、「国際的な名声があり、インドネシアに利益をもたらす可能性がある」と述べていることから、サム・アルトマンCEOがインドネシア経済に良い影響を与えることが期待されています。
インドネシアがゴールデンビザを導入した背景
インドネシアのゴールデンビザを導入したことには、主に2つの理由があります。
- 自国の経済発展を後押しする
- 海外から個人・企業投資家を自国に招くため
自国の経済発展を後押しする
インドネシアがゴールデンビザを発行した背景には、インドネシア経済の発展を後押しする目的があります。
前述したとおり、法人を設立しない場合、インドネシアのゴールデンビザを取得するためには、最低でも35万ドルの資金を国債購入や上場企業の株式購入、インドネシアの預金に充てる必要があります。
また、個人が法人を設立する場合、250万ドル以上の投資額が必要とされるため、ゴールデンビザを取得する人が増えるほどインドネシア経済の成長に期待できるのです。
海外から個人・企業投資家を自国に招くため
インドネシアのゴールデンビザには、海外からの個人・企業投資家を自国に招く目的もあります。そのため、ゴールデンビザの初提供者には、OpenAIのサム・アルトマンCEOが選ばれました。
今後も、インドネシアは自国に利益をもたらすであろう国際的な著名人を自国に招くために、ゴールデンビザの発行数を増やしていくことが考えられます。
ゴールデンビザを導入している国
2023年10月時点でゴールデンビザを発行している主な国は、以下のとおりです。
- マルタ
- ギリシャ
- キプロス
- イタリア
- アメリカ
- ニュージーランド
- スペイン
例えば、マルタやキプロスであれば、ゴールデンビザを取得すると、永住権を獲得できます。また、マルタやキプロス、イタリアでは二重国籍が認められており、5~10年居住することで、市民権取得の申請が可能です。
他にも、インドネシアがゴールデンビザを発行した目的である「海外から個人・企業投資家を自国に招くこと」と同様の理由で、アメリカ、ニュージーランド、スペインもゴールデンビザを発行しています。
ゴールデンビザを廃止した国
ゴールデンビザを発行した国の中には、廃止した国もあります。
ゴールデンビザを廃止した国は、以下のとおりです。
- ポルトガル
- アイルランド
ポルトガルがゴールデンビザを廃止した理由は、住宅価格の高騰です。海外から訪れる富裕層が増えたことで住宅価格が高騰し、地元住民が居住物件を探すことに弊害が起きたことからゴールデンビザを廃止しています。
また、ゴールデンビザを廃止しているアイルランドでは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐる制裁措置として、ロシア国籍者に対しては2022年3月時点で制度の利用を停止しています。
まとめ
今回は、インドネシアが新たに発行したゴールデンビザについて解説しました。
ゴールデンビザは、国によって取得できる条件が異なり、一定の条件を満たすことで、与えられるビザです。通常のビザとは異なり、長期滞在が許可されるなどさまざまな特典が付与されています。
そして今回、インドネシアがゴールデンビザを導入した理由の一つとして、海外から個人・企業投資家を自国に招くことでインドネシア経済の発展を後押しする目的があります。
インドネシア初のゴールデンビザを取得したのはOpenAIのサム・アルトマンCEOであることから、インドネシアでのAI活用技術が発展する可能性が高いと言えるでしょう。