「iDeCoに加入したけど、払えなくなったから途中解約したい」という方もいらっしゃるでしょう。iDeCoは基本的に解約できませんが、一定の要件を満たすと脱退一時金をもらうことが可能です。脱退一時金の要件を満たさなくても、掛け金を減額もしくは停止することができます。
本記事では、iDeCoの途中解約について、脱退一時金をもらえる要件と方法、払えなくなった時の対処法や転職・退職における手続きについてお伝えしていきます。
iDeCoは基本的に途中解約できない
iDeCoは原則解約できませんが、一定の要件を満たすと脱退が可能で「脱退一時金」が支給されます。
iDeCoは原則途中で解約できない
iDeCoは基本的に解約が不可能で、運用したお金は60歳まで引き出すことができません。
加えて60歳になるまでにiDeCoに加入していた期間が10年未満の方は、61歳以降に年金を受け取ることになります。
通算加入者等期間 | 受給可能な年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1カ月以上2年未満 | 65歳 |
ただし、加入者資格を喪失し一定の要件を満たした場合には「脱退一時金」を受け取ることが可能です。
例外的に解約できるが、一定の要件を満たす必要がある
基本的に解約は不可とされていますが、例外として拠出期間が短い・企業年金に加入していないなどの要件を満たすと「脱退」し「脱退一時金」が支給されます。
以下の7つの要件をすべて満たす方は、脱退一時金をもらうことができます。
2. 企業型年金加入者でないこと
3. 国民年金保険料免除者、外国籍の海外居住者等個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できない者であること
4. 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
5. 通算拠出期間が5年以下、又は個人別管理資産が25万円以下であること
6. 確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
7. 最後に企業型確定拠出年金又は個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から2年以内であること
脱退一時金は、公式サイトの「運営管理機関一覧」にある機関で手続きを行います。
なお、企業型確定拠出年金または個人型確定拠出年金(iDeCo)の資格を喪失した日が2016年12月31日以前の方には、経過措置が設けられています。
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する資格があり、資格を喪失した日が2016年12月31日以前で以下の5つの要件を満たすと脱退一時金を受給することができます。
②確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
③通算拠出期間(掛金を拠出しなかった期間は含まない)3年以下、又は個人別管理資産額が25万円以下であること
④継続個人型確定拠出年金運用指図者となった日から2年以内であること
⑤企業型確定拠出年金の加入者資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと
出典:iDeCo公式サイトより
脱退一時金をもらうためには、どのような手続きが必要なのでしょうか?
脱退一時金・死亡一時金の手続き
上記の要件を満たし脱退一時金を請求する際には、自身の状況により請求方法が異なります。
まず個人型確定拠出年金の運用指図者の場合、脱退一時金の支払い手続きは記録関連運営管理機関が行います。記録関連運営管理機関に「脱退一時金裁定請求書」を提出します。
企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失した方で企業型確定拠出年金・個人型確定拠出年金(iDeCo)の両方に個人別管理資産がある、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動移換している方は選択した運営管理期間に、「脱退一時金裁定請求書 兼 個人別管理資産移換依頼書」を提出します。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者・運用指図者(新たな掛金を拠出せずにそれまで積み立てた掛金の運用の指図のみを行うもの)などが亡くなった際には、遺族が死亡一時金を受給できます。亡くなった日から5年を経過すると、相続財産とみなされ相続税の課税対象になりますので注意しましょう。
個人型確定拠出年金の加入者・運用指図者が亡くなった場合は契約していた運営管理機関に「加入者等死亡届」を提出します。まずは、運営管理機関に問い合わせてみましょう。
iDeCoの掛け金が途中で払えなくなったときの対処法
加入したときには掛け金を払える経済的余裕があったものの、途中で払えなくなったときはどうすれば良いのでしょうか?その場合は、掛け金の減額もしくは停止を検討してみましょう。
掛け金を減額する
「お金がなくて掛け金を支払えない」という方は、減額を検討しましょう。
iDeCoの掛け金は最低月5,000円ですので、負担にならなければ将来のために続けてみてはいかがでしょうか。
減額の手続きは、運営管理機関が受け付けています。
「加入者資格喪失届」を提出し停止する
「もう掛け金を出せない」「ストップしたい」という方は、iDeCoの加入者資格を喪失する手続きを行います。積み立てたお金は運用指図者として受給できるまで、運用を続けます。
「加入者資格喪失届」に、加入者の資格を喪失した理由・喪失年月日を証明する書類を添付して、運営管理機関に提出します。
再び加入することもできますが、以下の場合は再加入が不可能です。
iDeCoに再加入できないケースとは?
iDeCoは一度加入資格を喪失しても、再加入が可能です。
ただし、以下のケースは加入が認められていません。
2. 企業型DCまたはiDeCoの老齢給付金を受給した
3. 公的年金を65歳前に繰り上げ請求した
4. 国民年金第1号被保険者で保険料の免除を申請している
5. 生活保護法による生活扶助を受給していることにより国民年金保険料の納付を免除されている
6. 日本国籍を有しない海外居住者
60歳以上65歳未満で、①会社員や公務員などの給与所得者、②国民年金の任意加入被保険者は再加入ができます。
転職・退職したときにiDeCoはどうなる?
転職先で企業年金に加入することになった場合
iDeCoの加入者が、企業年金制度のある会社に転職した場合はどうすれば良いのでしょうか?
転職先が確定給付企業年金(DB)を実施している方は、所定の手続きが必要です。
引き続きiDeCoの運用は可能で、月の掛け金の上限は12,000円になります。
確定給付企業年金(DB)の規約でiDeCoの資産受け入れを可能とすることが定められていれば、DBへ移換できます。
企業型確定出年金(企業型DC)を実施している企業に転職した場合は、①企業が実施する企業型確定拠出年金(企業型DC)へiDeCoの資産を移換する②iDeCo継続し企業型DCと同時加入するという2つの選択肢があります。
退職した場合
退職後には、自身がどのような状況にあるのかによってiDeCoの手続きが異なります。
例えば企業年金がある会社から退職後に個人事業主・自営業者など国民年金の第1号被保険者になる方は、iDeCoへ資産を移換し加入者または運用指図者となります。
国民年金の第1号被保険者は、毎月の掛け金上限額が68,000円(国民年金基金・国民年金の付加保険料と合算)です。
運営管理機関に「個人別管理資産移換依頼書」を提出します。
企業年金のある会社から、専業主婦(夫)など国民年金の第3号被保険者になる場合にもiDeCoへ資産を移換し加入者または運用指図者となります。
掛け金上限額は月23,000円です。
企業年金のない会社でiDeCoに加入しており、転職・退職する場合には手続きは不要です。
ただし掛け金を変更する場合は運営管理機関で手続きを必要です。
iDeCoへの拠出は計画的に
iDeCoは原則60歳まで引き出すことができません。
iDeCoへの掛け金は「60歳まで使う予定のないお金」を充てることをおすすめします。
お金は主に①生活費、②病気・失業時の緊急用の資金、③今後使う予定のあるお金(教育資金・住宅資金)、④今後数十年使う予定のない余剰資金に分けることができます。
iDeCoの掛け金は④の余剰資金を充てます。
iDeCoへの拠出は計画的に行うことが重要ですので、家計の負担になる前に減額を検討しましょう。
またiDeCoに加入していた期間が10年未満の方は、受給開始が61歳以降になりますので気をつけましょう。
まとめ
iDeCoは原則解約できませんが、途中で払えなくなった場合には停止または減額が可能です。「家計に余裕がない」という方は、早めの減額を検討しましょう。
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