税務調査において不正会計が発覚した場合、どのようなペナルティーを受けることになるのでしょうか?
今回は中でも最も重いペナルティーである重加算税について、詳しく解説していきます。自分の会社の会計がどうなっているのか、今一度確かめてみてはいかがでしょうか。
税金調査で課せられる追徴課税とは?
故意的な脱税・申告漏れなどが発覚した場合、税金を追加で払う「追徴課税」が課されることとなります。これは、行政的制裁の意味を持っており、具体的には4つの加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)と、延滞税が存在します。
それぞれ課される要件が異なるので、まずはどういった追加税なのか1つずつ見ていきましょう。
過少申告加算税
申告期間内に提出した申告書の納付額が、収めなければいけない金額より少ない場合、修正申告をしたり申告税額の更正を受けたりすると過少申告加算税が発生します。
新たに課される過少申告加算税は、収めなければならない税金の不足分の10%です。ただし、あらかじめ申告していた納付額、もしくは50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%が課されます。
なお、税務調査を受ける前に誤りに気づき修正申告を出した場合、過少申告加算税はかかりません。
無申告加算税
申告書を期限までに提出しなかった場合、課せられる加算税です。
新たに課される無申告加算税は、収めなければならない税金の50万円までは15%、50万円を超えるものは20%が課されます。
なお税務調査を受ける前に自主的に申告し、期限後申告と取り扱われた場合は、無申告加算税が5%に軽減されます。
不納付加算税
源泉徴収税額を期限までに収めなかった場合に課せられる加算税です。
課せられる不納付加算税は、収めなければならない税額の不足分10%となります。なお、税務調査を受ける前に自主的に不足分納めた場合、不納付加算税は5%となります。
また正当な理由がある場合など、不納付加算税は免除されることもあります。
重加算税
故意に隠蔽、仮装した場合に課せられる加算税です。この重加算税は他の加算税と比べ、悪意的なものとみなされるためペナルティーも重くなります。
過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が課せられます。具体的な計算方法は、後の項目で説明します。
延滞税
各税金を期限までに収めなかった場合、期限の翌日から納付までの日数に応じて追加される課税です。延滞税は、延滞が故意であろうとなかろうと関係なくかかります。
期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは原則年7.3%、期限の翌日から2ヶ月が経過した日以降は原則年14.6%が課されます。
重加算税の計算方法
では、追徴課税の中で最も重い、重加算税について詳しく見ていきたいと思います。
重加算税の計算方法は、
「本来納めるべきだった税金-当初申告=増差税額(未納になっている税金)」
をもとにして計算されます。
増差税額に対し年率で延滞税が、一定率で加算税がかかり、それら二つと増差税額を合わせて追加で払うことになります。重加算税は、〈増差税額✕35%〉という計算式になります。
当初申告:200万円
増差税額:500-200=300万円
だとすると、重加算税が300✕0.35=105万円になります。つまり合計で増差税額+重加算税の405万円を追加で払う必要があるということです。そして、これにさらに延滞税がかかることになります。
たくさんの税金を長期間隠蔽すると、それだけ無駄な追徴課税を払わなければなりません。「払えない!」となっても税務署は待ってはくれません、延滞税が膨らむだけです。きちんと税金を申請・納付することがいかに大切か、ご理解いただけたのではないでしょうか。
重加算税になるもの、ならないもの
重加算税がかかるものは、大きくまとめると「意図的に脱税・隠蔽したもの」になります。たとえば、
・二重帳簿の作成
・領収書の破棄
・帳簿書類の改ざん
・売上の未記入
・架空の従業員への給与支払い
・架空の経費計上
などが対象となります。
一方で重加算税の対象とならないものは、
・今年度の売上を翌年度の収益に計上している場合
・翌年度の経費を今年度の経費として計上している場合
・交際費などの損金算入について制限のある費用を他の費用に計上している場合
などです。これらは記録した年度は異なりますが、利益を隠そうとしていたり、わざと間違えていたりするわけではないので重加算税とはなりません。ただし、記録ミスではあるので、修正が必要です。
税務調査でチェックされる項目は?
では実際に税務調査が行われることになってしまった場合、主にチェックされる項目は以下のようなものが挙げられます。
売上の期ズレ
今期の売上を翌期にずらしていないか、売上の抜けがないかをチェックされます。今期の売上記録がついているかいないかでは収める税金の金額が異なるため、税務調査ではかなり詳しく見られるポイントです。特に事業年度の切り替わるタイミングである、3月-4月の売上と入金には注意が必要です。
仕入の期ズレ
来期の仕入を今期のものとして記録していないかをチェックされます。仕入が増えると利益は少なくなり課税も少なくなるので、架空仕入や水増しがないか確認されます。
在庫金額
在庫金額が少なければ利益も少なく、在庫金額が多ければ利益も多くなります。つまり、在庫金額をいじるだけで記録上の利益の増減が出来るようになるのです。多くの在庫を抱える中小企業などは、よく確認すると良いでしょう。
交際費
現在中小企業では、800万円、もしくは接待飲食費の50%以下の交際費を損金として参入することが可能です。
この制度を利用する際、交際費でないものも交際費として記録していないか、などが詳しくチェックされます。個人的なものがあるかどうかが最も重要視されるポイントですので、注意してください。
従業員給料
架空人件費の発生は、税務調査でも特にしっかりチェックされるポイントです。実際に従業員の使っているデスクを見られることもあります。重加算税の対象となるものとして前項で紹介しましたが、架空人件費は悪質なものとして扱われているので絶対にしては行けません。
役員への貸付金、仮払金
会社からの貸付金は返さないといけませんが、その金額が大きかったり交付が頻繁だったりするとその使途を確認されます。また、貸付金は利息を取って返してもらわなければなりません。利息を取っていないと指摘されることとなるので注意が必要です。
業務委託費
他者に業務を委託する場合、その委託費の契約書がチェックされます。何を委託したのか、契約書とともにその成果物をきちんと提出できるようにしておきましょう。
関係会社との取引
決算間際に利益調整をし合う場合、そこに何らかの不正が発生していないか気をつけましょう。その取引に実態がないにも関わらず利益が増減していたりすると、税務署は怪しいとみるわけです。
領収書
相手先や年月日の記載がないものは、使途不明金として怪しまれてしまいます。記載のないものは店で記入してもらいましょう。また、頻度が多いものや時系列で矛盾した領収書が出てくると、個人的なものが混じっているのではないかと疑われてしまうので注意してください。
しかし、税務調査が入るからといって必要以上に恐れることもありません。単純なミスなどをきつく咎められることはないので、悪いことをしていなければ信頼できる税理士と一緒に事前準備をしっかり行い、堂々と調査を受ければ良いのです。
まとめ
自分の会社はしっかりしているからとタカをくくっていてはいけません。税理士にまかせているからと安心しきっていませんか? ご自身で税理士の出した決算報告などにきちんと目を通していますか? 一度重加算税の対象になると、余計に税金を収めなければならないだけでなく、それ以降も税務調査の対象になりやすくなります。税理士に適当な仕事をされて困るのは自分自身です。
税理士の変更を考えている方も、初めての税理士を考えている方も、株式会社ビスカスの税理士紹介サービスをご利用されてみてはいかがでしょうか。税務調査だけでなく、日頃の税務をしっかりサポートできる税理士が業界別に数多く揃っているため、税務にかかる負担を軽減することが可能となります。