国家公務員の給与が上がるという話が話題となっています。民間企業の給与上昇にともない、国家公務員の給与も上げるように人事院から勧告が出ています。それだけではありません。
国家公務員の特別職である総理大臣や閣僚の給与も上がることになりました。ではどれくらい上がるのでしょうか。この記事では人事院勧告の中身とどれくらい給与が上がるのかについて解説します。
※記事の内容は2023年11月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
人事院勧告の中身
令和5年に人事院勧告が出されており、その勧告の中で給与の引き上げだけでなく、新たな手当の創設や週休3日制の提案がなされています。ここではそれらの詳しい中身について解説します。
給与の引き上げ
閣議決定が行われたことで、国家公務員の初任給が高卒で約8%(12,000円)、大卒で約6%(11,000円)上がることになります。33年ぶりの1万円を超える上げ幅です。ボーナスは0.10月分上がることになります。
それだけではありません。月給は平均で0.96%上がることになります。国家公務員の一般職が対象となり、約28万人が対象です。地方公務員も今回の勧告に従って、給与が変更されます。
新たな手当の創設
勧告ではテレワークの実施にともない、自宅での水道光熱費分として在宅勤務手当を創設することになります。3カ月以上、月平均10日を超えてテレワークを行う場合、支給額は月3,000円です。
その代わりに通勤手当の扱いを変更します。今まで6カ月の通勤定期分を支給していたものが、1カ月あたりの平均出勤日数に必要な交通費のみを支給する形へ変更となります。こうした手当を開設することにより、職員が柔軟な働き方ができるようになるわけです。
週休3日制の提案
国家公務員の週休3日制を認めるように、人事院は内閣と国会に勧告しました。ただし総労働時間は変わりません。つまり週の労働時間は変わらず、1日10時間働くような形になります。そうすることで土日以外にもう1日休める日を作るわけです。
こうした提案が行われるには理由があります。長時間労働が問題で退職者が増えているので、ブラックという認識を改めるために実施すべきだと考えているからです。
1日10時間労働は多いかと思いますが、すでに10時間以上働いている人が多いのが実情です。そのため1日10時間働くことにして、もう一日、休みを増やすというのは合理的な考え方だとも言えます。
国家公務員の給与の引き上げが行われる理由
国家公務員の給与の引き上げが行われるのには理由があります。ここでは国家公務員の給与の引き上げをなぜ行わないといけないのか、その理由について解説します。
人材不足
人材不足が深刻化している現在、国家公務員の給与を上げる必要性が高まっています。なぜなら給与水準が低いために、優秀な人材が公務員として働くことを選ばない傾向があるからです。もし給与が引き上げられれば、優秀な人材が公務員としてのキャリアを選びやすくなり、国の運営においても高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。
現在の給与水準では、民間企業と比べて国家公務員の給与は低くなっています。そのため優秀な人材が民間企業に魅力を感じ、公務員の道を選ばないのです。給与を引き上げることで、公務員としての魅力を高め、人材を集められるというわけです。また優秀な人材の流出を防ぐことにもつながるでしょう。
また給与が低いことで公務員のモチベーションが低下することも懸念されます。給与が十分に高くない場合、公務員は仕事に対する意欲を失い、業務の質や効率が低下するかもしれません。給与を引き上げることで、公務員のモチベーションを高め、国の運営においてもよい結果を生み出せます。
以上の理由から、人材不足の解消と国の発展のためには、国家公務員の給与を引き上げる必要があるわけです。
民間企業の給与水準がアップしたから
物価高により民間企業の給料がアップしました。もちろんすべての企業ではありませんが、大企業はアップしている企業が多くあります。
民間企業の給与と国家公務員の給与は同水準にするのが基本です。そのため民間企業の給料アップに合わせて国家公務員の給与もアップすべきです。こうした理由から人事院の勧告も出されています。
特別職の国家公務員の給与も引き上げへ
国家公務員の給与引き上げにともない、特別職の国家公務員の給与も引き上げることになりました。ではなぜ特別職の国家公務員の給与まで上げる必要があるのでしょうか。またどれくらい上がるのでしょうか。
特別職の国家公務員の給与を上げる理由
特別職の国家公務員とは国会議員や大臣、防衛省職員、自衛官がまず挙げられます。他にも会計検査院長や人事院総裁なども含まれるため、国会議員だけの給与を上げるということではありません。今回の場合、政治家ではない特別職の給与を上げるのが目的です。
国家公務員の給与を上げるのにともなって、特別職の国家公務員の給与も上げた方がよいという認識で行われています。一般の国家公務員と同様、特別職の国家公務員も人材不足になっており、給与を上げることで待遇改善を行い、人材不足を改善したいというわけです。
給与はどれくらい上がる?
首相の年収は46万円増えて4,061万円、閣僚の年収は32万円増えて2,961万円になります。国会で賛成多数で可決されているので、この通りに実施される見込みです。この首相の年収が高いのかどうか、アメリカ大統領と比較してみましょう。
2021年時点のアメリカ大統領の給与は年間で約40万ドルと言われていました。円安が進んでいますから、日本円だと6000万円程度となり、日本の首相よりも高いと言えます。ただしアメリカ大統領には日本の首相よりも大きな権限が与えられており、それだけ責任が重いとも言えます。
特別職の国家公務員の給与も引き上げへの対応
特別職の国家公務員の給与は引き上げられることになりましたが、前述したように首相や閣僚の給与も上がります。それに対してどのような対応をするのでしょうか。ここでは国会議員の対応と野党の反応を紹介します。
給与が上がる国会議員の対応
前述したように首相や閣僚は給与が上がります。首相や閣僚、副大臣、政務官は自主的に上がった分を国庫に返納すると発表しました。また与党である公明党は所属議員の増額分を集めて公的機関に寄付するとしています。
国民が物価高で苦しんでいる中での実施なので、そうした批判の声を回避する目的で、寄付が行われる可能性が高いでしょう。ただ前述したように、特別職には国会議員以外も含まれるため、実施を中止することはありません。
こうした寄付をしても自分たちだけ給与を上げているという批判は多く、内閣支持率は低下し続けています。
野党の反応
自民党と公明党、さらに国民民主党は賛成しましたが、それ以外は反対という立場でした。物価高で国民が苦しんでいるのに、給与を上げるのは認められないという主張です。他の特別職の給与を上げることに反対しているわけではありません。
他の公務員と物価高の原因を作った岸田首相を一緒にして、給与を上げることに反対するというのが野党の主張です。たしかにこうした批判は一定程度の支持は得られそうですが、野党の支持にはつながっていない状況です。
まとめ
ここまで国家公務員の給与の引き上げについて解説してきました。今回の給与引き上げにともない、首相や閣僚の給与も上がります。寄付するからよいという問題ではないという批判も出てきています。
こうした状況の中で内閣支持率も低迷していますので、今後、岸田総理がどのように対応するかは注目しておいた方がよいでしょう。